「80年以上も生きてきて、こんなにスゴいことに出くわしたのは、初めてだよ」――。81歳になる駱さんは、まだ興奮が冷めやらない様子で話した。安徽商報などが報じた。

 事故があったのは安徽省合肥市内の集合住宅。駱さんは中庭で、野菜を洗っていた。いきなり「バン!」という音がして、思わず振り向いた。「近くに雷が落ちたみたいな音だった」という。彼女が見たのは、宙を飛ぶマンホールの蓋(ふた)だった。その時、住宅の2階からの叫び声に気づいた。

 74歳男性の賈さんは、2階の自宅にある厨房で食事を作っていた。72歳の妻が厨房に入ると、強いガスの臭いがする。とっさに「危ない、元栓を閉めねば」と思ったが、間に合わなかった。ガスボンベが火を噴いた。

 賈さんは叫び声をあげた。1階で雑貨店を経営している鄭さんが異変を察して駆けつけた時、賈さんは火を吹くボンベに懸命に水をかけていた。賈さんの妻は動転して床にへたりこんでいたという。

 鄭さんもボンベに水をかけるのを手伝った。住民が大勢で、バケツリレーのような形で水をかけたが、ボンベは火を噴き続けた。鄭さんはいったん部屋から飛び出して、掛け布団を持ってきた。布団をボンベにかぶせてその上から水をかけたが、それでも火は噴き出しつづけた。

 その時、中庭にあるマンホール内で爆発が発生した。轟音(ごうおん)を響かせて、マンホールの蓋が吹き飛んだ。同時に、コンクリートの破片が舞い上がり周囲に四散した。

 2階住居とマンホール内の爆発の関係は明らかになっていないが、マンホール内にメタンガスが充満しており、火災を起こした2階から下水管を通じて引火した可能性があるという。

 賈さん宅にいた鄭さんは、「火の勢いは強くなるばかり。これ以上は無理だ。逃げねば」と消火活動を断念した。鄭さんは、動けなくなっていた賈さんの妻を背負って逃げた。「私も63歳ですからね。火事場でもなければ、あんな力を出せるわけないのですが」という。

 その後、消防が到着して火を消し止めた。なんとか延焼は防げた。救急車が到着して負傷していた賈さんと妻に応急処置を施そうとしたが、夫は妻を、妻は夫を「あちらを先に手当てしてやってほしい」と譲り合った。

 2人は病院に搬送されたが、手や足にやけどを負っており、賈さんの妻は手を骨折していた。ただし、命に別状はないという。(編集担当:如月隼人)