「確認不足で、ごめんね。もっと早く手続きが終わるものだとばかり思い込んでいたよ」
 「仕事で疲れているのに申し訳ない。手続きに付き合ってくれて、ありがとう」等、
 自分の至らなさを率直に認めた上で、疲れているパートナーや子どもへの認識的共感(情動調律)、感謝を具体的な言動で示すことができていれば、Aさんは、パートナーから、子どもにケアする余裕を奪うという重大な加害は何とか食い止めることができたかもしれません。

◆パートナーに謝罪した結果

 後日、Aさんは、改めてパートナーに謝罪した結果を教えてくれました。

「パートナーには、先日のキャンペーンについて、詳しい内容を事前に情報共有しなかったこと、仕事で疲れているのに長時間拘束し子どもをケアする余裕を奪ってしまったこと等について、自分の責任を認めて謝罪しました。
 パートナーは、やはり仕事で疲れて帰ってきているのに、よくわからないまま連れていかれ、長時間拘束されたことがかなりしんどかったと教えてくれました。
 自分としては、当初そこまで時間がかかるとは思っていなかったこと、パートナーや子どもが疲れているのはわかっていたので、少しでも早く帰ろうと気持ちばかり焦っていたことなど、その時に感じていたことや考えていたこと等を改めて二人で共有し、お互いのもやもやを少しでも解消することができました。
 自分の中では、何となく『謝罪する→負け、終わり(自分には価値がない)』と勝手に思い込んでいたので、今までは、正当化や弁解ばかりしていました。よくてせいぜい『お互い様』と責任逃れするのが関の山でした。
 あの一件から時間も経っていましたし、パートナーのために良かれと思って始めた行動だったので、自分の非や責任を認めて謝罪することには、正直、ものすごく抵抗がありましたが、今は思い切ってパートナーに伝えてみて良かったと思います」

 Aさんは、どこかすっきりした表情で教えてくれました。 

 人は誰しも加害してしまわずにはいられない存在です。なぜなら、自分のことも他者のことも、完璧には分からないから。分からないということは、的外れなことをしたり、傷つけたり、押し付けになってしまったりする可能性があるということです。そして、それらをしてしまった時というのは、加害をしてしまった時です。
 GADHAは、そうしたお互いの不完全さや弱さを認めあいながら、大切な人を大切にできるようになるために試行錯誤する場所、即ち失敗も学びに変えられる場所です。自分の加害性を自覚し、不安を抱える人や変わりたいと願う人は、GADHAを始めとするコミュニティに参加し、自分や大切な人を適切にケアしていくことをぜひ始めてみてください。

(被害者かもしれないあなたへ)
 あなたの協力に対して、何の感謝も労いも示さないのは、典型的なモラハラです。
 いくら相手にも事情があるとは言え、相手は、職場や家族間でそうしたコミュニケーションをすることが当たり前になっている可能性があります。そうした相手と持続可能な人間関係を築いていくことは極めて困難です。
 様々な専門機関や相談窓口がありますので、ぜひ「パワハラ 被害」「モラハラ 被害」などで検索してみてください。あなたの愛が搾取され尽くし枯渇してしまう前に、(できれば身近な常識人よりも)まずは専門家へ相談してみることをおすすめします。

(加害者かもしれないあなたへ)
「相手のため」「良かれと思って」と口にする加害者は、非常に多いです。あなたがどんなに相手のことを思って行動しているとしても、それは相手が感じ考えていることを蔑ろにしていい理由にはなりません。