実践学園、大量36点の猛攻で都大会へ 

猛攻を物語るスコアボード

 近年力をつけてきている実践学園に、昨夏軟式から転向したばかりで部員わずか12人の都立南葛飾。体格の差も明らかで、都立南葛飾には厳しい戦いになることがある程度予想されたが、想像以上に厳しい戦いになった。

 それでも1回表の都立南葛飾は、1番の森田奨太郎が内野安打で出塁すると、続く横田謙がしっかり送り、3番中飛竜の左前安打で一死一三塁のチャンスをつかんだ。しかし、後続が打ち取られ得点できなかった。

 その裏実践学園は、四球で出た走者を4番奥友勇人がレフトオーバーの二塁打で返し、まず1点。それは、それから続く猛攻の序章に過ぎなかった。2回裏は、四球と犠打で二塁に進んだ走者を9番下村雄二が一二塁間を破る右前安打返して1点。そこから3連続四球の後に奥友の右前安打。また四球の後に6番関口方大の三塁打といったように、この回だけで打者17人が8安打、6四球の猛攻で一気に13点を入れた。実践学園は、それでも攻撃の手を緩めない。3回は打者21人が16安打に1四球。さらには盗塁に、バッテリーの暴投、捕逸も重なり17点が入った。

 都立南葛飾の先発松本一真は夏までは一塁手であったが、制球の良さを買われて背番号1を担った。けれども、実践学園の猛攻の前にすっかり我を失った。3回途中から昨年までエースであった鈴木涼介がマウンドに上がったが、なす術がなかった。守備の時、ベンチに残る選手は3人。選手交代もままならず、実践学園の猛攻が続いた。

 メジャーリーグなら、これだけ点差が開いて盗塁などすると報復の対象になるが、一本勝負の高校野球では、一度緩めると、次の試合に悪影響が出るので、常に接戦と同じ攻撃スタイルを貫いた。「緩めたら負ける。これがうちの当り前」という、実践学園の沢里優監督の指導の下、4回裏も5点を入れ、スコアボードに点数が入りきらない、大量36点をもぎ取った。

 

厳しい投球になった松本(都立南葛飾)

  守備面では、先発小林幹太が2回を投げたほかは、尾林直幸、海老澤タイヤブアリ、背番号1の柴田理貴と1回ずつつないだ。沢里監督としては、「特にエースという存在はいません」ということで、状況に応じて投手を起用していくことになる。都大会の初戦は岩倉。「選手それぞれが自分の役割に徹して、一戦必勝で臨みたい」と沢里監督は語った。

 36点取られた都立南葛飾であるが、4回には右前安打で出塁した松本を、7番石塚優太朗が二塁打で返し1点。5回には右前安打で出塁した森田を、松本の左前安打で還した。「0点で終わるのとでは、気持ちのうえで違います」と三好範幸監督が語るように意地はみせた。バントもしっかり決めるなど、経験を積み、少しずつ硬式に慣れてきつつはある。この大会では初戦で杉並工業を破り、硬式になってからの初勝利も挙げている。

 36対2というのは、確かに大差であるが、恥じることはない。ただ、仕方ない、ダメだ、と思うのか、悔しいと思うのかで、今後が違ってくる。三好監督は特に投手の自覚を促した。

 軟式から硬式に変われば、打球の質も違うし、練習場を他の部と共用している学校の場合、他の部への配慮も求められる。それでも、都立国分寺や都立府中東など、軟式から硬式に変わり、上位に進んだ都立高校はある。口惜しさをバネに、新たな歴史を積み上げていってほしい。

(文=大島裕史)