5つのセンサーを使って自動的に写真撮影するカメラ「Autographer」(BRULE販売)

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写真を撮るのは楽しい。おもしろい表情や動きを捉えて作品にするというのが写真の醍醐味であるが、なかなか撮りたいと思う瞬間を撮り切れない難しさもある。シャッターチャンスを何度も逃した経験を思い出すと、ちょっと残念と思うこともしばしば。
さて、その「シャッターを切る」という行為をカメラ任せにしてしまおうという発想から生まれたカメラがある。いったいどんな写真が撮れるのか、実際に使ってみた。

商品名はズバリ『Autographer』(BRULE販売)。
商品ウェブサイトに「無意識の瞬間を収める」とあるとおり、5つのセンサーを使って自動的に写真を撮影する。外見は、長細いスティック状のボティに回転式で開閉するレンズ、モニター、そしてセンサーと思われる半円状のものが飛び出ている。あとは、サイドにアクションボタン(電源オン・オフ)とメニューボタン。それにUSB端子とクリップである。とくに操作をするうえで迷うことはないシンプルさだ。

電源を入れてみた。アクションボタンを長押しすれば「HELLO」の文字が表示され起動する。で、付属のストラップを使って首にかければ準備完了。というか、この時点からすでに撮影がスタートしていることも……。
そう、すべてお任せなので、ふつうなら撮る必要もない対象を撮ることも十分あり得る。それがこのカメラのおもしろさなのだ。

この状態で、自転車に乗って地元のお寺まで行ってみた。お寺に着いてからは、ひざ下にバンドでくくりつけての撮影も試みた。ただブラブラするのは退屈なので、ついでにコンデジを持って行って梅やお寺の本堂などを撮影した。

境内の桜はまだつぼみだったが、代わりに梅は満開で、行くと梅に囲まれたような感じであった。そんな満開の梅に見とれながらも、他方『Autographer』は何を撮っているのやら……。楽しみと不安が入り混じった複雑な気持ちになりながら帰路についた。

自宅にもどって、付属のUSBケーブルでパソコンにつなぎ、写真のチェックをしてみた。すると……自分が写っている!?
言い忘れたが、搭載しているレンズは画角が136度もある。これによって、一般的なスマホやコンパクトカメラよりも広い範囲を撮影できるので、自分の手や、ちょっとレンズをのぞきこんだ時の顔が写りがちなのだ。でも、さすがに自分の顔が映り込むとは思わなかった。『Autographer』恐るべし!

たしかに普段の自分では撮らないような被写体やシーンが多く写っていた。また、被写体や撮影者の動きによってブレてしまっている写真もかなりある。これは仕方ないことだと思うが、ブレた写真も躍動感が出たり、抽象的でアートっぽくて味があったりする。

ひざ下に付けて撮影した写真は、ローアングルならではの写真がほとんど。自分が感動して見つめている被写体より、もっと下の部分を撮っていたりする。これも意表をつく写真と言えよう。

撮れた中で、一番おもしろかったのは、撮影者の影を撮った写真。被写体を撮影して仁王立ちしている影を撮影しているのだ。ふつうに順光の中で撮影するときでも、撮影者の影が被写体と一緒に写ることがよくある。だが、この場合、自分で撮っているわけでないところが決定的に違う。まるで、誰かに撮られた感じ。そう、このカメラ、自分で自分を隠し撮りしているような錯覚が味わえる。とても不思議な体験だ。

結論、『Autographer』は、普段の自分のセンスを超えた写真が撮れることがよく分かった。日常風景を撮るのに飽きた人は、この身につけておくだけいいカメラから良い刺激を得られるかもしれない。
(羽石竜示)