『大東京トイボックス』最終回『東京トイボックス』ドラマ化決定。うめ緊急インタビュー
─── 最終回、お疲れさまでした。コーヒーでいいですか?
小沢 あ、僕コーヒーダメなんですよ。1日2杯以上飲むと胃がやられちゃうんで。
─── そんな繊細な胃腸だったんですか? 意外! 連載の過酷さを物語ってる……
小沢 いや、違う違う違う。
2012年のマンガ大賞で2位にも輝き、ゲーム業界を舞台にしたアツい群像劇として人気を集めていた『大東京トイボックス』(以下『トイボ』)が、7月30日発売の「月刊コミックバーズ9月号」で最終回を迎えた。そして遂に発表された「東京トイボックスドラマ化決定」の報。
そこでエキレビ!では、作者であり、実はエキレビ!ライターの一人でもある漫画家ユニット「うめ」のシナリオ演出担当・小沢高広さんに緊急インタビュー。最終回を無事むかえた今の心境とドラマ化の最新情報を聞きました。
《太陽自身があがっていくのを見てみたかった》
─── 前作『東京トイボックス』時代から含めると、結構長い連載期間になりましたね(※前作が「モーニング」で連載開始したのが2005年12月)。
小沢 長かったですねぇ……その間、(作画担当・妹尾朝子の)産休を2回挟んだっていうのがヒドいなぁと思いますけど。
─── いや、ヒドくはないですけど。
小沢 始めた頃にまだ子どもが一人もいなかったってことが、考えると恐ろしい!
─── でも、お子さんの存在が作品作りに影響を与えた部分もあるのでは?
小沢 それはありますね。まず、難易度はあがりました。子どもが一人生まれるたびに、だんだん仕事をする時間もなくなり、環境もどんどんハードになっていく。ひとつずつ(製作の)ハードルもあがっていくんですが、それが僕自身、“ゲーム的”に面白かった。と同時に、その難易度があがった中で、主人公である太陽自身もあがってきて欲しい、という気持ちがすごくありました。
─── 確かに、9巻で太陽のレベルがアップする、象徴的なシーンがありました。
小沢 あとは、子どもが巻き込まれた悲惨な事件や事故のニュースが、チャンネルを変えてしまうくらい辛く感じるようになってしまったんですよ。たとえそれが遠い世界の話でも、想像力が働きすぎて、黒板をツメでひっかくくらいイヤな感じになっちゃって……だからこそ、太陽に考えて欲しいことが増えましたね。
─── それが、最終話での太陽と……
小沢 あー、ごめんなさい。そこはまだストップ! 『トイボ』ってありがたいことに、コミックス派の方も結構多いんです。だから、エピソードの細かい部分の振り返りは、コミックが出た後で。
─── えー。じゃあ、太陽が×××の×××××××××したこととか、仙水が□□□したのに■■■■■■したこととか、月山ちゃんの〇〇が●●●●●ったこととか、今回の最終話で出てきた「コイケヤのり塩」が実は『東京トイボックス』の第一話でも描かれていた、とか全部書いちゃダメなんですか?
小沢 あ、のり塩の話は書いていいよ。気づくのきっと君くらいだから(笑)
《「〇〇初」の多い作家》
─── そして、遂にというかようやくというか、ドラマ化も発表されました。
小沢 でも、これもねー……まだお話できることがほとんどないんですよ。
─── 内容とか、配役については?
小沢 早くお伝えしたいんですけど……うーん、もうちょっと時間をください。でも、勘違いをしている方も多いみたいなのでコレだけはお伝えしたいんですが、『大東京トイボックス』のドラマ化ではなくて、『東京トイボックス』のドラマ化なんですよ。
─── 『モーニング』連載分、ということですね。
小沢 そうです。現時点で見ている企画書にも、『大』の要素は入ってません。純粋に『東京トイボックス』のお話です。
─── じゃあ、モモッちも出てこない?
小沢 それは……言っていいかな? 出てこないです。あくまでも『東京トイボックス』です。
─── いや、でもそれを聞いてむしろ感じるのが、モーニング連載時代、「なんでこれが終わるんだよ!」と憤っていた読者からすると、「そら見ろ!」と言いたくなる流れですね。
小沢 それ、もっと言ってもっと言って(笑)!
