昨季12位でリーグ戦を終えた大分は、J40クラブで最も早い始動となる1月11日に新シーズンの幕を開けた。ここ数年、経営危機、多額の借金などネガティブな話題ばかりが先行してきたが、2012年は再び“クラブの星”として輝きを取り戻す、第2章の幕開けとなりそうだ。

■ついに解かれたかん口令。J1昇格を目指す時が来た

迎えた1月11日、1が3つ並んだ大安の日が始動日となった。縁起を担いでの日取りではなく、「昨年は開幕まで6週間で準備をしたが、それでも足りないところ、補わなければならないところがあった。今年はあえて8週使ってトレーニングしたい。昨年からの走るという部分は継続して、トレーニングマッチを通して選手を把握し、チームの戦術をじっくり浸透させるため」と田坂和昭監督は説明した。クラブ史上最も早い時期のスタートには並々ならぬ思いがある。

前日の新体制発表会見で、2年目の田坂監督は「今年の目標はズバリ昇格。私はそれしか考えていない」と明言した。これまでJリーグからの借入金や多額の債務超過があったことなどから、軽々しく「J1昇格」と口に出せなかった。ただ、今季は大分トリニータを運営する大分フットボールクラブの青野浩志社長が「(融資の返済は)高いハードルだが、ある程度整理できる」と皮算用を弾き、かん口令を解いた。

そこで田坂監督が、今季の最大にして最高のミッションを掲げたのだ。指揮官の強い思いに強化育成部も応えた。日本代表経験のあるベテラン村井慎二やJ1昇格経験のある石神直哉、日本でのプレー経験はないが韓国の各世代代表に選出されているキム・チャンフン、キム・ジョンヒョンといったダイヤの原石など、11人を補強した。また、チームの顔となるミスタートリニータ・高松大樹を期限付き移籍先のFC東京から呼び戻した。

■選手、スタッフ、フロントそれぞれの立場で目標に挑戦

現有戦力を動かし、勝負するのが監督ならば、その戦力を見出して現場に送り込むのが強化の仕事である。チームとは、監督ひとりの力で底上げできるほど単純なものではない。監督がいくら理論をふりかざして戦略を立てようとも、選手たちの力が「戦えるレベル」になければ大きなハンディとなる。昨季、目標のひと桁順位を達成できなかった要因は編成にあると判断に至り、戦える選手を加え、J1復帰への本気度を示した。

「昨年のリーグ戦では若さを武器に大きな前進ができたと思っている。勢いに乗ったいい試合ができることもあったが、アウェイの鳥栖戦のように経験のなさから終了間際で逆転した試合もあった。今季は監督の意見を聞きながら、昨年の若いチームをベースに、実力者から可能性を秘めた選手を年齢的のもバランス良く補強できた」と、柳田伸明強化育成部長が今季の補強を総括したように、現場と強化育成部が一体となって戦力強化を図った。

今季の大分は、本気だ。選手、スタッフ、フロントがそれぞれの立場でJ1昇格の目標に挑戦する。今季のスローガンは「挑戦×頂戦」。目標に向かって挑む「挑戦」と、すべての面で自己の限界「頂」に挑戦してほしいという思いを込めている。

一時は存続さえ危ぶまれたクラブが、どん底を経験し、再び“地方の星”として輝きを取り戻そうとしている。青野社長は「新しい歴史を我々の手で切り拓いていく。本日から戦うトリニータ第2幕がはじまります」と宣言した。

■8週間で超攻撃的スタイルを築く

始動初日から飛ばしている。背景には、早い段階で実戦形式に入りたいという指揮官の意図が感じられる。そのための1、2週間は準備期とし、身体作りと個々のスキルアップに焦点を当て、いきなりの2部練習を課した、今も続いている。午前練習は徹底した走り込み。昨季の倍のメニューをこなし、4つのグループに分け、ピッチの外周を走る。午後練習はボールを使ったメニューだが、練習後、「とにかく疲れる」と多くの選手が口を揃えたように自主トレを積んできたとはいえ、オフ明けの選手たちには相当堪えているようだった。ただ、どの選手もアピールしようと必死だ。