――信念を貫くためにルールを変える、という吉宗ですが、柴咲さんにとって、ルールを変えてまで貫くことはありますか?


柴咲:自分が今まで生きてきて培ってきて「正しい」と思えることが相手になかった場合は、新しい概念を与えたくなるかな(笑)。逆に相手の持っている正論を聞きたいとも思うんですよ。それが納得できるかどうかは別として、一度、相手の意見を聞いてみたいなとは思います。そうすれば「この人はこういう人だ」という感覚を持てるじゃないですか。私も性格的に押し付けがましいところがあるんですけれど、それでついてこられなければ仕方ないね、って(笑)。

――今回は将軍・吉宗を演じられましたが、登場人物の中で一番ご自身に近いと感じるのはどの役でしたか?


柴咲:どちらかというと自分は久道(和久井映見)タイプですね。トップに立っている人の影にいて、こそこそって提案するような。

――時代劇という作品ならではの苦労って何かありましたか?


柴咲:苦労という苦労はないかもしれませんが、あえて上げるとすると技術的なところでしょうか。男性は殺陣だったり、私であれば乗馬ですかね。乗馬は初めてだったので練習が大変でした。結局は作品の中の映像としてはほんの数秒でしたけど、リアリティを出すための練習というのも大切なことと実感しました。

――撮影当初のインタビューでは、男ばかりの現場でも「意外とむさくるしさを感じない」と仰っていましたが、その後撮影を進められるにあたって変化はありましたか?


柴咲:実は想像よりも大勢の男性の中でのシーンが少なくて、逆に寂しかったですね(笑)。男性陣の撮影がすごく順調に進んだようで、私はちょっと遅れての参加という形になってしまったので、みんなから取り残された形になってしまいましたから。

――幅広い作品に出演されてきましたが、柴咲さんにとってこの大奥という作品はどんな位置づけになりそうですか?


柴咲:内容的にもそうなんですけど、序章といった感じですよね。時代劇でありながら、実は現代劇に近いかなという印象を受けました。人間が言う100年とか200年前の出来事って、たいして昔の話じゃないなって思えましたし、それを踏まえて、時代劇とか過去を生きた人も演じられるなという自信になりました。

――演じられた吉宗という人は、自身が犠牲になって人々の幸せを作るという政治家ですが、その考え方に対してはどのような考えを持たれますか?


柴咲:吉宗の考え方には共感できるところはありますね。自分だけが幸せであればそれでいい、ではなく、周りも含めて幸せになりたいという感覚ですよね。私個人としては、自分が活躍することで何ができるのか、という価値感で仕事をするようになってきたので、どこか自分を投影するような気もしていました。

――作品を観てくれたお客さんに、どんな気持ちや考え方を抱いて欲しいですか?


柴咲:男であれ女であれ、どう生きることが幸せなのか、ということを考えていただける作品になればいいなと思います。そして、自分の今の立ち位置や、人生設計などの材料になればいいかなと。男女逆転というところばかりが採り上げられてしまいますが、ちょっとそこから離れたところからも観ていただけるとうれしいです。



・「大奥」ストーリー
男だけが患う謎の疫病が席巻した江戸、徳川の時代― 日本では、多くの男が死に至り、その数、実に女の4分の1に減少していた。 全ての重要な仕事に女が就き、男が体を売る男女逆転の浮世― そんな世で最も贅沢を尽くした場所。 それは、1人の女将軍に、3000人の美しき男たちが仕える女人禁制の男の園、大奥だった・・・

大奥―作品情報