─── そこから考えると、遠くに来ましたね……
小沢 来ましたねぇ、ホント……『東京トイボックス』の単行本1巻発売の前日に打ち切りが決定したところからね。
─── それが今では、小沢さん自身、電子書籍界にも睨みをきかせるポジションになり。
小沢 そんなことはないです! でも、いろんなことができるようになりましたね。今であれば、この“移籍騒動”もいろいろ違った結果になっていたかもしれないですし。今の時代で、「単行本発売前に打ち切り決まりました」なんてことになったら、大変な騒ぎになるかもしれない。当時(2006年)は、ブログにも書くな、書いたら消せ! っていう時代でしたからね。まあ、書きましたけど(笑)。
─── それにしても、「〇〇初」の多い作家ですよね、うめさん。『トイボ』が“Twitterを描いた世界初の漫画”であり、去年“世界初のデジタル原画展”を開催し、amazonのKDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)で漫画を出したのも日本初。
小沢 今回のドラマ化でまた「初」が増えるんですよ。KDPで出ている漫画で、たぶん“世界初のドラマ化”。もちろん、KDPの力でドラマ化が決まったわけじゃないですが、その(ドラマ放映後の売上げの)動きとかが赤裸々にわかるのがすごく楽しみです。
《百田モモを男性の設定に??》
─── これまでも、何度かドラマ化の話はありましたよね?
小沢 ずいぶんありましたね。映画化、ドラマ化については、話だけだったら10本近くきたんじゃないかなぁ。今回の話も、当初は「どうせ実現しないだろう」と感じていたくらいで。
─── なんでこれまでは実現しなかったんでしょうか?
小沢 まあ、理由はいろいろでしょうね。単純に企画書が社内で通らない、ということもあるだろうし、企画が通ってもスポンサーがつかないとか。例えば、『東京トイボックス』の中でちょっとパチスロをディスる描写があるんですよ。それで話が流れた例もあったみたいですし。あとは、ドラマ枠が減らされたとか、大幅に内容を変えたいとか。
─── あぁー。今、何かと話題ですもんね。どこまで改訂・改変されるのか……
小沢 あ、違くって、僕は割とそういうのOKなんですよ。内容変えるどころか、そういう企画の話をいただいたら、「じゃあ、もっとこう変えましょうよ!」とこちらから逆提案をしたこともあるくらいで。
─── へぇぇ。例えばどんな?
小沢 実際にあったのは、百田モモを男性の設定にしたい、という。
─── ほぉぉぉ。男の仕事場! なんかわかります。
小沢 「若い男子を使うと女性が見てくれるので配役を若い男子に変えたい」というお話があって、「じゃあ、いっそのこと全部男子にしません?」とこちらから提案したんですけど。
─── 「イケメンパラダイス」的に。
小沢 そうそう。「月山から誰からもう全部男子にしましょう!」と。そうしたら、「あー、いいですねぇ」と言ったっきり、一切連絡なし。めんどくさかったんですかねぇ。
《SP版も同時! 最終10巻は9月24日発売》
─── 無事に最終話掲載の「コミックバーズ」も発売されて、「終わったぁ!」という感じですか?
小沢 いや、9月24日発売の最終巻(10巻)の作業があるので、まだ全然終わった感はないですね。
─── 『トイボ』といえばコミックでの大幅な改定も特徴ですが、今回も結構直す感じですか?
小沢 今回は、大幅に、ってことはないと思うんですけど………ディテールのブラッシュアップだけだと思います。
─── 10巻と同時に、外伝的な話も出るんですよね?
小沢 はい。『大東京トイボックスSP』というのが出ます。ちなみに「SP」は、「スペシャル」ではなく、「サービスパック」の意味です。過去、産休中とかに描いた10ページくらいの短い特別版をまとめてみよう、という試みですね。
─── 『トイボ』に関してはもう結構お腹いっぱいな感じですか? それとも、淋しい感じ?
