“ルパン品”などとSNSで…盗難車の流通ルートの『闇』“ニコイチ”の買い手募集者に記者が接触 その実態とは
自動車盗の被害が全国ワーストの愛知県で、盗難車の流通をめぐる摘発が相次いでいます。盗まれた車はどこへ消えるのか。取材を進めると、車台番号を偽装されて流通したり、別の犯罪に利用されたりするケースも。さらにSNS上で公然と買い手を募る実態が見えてきました。
■配線はむき出し…先代クラウンも標的に
愛知県一宮市の自動車販売店に展示されたトヨタ・クラウン。左前のバンパーには、何かでこじ開けたようなすき間があり、車内の配線はむき出しになっています。
愛知県警一宮署 生活安全課 松井寛一巡査部長:
「よく盗まれる車種の上位にくる。機械を入れるために配線を外して中がぐしゃぐしゃになってます。もうやりたい放題です」
自動車盗というと、ランクルなどの高級SUVが狙われることが多いとされますが、先代クラウンも市場では人気です。高値で取引されることから盗みの手口が確立され、被害にあうケースが増えてきていると言います。
愛知県の自動車盗の被害(認知件数)は2026年も8月末までで325件と依然、全国ワーストです。
■事故車の番号を盗難車に…流通ルートの“闇”
警察は8月、相次いで盗難車の流通にかかわる事件で容疑者を逮捕しました。
一宮市の自営業の男(48)は、盗まれたアルファード1台を江南市内の住宅敷地内に保管した盗品等保管の疑いで逮捕されました。(処分保留で釈放)
このアルファードは名古屋市東区の駐車場で自動車盗の被害にあっていましたが、その後、別の空き巣事件で犯人の移動に使われていたことが判明しました。このように盗難車が犯罪組織の間で流通し、別の犯罪につながるケースも多いとみられます。
一方、別の事件で押収された盗難車は、車1台ごとに割り振られた固有の番号=「車台番号」が別の車のものに付け替えられていました。盗難車とわからないよう偽装する目的とみられます。
警察はウソの車台番号を書いた書類を運輸局に提出し、不正に自動車登録したとして、
自動車整備会社の役員ら男女5人を逮捕。小牧市内で盗まれたレクサスに中古車オークションで仕入れた事故車の車台番号を取り付けた疑いです。
この会社を記者が訪ねましたが、中に人がいる気配は感じられず、応答はありません。
近所の人によると、何年も前から社名の看板が取り外されていたということです。
後日、釈放されていた役員に話を聞きましたが、「知らない」と繰り返すばかり。この事件では逮捕された5人のうち4人が不起訴処分となっています。
元千葉県警刑事の森雅人さんは、盗難車の流通ルートについて、多くの場合は海外に不正輸出されるとした上で、「日本国内では盗難車を正規のルートで転売することができず、犯罪に利用されてしまう可能性が非常に高い」と話します。
また、車台番号の付け替えについては…。
元千葉県警刑事 森雅人さん:
「警察に被害届が出ると、ナンバープレートももちろん手配するんですけど、その車に固有の番号、車台番号というのがありますので、その番号も手配をするんですね。その車台番号のままだと、いつかは盗難車だとバレてしまうかもしれないので、そこを偽造するという手口は意外と多くあります」
■“ルパン品”のレクサスも…SNSで買い手募集
被害にあった後、ヤードで解体されるなどして海外に不正に輸出されるケースが多いとされる盗難車。しかし、それ以外にも…。
岐阜県警 生活安全部生活安全総務課 足立佑貴警部:
「盗難車など、公の市場に流通すると差し支えがあるような車が、法律に触れない車として(SNSで)宣伝されて、市場に出回っていると考えられます。最近多いのが『ルパン』と言いまして、『R品』などという言葉で、盗難車を指す可能性があります」
SNSで盗難車が売り買いされるケースが…いったい本当なのか?
使われることが多いというのがX(旧Twitter)に似た短い文章を投稿するSNS「Threads(スレッズ)」。
いくつかのキーワードで検索すると、「金融車」などと呼ばれるローンが残るいわくつきの車の買い手を求める投稿に交じって…。
記者:
「ルパン品と書かれていますよ、盗まれた車の意味なんですかね」
盗品を示す隠語「ルパン品」だというレクサスのセダン。警察のナンバー読み取り装置「Nシステム」にかけられても大丈夫だと書かれています。
さらに目についたのは「ニコイチ」というキーワード。2つの車の部品を組みあわせ1つにするという意味ですが、8月に愛知県警が摘発したような「車台番号の付け替え」を指すこともあります。
■SNSで“ニコイチ”販売 記者の追及に「犯罪じゃない」
記者:
「こちらのアカウントなんですけれども『ニコイチあります』と投稿されています。メッセージ送ってみたいと思います」
最近投稿された、アルファードの「ニコイチ」の買い手募集。いったいどんな車なのか?「詳しく教えてほしい」とメッセージを送ると…。
記者:
「返事が返ってきました。シグナルで話すように誘導されたので、やり取り始めたいと思います」
投稿者からは5日後に返信があり、その後のやりとりは匿名性が高く、犯罪に使われることも多い通信アプリ「シグナル」を指定されました。
記者が返事を返すと、すぐに写真が数枚送られてきました。
記者:
「問題のない車だよ、傷がついていない車だよということを証明するかのようです」
車内の様子やナンバーなど、車の状態を示す写真が送られてきましたが、「ニコイチ」について聞くと、車自体は最新モデルの「40系」アルファードですが、車体番号は古い「20系」の車のものがついているといいます。
盗難車でないのかとの質問は「わからない」とはぐらかし…。
届いたメッセージ:
「車台番号の打ち替えはなにも犯罪ちゃいますよ」
「ポリに職質何回もされていますが 寒いことになったことはありません」
「車検もいけますし 名義変更もできるので 乗ってて何の支障もございません」
車台番号の付け替えは道路運送車両法違反などにあたり、当然、車検も通りません。
自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子さん:
「これを犯罪だということがわからないままに上から支持されるままに(投稿しているのでは)。車は専門的な部分があるので、上から知らされないで『車検通る』『名義変更もできる』などと書いてと指示が来ていると思います」
自動車の流通などに詳しい加藤さんによると、特殊詐欺の「かけ子」や「受け子」のように、自動車盗のグループも下見役や実行役などの分業制で、盗難車の買い手を探すことだけを指示された人物がSNSに投稿している可能性があるといいます。
加藤さん:
「何人か欲しいって書いている人いましたけど、その人たちもリスクを全く分かっていない。盗難されたものを買うのは素人だけではない。盗難品だと分かって買って流通させようと、海外に出してもうけようとか、そういう悪い業者も残念ながら存在する」
私たちはシグナルでやりとりをした相手に記者の身分を明かして取材を申し込みましたが、「意味がわかりません」と拒否されました。
※東海テレビ「ニュースONE」では、自動車盗についての取材を続けています。car@tw.tokai-tv.co.jp まで情報をお寄せください。
2026年9月25日放送
