米半導体大手エヌビディアの元プログラマーが、既知の最大の素数を発見した/Lopes/dpa/picture alliance/Getty Images

(CNN)史上最大となる4100万桁を越える素数が発見された。多くの人々にとって素数は、小学校以来忘れ去られて久しいものだ。だが、米半導体大手エヌビディアの元従業員ルーク・デュラントさん(36)にとって素数とは全ての情熱を注ぐ対象だった。デュラントさんはほぼ1年の時間と多額の私財を費やして、史上最大の素数を発見した。

素数とは、「2」「3」「5」「7」など、1とその数自身でしか割り切れない自然数のこと。デュラントさんの発見は公式には「M136279841」と呼ばれ、素数の桁数は4102万4320桁。最大の素数の発見はおよそ6年ぶりだった。

今回見つかった素数は「メルセンヌ素数」にも分類された。これは、350年以上前にこうした数字について研究していた、フランスの修道士マラン・メルセンヌにちなむ。メルセンヌ素数も珍しいもので、今回発見された素数は52番目のメルセンヌ素数だった。メルセンヌ素数は「(2のn乗)−1」という形で表記される。

インターネットの安全を守るために使われることもある他の桁数の大きな素数とは異なり、メルセンヌ素数は他の理由から重要だ。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のケビン・バザード教授(純粋数学)は「世界最大の素数の歴史的な記録は、コンピューターの歴史的な能力について何かを伝えてくれる。特にこの分野における人類の進化について」と述べた。

コミュニティーを基盤としたプロジェクト「GIMPS」は10月21日、デュラントさんの発見を発表した。バザード教授によれば、GIMPSは市民による科学への取り組みの代表例であり、このプロジェクトにより、専門家でなくても最大の素数の発見が可能となるという。

デュラントさんは、GIMPSのコミュニティーが巨大な素数を探すための驚くべきテクノロジーを備えた素晴らしいシステムを構築していることに気が付いたと振り返る。デュラントさんは、同プロジェクトのソフトウェアに慣れ親しみ、クラウドコンピューターの使用方法を学んだ後、これらの要素を組み合わせて、信じられないほど高速に処理するスーパーコーンピューターを構築するための世界規模のシステムを実行できるようになった。

GIMPSのコミュニティーには、新しい素数を求めてパソコン上でプロジェクトのソフトウェアを実行する世界中のボランティアや、将来の探求を拡大するためにメルセンヌの結果を分析する数学者がいる。

何千人ものボランティアが世界最大の素数を追い求めようとする動機は何なのだろう。デュラントさんにとってそれは、大規模なコンピューティングシステムの開発と物理法則の限界に対する探究という興味の融合だ。物理法則の限界とは、「コンピューティングの内容と速度に対する制限」を指すという。デュラントさんは「できる限り小さな方法で、既存の宇宙の限界を押し広げたかった。これらの膨大な素数はある意味で、既知の宇宙で最大の『ユニークな情報の断片』だ」と語った。