小沢 いや、やっぱり淋しいは淋しいですよ。だから、今、「月刊コミック@バンチ」で連載している『南国トムソーヤ』にもこっそり「トイボ」のキャラが出たりするし。たぶん、ウチが描く話は、全部そういうリンクをさせていくつもりです。『トイボ』自体、(デビュー作である)『ちゃぶだいケンタ』ともつながっているし。今後ももしかしたら、『トイボ』を使った話はどこかで出る可能性はありますね。
エキレビ!では今後も、『東京トイボックス』のドラマ化、『大東京トイボックス』の展開について、随時最新情報をお伝えしていきます。
(オグマナオト)
小沢 あ、僕コーヒーダメなんですよ。1日2杯以上飲むと胃がやられちゃうんで。
─── そんな繊細な胃腸だったんですか? 意外! 連載の過酷さを物語ってる……
小沢 いや、違う違う違う。
2012年のマンガ大賞で2位にも輝き、ゲーム業界を舞台にしたアツい群像劇として人気を集めていた『大東京トイボックス』(以下『トイボ』)が、7月30日発売の「月刊コミックバーズ9月号」で最終回を迎えた。そして遂に発表された「東京トイボックスドラマ化決定」の報。
そこでエキレビ!では、作者であり、実はエキレビ!ライターの一人でもある漫画家ユニット「うめ」のシナリオ演出担当・小沢高広さんに緊急インタビュー。最終回を無事むかえた今の心境とドラマ化の最新情報を聞きました。
《太陽自身があがっていくのを見てみたかった》
─── 前作『東京トイボックス』時代から含めると、結構長い連載期間になりましたね(※前作が「モーニング」で連載開始したのが2005年12月)。
小沢 長かったですねぇ……その間、(作画担当・妹尾朝子の)産休を2回挟んだっていうのがヒドいなぁと思いますけど。
─── いや、ヒドくはないですけど。
小沢 始めた頃にまだ子どもが一人もいなかったってことが、考えると恐ろしい!
─── でも、お子さんの存在が作品作りに影響を与えた部分もあるのでは?
小沢 それはありますね。まず、難易度はあがりました。子どもが一人生まれるたびに、だんだん仕事をする時間もなくなり、環境もどんどんハードになっていく。ひとつずつ(製作の)ハードルもあがっていくんですが、それが僕自身、“ゲーム的”に面白かった。と同時に、その難易度があがった中で、主人公である太陽自身もあがってきて欲しい、という気持ちがすごくありました。
─── 確かに、9巻で太陽のレベルがアップする、象徴的なシーンがありました。
小沢 あとは、子どもが巻き込まれた悲惨な事件や事故のニュースが、チャンネルを変えてしまうくらい辛く感じるようになってしまったんですよ。たとえそれが遠い世界の話でも、想像力が働きすぎて、黒板をツメでひっかくくらいイヤな感じになっちゃって……だからこそ、太陽に考えて欲しいことが増えましたね。
─── それが、最終話での太陽と……
小沢 あー、ごめんなさい。そこはまだストップ! 『トイボ』ってありがたいことに、コミックス派の方も結構多いんです。だから、エピソードの細かい部分の振り返りは、コミックが出た後で。
─── えー。じゃあ、太陽が×××の×××××××××したこととか、仙水が□□□したのに■■■■■■したこととか、月山ちゃんの〇〇が●●●●●ったこととか、今回の最終話で出てきた「コイケヤのり塩」が実は『東京トイボックス』の第一話でも描かれていた、とか全部書いちゃダメなんですか?
小沢 あ、のり塩の話は書いていいよ。気づくのきっと君くらいだから(笑)
《「〇〇初」の多い作家》
─── そして、遂にというかようやくというか、ドラマ化も発表されました。
小沢 でも、これもねー……まだお話できることがほとんどないんですよ。
─── 内容とか、配役については?
小沢 早くお伝えしたいんですけど……うーん、もうちょっと時間をください。でも、勘違いをしている方も多いみたいなのでコレだけはお伝えしたいんですが、『大東京トイボックス』のドラマ化ではなくて、『東京トイボックス』のドラマ化なんですよ。
─── 『モーニング』連載分、ということですね。
小沢 そうです。現時点で見ている企画書にも、『大』の要素は入ってません。純粋に『東京トイボックス』のお話です。
─── じゃあ、モモッちも出てこない?
小沢 それは……言っていいかな? 出てこないです。あくまでも『東京トイボックス』です。
─── いや、でもそれを聞いてむしろ感じるのが、モーニング連載時代、「なんでこれが終わるんだよ!」と憤っていた読者からすると、「そら見ろ!」と言いたくなる流れですね。
小沢 それ、もっと言ってもっと言って(笑)!
