ドラゴンズもドーム球場に(写真はイメージ)

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 今年も猛暑・酷暑が続いています。日本に初めてドーム球場ができてから間もなく40年になりますが、ドーム球場の出現はプロ野球の現場にどのような変化をもたらしたのでしょうか。かつてはナゴヤ球場、今はバンテリンドームナゴヤをホームとする中日ドラゴンズを35年にわたって実況し続けてきた、村上和宏さんが解説してくれます。

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酷暑の夏

 7月20日に東海、関東でも梅雨明けして以降、今年から名称が「酷暑日」となった気温40℃越えの地点も出るなど、厳しい暑さが続いています。

 すでに残り50試合前後とペナントレースもいよいよ終盤ですが、屋根のない球場では暑さとの戦いも重要になっています。

ドラゴンズもドーム球場に(写真はイメージ)

 日本で初めて屋根付きの球場が登場したのが、1988年の東京ドームでした。あれから40年近い月日が流れ、今や屋外球場のほうが少数派となりました。屋根付き球場のメリットは、何といっても天候に左右されないので雨天中止がない、ということです。

 しかし年々、夏の平均気温が上昇している現代においては、外気温に関係なく、空調の効いた環境で試合ができるというのも大きなメリットになりました。

 例年、高校野球シーズンになると、本拠地の甲子園球場から長く離れることから、その間のことが「死のロード」と呼ばれてきたタイガースも、ドーム球場がめずらしかったころを知るコーチに言わせると「死のロードなんて昔の話だ。今は高校野球開催中も京セラドームで主催試合はあるし。ましてドーム球場だからね。楽なものだよ」と、ドーム球場と屋外の違いを端的に言い表していました。

 まだ今ほど最高気温が高くなかった時代には、炎天下の練習中に「汗だし」と呼ばれる半袖のウインドブレーカーのようなものを敢えて着て、積極的に汗をかく選手が少なくありませんでした。汗をかくことで暑熱順化を促進して、夏を乗り切る方法です。

 今、「汗だし」を着て40度の炎天下で練習を行えば、間違いなく熱中症で倒れてしまうでしょう。野球界も時代にあわせて、これまでの常識を改めている事柄がいくつかありますが、夏の練習中に何を着るかもその一つです。

練習でユニフォームを着なくなった理由

 私がこの世界に入った1991年当時、野手は守備練習では練習着を着ていても、バッティング練習はユニフォームで行っていました。投手は最初からユニフォームで練習。監督、コーチはもちろん練習中からユニフォームを着るのが当たり前でした。

 いつからか……はっきりした記憶はありませんが、少なくともここ10年以上前から練習中ユニフォームを着る野手はいなくなりました。

 なぜユニフォームを着ないかというと、ユニフォーム着用の場合、必ずアンダーシャツを着るのでどうしても2枚重ね着になります。暑さ対策のためには汗を吸収し、なおかつ涼しい格好で練習する必要があるため、吸汗機能に優れた練習着1枚で練習するようになったのです。

 さらに進んでここ2〜3年は、下も短パンタイプの練習着を着用して練習するチームが増えてきました。

 今の夏の暑さは、練習時の着衣にまで影響を与えています。

 これだけ厳しい暑さが常態化した現代、本拠地球場に屋根があるか否かが、選手の体調に影響を及ぼすようになっています。スタンドと屋根の間に大きな隙間があって外気がそのまま入ってくるベルーナドームを除き、ドーム球場では練習も空調が効いた中で行われるため、外がいくら暑くても気温に関係なくいつも同じ条件のもとで動くことになりますが、屋外球場に行くと炎天下で練習することになります。

 ドーム球場を本拠地としているチームは、屋外球場でプレーする試合のほうが少ないため、練習から慣れない暑さの中で体を動かすと、熱中症まではいかないまでも必要以上に体力を消耗してしまうのです。逆に屋外球場を本拠地とするチームにとっては、ドーム球場での試合は練習中から快適な環境で体を動かす、ということになります。

 これが勝敗にまで影響を及ぼすことはないのでしょうが、選手のパフォーマンスに少なからず影響を与えていることは間違いありません。

 私が長年取材してきたドラゴンズでは、ドーム球場を本拠地とするようになった1997年にトレーナーがこの事態に気づき、98年から投手は全員、夏場の練習のうち、ダッシュや走り込みなど走る練習を、ドームのすぐ外にある広い駐車場で行うようになりました。

暑さに慣れることも

 このシステムを導入した、当時の三木安司トレーナー(66)にお話を伺ったところ、こう教えていただきました。

「ドーム以外の球場でのピッチングを見ていると、明らかにスタミナ面で影響が出ている。ある意味、ドーム球場のデメリットだ。空調の効いたドームの中で練習していると、いくら普段の生活で暑い外に出ているとはいっても体を動かすレベルが違うので、どうしても屋外球場では暑さに体がついていっていない。だから日中、一番気温が上がる時間にわざと炎天下の駐車場に出て、一番全身の筋肉を使う走る練習をやることで暑さに少しでも体を慣れさせて、屋外球場でもいいパフォーマンスが出せる体作りをやってドームのデメリットを補っている」

 一方、野手まで対象を広げられなかった理由については「投手はシーズン中も走ることが重要な練習で時間も割くが、野手は守備、走塁、バッティングとやることが多い上に、これらの練習は駐車場ではできない。投手と違って走る練習はメニューに入っていないから難しい」とのことでした。

 それでも荒木雅博(48・現ドラゴンズ球団本部長補佐)を筆頭に、何人かの野手は全体練習が始まる前にドームに入り、自主的に外の駐車場で走っていました。

 いまや少数派となった屋外球場ですが、ZOZOマリンスタジアムのドーム球場への改修が発表され、さらに屋外球場は数を減らすことになります。これでパ・リーグで屋外球場は楽天モバイル最強パーク宮城のみとなります。

 来年からセ・リーグでもDH制が導入されて、セ、パの差がまた一つ少なくなりますが、ドーム球場の数が一番の差と言えるようになるのかもしれません。

 ところで、ありがたいことに中継を行う放送席は屋外球場でも空調が完備されているので試合中はあまり暑さを気にせずにいられますが、練習の取材中は選手同様、炎天下で過ごすことになります。

 かつては夏場でもネクタイを締めて、それこそ全身から汗を吹き出しながらだった我々報道陣も「クールビズ」の推奨もあってかなりラフな格好で仕事ができるようになりました。テレビのアナウンサーは短い時間でも放送席が映るので、夏でもスーツにネクタイが必須でしたが、最近はジャケットなし、ノーネクタイがスタンダードになってきました。アナウンサーの世界でも同様に服装の変化が進んでいます。

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。現在、バンテリンドームナゴヤのDAZNドラゴンズ戦実況、「プロ野球ニュース」(フジテレビONE)などに出演中。

デイリー新潮編集部