カカのレアル移籍は架空劇にすぎない?<br>【photo by B.O.S.】

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 マドリードでは連日、ソープオペラが繰り広げられている。舞台と脚本はスペインのスポーツ紙「AS」紙面で、観客はR・マドリーファンだ。主役はイタリアの名門ミラン家の御曹司カカ。これまたスペインの名門レアル家が、この美青年を長年に渡って花婿に欲しがっている。

 レアル家は「どうしても、どうしても彼が欲しいの」と連日のようにラブコールを送るが相手の心には届かない。想いが募りすぎて、ついに「彼は(ミランの)ベルルスコーニに『レアルへ行かせてほしい』と言ったのよ!」という虚言まで創り上げてしまった。

 これには、普段温厚で知られる、名門ミラン家の大番頭ガッリアーニさんも怒った。「向こうさんの宣伝紙(=AS紙)が書きたてる嘘八百にこれ以上つきあっていられるものか。我が家の当主ベルルスコーニと私の名にかけて、レアル家にカカは婿入りさせんと誓う!」と家の門(=ミラン公式サイト)に張り紙を出した。

 裕福なレアル家は、欧州一の花婿が来てくれるのなら、と8000万ユーロ(約132億円)もの結納金(=移籍金)と年に1000万ユーロ(約16億5000万円)のお小遣い(=年俸)を用意しているのだが、ミラン家の金庫にも金はうなるほどある。ミラン家にもたくさんの支持者がいて、欧州一のプライドにかけてこの宝石のような王子様を渡すわけがないのだ。それでも派手好きのレアル家からラブコールは続く……。


 ……実際のところ、カカ移籍に関する一方的な「AS」紙報道にミラン側はほとほと呆れかえっている様子だ。レアルのリーガ優勝を報じた同紙をカカが持つコラージュ写真を勝手に紙面に使うなどやりたい放題で、ミランの堪忍袋の緒も切れた。移籍は何が起こるかわからないのが常だが、さすがにカカが今夏レアル家に婿入りすることはないだろう。
 実現しなくてもいいのだ。R・マドリーのファンだけが、オフシーズンの余興としてこの架空劇を楽しんでいる。

弓削高志