─── そこから考えると、遠くに来ましたね……
小沢 来ましたねぇ、ホント……『東京トイボックス』の単行本1巻発売の前日に打ち切りが決定したところからね。
─── それが今では、小沢さん自身、電子書籍界にも睨みをきかせるポジションになり。
小沢 そんなことはないです! でも、いろんなことができるようになりましたね。今であれば、この“移籍騒動”もいろいろ違った結果になっていたかもしれないですし。今の時代で、「単行本発売前に打ち切り決まりました」なんてことになったら、大変な騒ぎになるかもしれない。当時(2006年)は、ブログにも書くな、書いたら消せ! っていう時代でしたからね。まあ、書きましたけど(笑)。
─── それにしても、「〇〇初」の多い作家ですよね、うめさん。『トイボ』が“Twitterを描いた世界初の漫画”であり、去年“世界初のデジタル原画展”を開催し、amazonのKDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)で漫画を出したのも日本初。
小沢 今回のドラマ化でまた「初」が増えるんですよ。KDPで出ている漫画で、たぶん“世界初のドラマ化”。もちろん、KDPの力でドラマ化が決まったわけじゃないですが、その(ドラマ放映後の売上げの)動きとかが赤裸々にわかるのがすごく楽しみです。
《百田モモを男性の設定に??》
─── これまでも、何度かドラマ化の話はありましたよね?
小沢 ずいぶんありましたね。映画化、ドラマ化については、話だけだったら10本近くきたんじゃないかなぁ。今回の話も、当初は「どうせ実現しないだろう」と感じていたくらいで。
─── なんでこれまでは実現しなかったんでしょうか?
小沢 まあ、理由はいろいろでしょうね。単純に企画書が社内で通らない、ということもあるだろうし、企画が通ってもスポンサーがつかないとか。例えば、『東京トイボックス』の中でちょっとパチスロをディスる描写があるんですよ。それで話が流れた例もあったみたいですし。あとは、ドラマ枠が減らされたとか、大幅に内容を変えたいとか。
─── あぁー。今、何かと話題ですもんね。どこまで改訂・改変されるのか……
小沢 あ、違くって、僕は割とそういうのOKなんですよ。内容変えるどころか、そういう企画の話をいただいたら、「じゃあ、もっとこう変えましょうよ!」とこちらから逆提案をしたこともあるくらいで。
─── へぇぇ。例えばどんな?
小沢 実際にあったのは、百田モモを男性の設定にしたい、という。
─── ほぉぉぉ。男の仕事場! なんかわかります。
小沢 「若い男子を使うと女性が見てくれるので配役を若い男子に変えたい」というお話があって、「じゃあ、いっそのこと全部男子にしません?」とこちらから提案したんですけど。
─── 「イケメンパラダイス」的に。
小沢 そうそう。「月山から誰からもう全部男子にしましょう!」と。そうしたら、「あー、いいですねぇ」と言ったっきり、一切連絡なし。めんどくさかったんですかねぇ。
《SP版も同時! 最終10巻は9月24日発売》
─── 無事に最終話掲載の「コミックバーズ」も発売されて、「終わったぁ!」という感じですか?
小沢 いや、9月24日発売の最終巻(10巻)の作業があるので、まだ全然終わった感はないですね。
─── 『トイボ』といえばコミックでの大幅な改定も特徴ですが、今回も結構直す感じですか?
小沢 今回は、大幅に、ってことはないと思うんですけど………ディテールのブラッシュアップだけだと思います。
─── 10巻と同時に、外伝的な話も出るんですよね?
小沢 はい。『大東京トイボックスSP』というのが出ます。ちなみに「SP」は、「スペシャル」ではなく、「サービスパック」の意味です。過去、産休中とかに描いた10ページくらいの短い特別版をまとめてみよう、という試みですね。
─── 『トイボ』に関してはもう結構お腹いっぱいな感じですか? それとも、淋しい感じ?
小沢 いや、やっぱり淋しいは淋しいですよ。だから、今、「月刊コミック@バンチ」で連載している『南国トムソーヤ』にもこっそり「トイボ」のキャラが出たりするし。たぶん、ウチが描く話は、全部そういうリンクをさせていくつもりです。『トイボ』自体、(デビュー作である)『ちゃぶだいケンタ』ともつながっているし。今後ももしかしたら、『トイボ』を使った話はどこかで出る可能性はありますね。
エキレビ!では今後も、『東京トイボックス』のドラマ化、『大東京トイボックス』の展開について、随時最新情報をお伝えしていきます。
(オグマナオト)