ウェストハムFWカルロス・テベスのマンチェスター・ユナイテッド移籍が暗礁に乗り上げている。

 先週の時点で大筋の合意に達し、正式発表は間近と伝えられたテベスのマンU入り。テベスの加入を待ち望むマンUのアレックス・ファーガソン監督も、「現在交渉中であり、余計な問題が発生しないか慎重に進めている。大筋では合意しており、近く正式に契約を結びたい」と進捗状況を語った。

 ただし、今回の移籍交渉がスムーズにいかない理由がある。大筋の合意に至りながら、正式発表に時間がかかっているのは、クラブ間の移籍に第三者の介入を禁ずるプレミアリーグが、交渉の行方を厳しく見守っているからだ。そもそも、昨夏にテベスがウェストハムに加入した際にも、このアルゼンチン代表の保有権を持つメディア・スポーツ・インベストメント(MSI)社のキア・ジョオラビキアン氏が移籍交渉に介入していたとして、ウェストハムは今年の四月に罰金処分を受けたばかり。そして、マンU移籍に関しても、いまだテベスの保有権を持つと主張するジョオラビキアン氏が交渉の窓口になっており、リーグ側は「両クラブが直接交渉を行なうべき」との態度を示しているのだ。

 リーグ側の監視で移籍交渉が滞る状況に、老将ファーガソンもさすがに苛立ちを隠せない様子だ。

「我がクラブの弁護士を務めるモーリス・ワトキンスは、この件ですでに1ヶ月以上も動いている。何ら違反を犯さないよう慎重にね。正直に言うと、もうとっくに正式発表をしていてもおかしくはなかった。だが、すべてを止めているのはプレミアリーグだ」

 さらに先週には、ウェストハムのエガート・マグヌソン会長がテベス残留を目指すと宣言。「テベスはウェストハムの選手として登録されているし、契約は2010年の6月まで残っている。また、テベス退団の合意など存在しないし、来シーズンも我々とともにプレーしてくれると確信している。いずれにしても、ウェストハムの合意なしに、彼の移籍が決まることはない」と、語っている。

 プレミアリーグの“介入”で、長期化の様相も呈してきたテベスのマンU移籍交渉。強固な姿勢を見せ始めたウェストハムの出方次第では、思わぬ泥沼劇が繰り広げられる可能性もありそうだ。