「ドコモiPhone」今度こそ本当か 副社長「いつ出すかが問題だ」
米アップルの「アイフォーン(iPhone)」をNTTドコモが発売するという「うわさ」は、何度もささやかれてきたが今も実現していない。ところがドコモ副社長がメディアに対して、従来よりも踏み込んだ発言をした。
複数のスマートフォン(スマホ)端末を扱うドコモだが、今夏から2機種を重点的に販売する「ツートップ」戦略で方向転換した。これが「iPhone販売の地ならし」と伝えられているのだ。
エクスペリアとギャラクシーで6割強、残りは5%以下のシェア
ドコモは2013年のスマホ夏商戦で、ソニー・モバイルコミュニケーションズの「エクスペリアA」と韓国サムスン電子の「ギャラクシーS4」の2機種を「ツートップ」として販売した。7月26日に発表した今年度第1四半期決算によると、エクスペリアAの販売台数は110万台、ギャラクシーS4は55万台だ。
一方で、他メーカーの商品は伸び悩む。ドコモの坪内和人副社長は、2013年8月26日付のフジサンケイビジネスアイ紙のインタビューで、ツートップ戦略が「国産メーカーに引導を渡したといわれている」との問いに「メーカーを選別したのではなく、あくまで端末だ」と答えた。ドコモが扱う端末は種類が多く、従来はそれが「売り」だったがすべて人気が出るわけではない。近年はKDDIやソフトバンクモバイルに「番号持ち運び制度」で顧客を奪われ、解約数が新規契約数を上回る「純減」をも記録し、方針を転換せざるを得なくなったのだ。
調査会社BCNに、ドコモのスマホ全体における2013年夏モデルの販売比を聞いた。家電量販店における販売動向となるが、最新となる8月19日の週データではエクスペリアAが35.2%、ギャラクシーS4が27.5%となる。これに次ぐのが富士通の「ディズニーモバイル」だが、割合は4.9%とガクンと落ちる。後は富士通「アローズNX」の4.3%、同「らくらくスマートフォン2」の4.2%、シャープ「アクオスフォンZETA」の3.4%といった具合だ。これより少ないパナソニックモバイルやNECカシオを含め存在感が薄い。実際にNECはスマホ撤退を表明、パナソニックもドコモへの新モデル供給を見送ると発表している。
「売れないメーカー」を淘汰し、代わりにiPhoneをラインアップに加える――。つまりツートップはiPhone発売への地ならしだったか、との質問に坪内副社長は「ドコモ側の態勢は整った。いつ出すかが問題だ」と口にした。これまでアップルとは「条件さえ合えば」と言い続けてきたが、記事を読む限り今回は経営幹部による前向きな姿勢が強くうかがえる。
「スリートップ」で国内メーカー据えるのは「義理だて」?
専門家は、坪内副社長の発言をどうとらえたか。青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏は、「ツートップがiPhone発売の伏線だったとの考え方は納得できます」と話す。国内通信会社の中で、各端末メーカーからの新製品提案を公平に受け、商品ラインアップを構成していたドコモは、発売に当たって大幅なシェア獲得を求めるアップルの言い分を飲んでiPhoneだけを優遇するわけにはいかなかった。一方で「必要以上にメーカー数が多く、整理したいという考えはあったと思います」。ツートップという戦略転換で一定の手ごたえをつかみ、商戦に敗れたメーカーの一部が「退場」したのは、今後のドコモにとって悪くない結果というわけだ。
冬商戦では、エクスペリアに富士通とシャープの端末を加えた「スリートップ構想」が浮上している。ツートップの一角サムスンがこの時期に新機種を出さないとみられることもあるが、販売好調とは言い難い2社のスマホをわざわざ選ぶとすれば、その理由は「どのメーカーも1度は『トップに据えた』との大義名分を立てるためかもしれません」と木暮氏は話す。ドコモがiPhoneを手掛けるにあたっての「義理だて」という意味だ。
新型iPhoneは9月10日発表との憶測が流れている。坪内副社長はこのタイミングでの発売は難しいと話していたが、仮に実現すれば冬商戦とはぶつからず、ひとまずドコモと付き合いの長いメーカーへの「直撃」は避けられる。
アップルにとっては、2012年発売の「iPhone5」が、過去の端末と比べると爆発的ヒットとまではいかなかったと指摘されている。新型モデル投入で再度大きな飛躍を遂げるため、販路拡大に動いても不思議ではない。木暮氏は、アップルにとってドコモは、利用者数ベースでは世界的に見て「是が非でもほしい」という多さではないが、現状を考えて少し手も多くシェアを勝ち取る上で「条件交渉に今までより柔軟に対応するかもしれません」と考える。