「旧耐震はダメ」と切り捨てると損をする…元不動産営業が明かす「本当に地震に強い物件」の見分け方

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引越しシーズン真っ只中。「いい物件はないかな」と検索サイトを眺めながら、こんな条件にチェックを入れていませんか?

「敷金礼金ゼロ」「初期費用ゼロ」

「新耐震基準(築浅)」

「初期費用はできるだけ安くしたい」「地震に強い新しい建物がいい」そう考えるのは当然です。ですが、不動産の現場から見ると、この分かりやすい条件だけで物件を選ぶのはかなり危険。むしろ、そこに思わぬ落とし穴が潜んでいるケースも少なくありません。

今回は、数多くの物件を案内してきた元不動産営業の視点から、検索条件の罠を回避し、本当に賢く物件を選ぶための「ウラ常識」をお伝えします。

前編記事『「初期費用ゼロ」で契約したのに、退去時に大出費…!不動産のプロが「敷金礼金ゼロ」物件を選ばない理由』より続く。

【新耐震vs旧耐震】古い物件≠地震に弱い

ここ数年、日本では大きな地震が相次ぎ、将来の巨大地震への不安も指摘されています。そうした背景から、物件探しで「新耐震かどうか」を気にする人がとても増えています。

現在一般的に「新耐震」と呼ばれているのは、1981年の建築基準法改正以降の基準で建てられた建物です。大きな地震でも建物が倒壊・崩壊しないことを目標に設計されているため、耐震性を気にする人がまず確認するポイントになっています。

ただ、だからといって「旧耐震は全部ダメ」と考えてしまうのは、都市部で家賃が高騰し続ける現状において、少しもったいない見方でもあります。

というのも、耐震基準は1981年で突然きれいに二分されたわけではないからです。

実はその10年前、1971年にもRC造(鉄筋コンクリート造)の柱の帯筋(フープ)の基準が見直され、RC造の帯筋の間隔を強化するという、耐震性に関わる重要な強化が行われています。つまり、旧耐震の建物でも、1970年以前のより古い時期のものと70年代以降のものとでは中身が違います。

1971年以降の「移行期」に当たる物件は、それ以前のものに比べて大破や倒壊の割合が少なく、家賃が安い旧耐震の中でも、この年代は狙い目になり得るのです。

耐震性能は「旧耐震」「新耐震」と単純に切り分けられるものではなく、こうした基準の見直しを経て段階的に高まってきた面があります。

旧耐震という理由だけで候補から外してしまうと、家賃や立地のバランスがいい物件を見逃してしまうこともあります。

「新耐震なら絶対に安心」と思い込むのは危ない

一方で、「新耐震の建物だから大丈夫」と思い込みすぎるのも危険です。

新耐震か旧耐震かは、あくまで建てられた当時の基準です。実際の建物の状態は、その後どのように管理され、修繕されてきたかによって変わります。

耐震性を気にするなら、建てられた時期だけで判断するのではなく、現在の建物の状態を確認することも重要になります。

ちなみに、一般的には「1981年以降に完成した建物=新耐震」と説明されることが多いのですが、正確には建物を建てる前に行う「建築確認」の時点でどの基準が適用されたかによって決まります。

建築確認は建物の着工前に行われるため、完成が1982年や1983年でも、確認申請が1981年5月以前であれば旧耐震になることがあります。気になる場合は、不動産会社に「建築確認はいつですか」と聞けば教えてもらえます。

とはいえ、ここでお伝えしたいのは細かな制度の違いではありません。大切なのは、「新耐震か旧耐震か」というラベルだけで物件を判断しないことです。

内見では「建物の形」と「ひび割れ」を見る

では、実際の内見ではどこを見ればいいのでしょうか。

耐震性能を判断したい場合は、建物そのものを見ることが重要です。特に意識したいのは「建物の形」と「外壁の状態」です。

まず、建物の形について。L字型やコの字型など、凹凸が大きい建物は、地震の際に揺れの力が一部に集中しやすいとされています。もちろん形だけで安全性が決まるわけではありませんが、長方形や正方形に近いシンプルな建物の方が、揺れの力が偏りにくい傾向にあります。

内見では、少し離れた位置から建物全体を見て、極端に複雑な形をしていないかを確認してみてください。

次にチェックしたいのが外壁のひび割れです。

新耐震の比較的新しい建物でも、管理状態が悪ければ安心とは言えません。外壁のひび割れが放置されていると、そこから雨水が入り込み、内部の劣化につながることがあります。

また、共用部の清掃が行き届いていない建物も注意が必要です。日常的な管理が行き届いていない物件は、他の設備点検や建物のメンテナンスも十分に行われていない可能性があります。

外壁のひび割れや共用部の状態は、建物がきちんと維持管理されているかどうかを見極める手がかりになります。耐震性を気にするなら、こうした部分も必ず確認しておきたいポイントです。

「初期費用ゼロ」「新耐震かどうか」といった分かりやすい条件は、物件探しではつい重視してしまいがちです。

ですが、そうした条件だけで判断してしまうと、退去時の高額請求や違約金、住んでからの近隣トラブル、建物の状態の見落としといった思わぬ問題にぶつかる可能性があります。

今回お伝えしたポイントを押さえながら物件を見ていけば、同じ予算でも選び方は大きく変わってきます。ぜひ参考にして、自分にとって本当に安心して住める部屋を見つけてください。

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