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 ◇ワールドシリーズ第1戦 ドジャース6―3ヤンキース(2024年10月25日 ロサンゼルス)

 打った瞬間、ドジャース・フリーマンはバットを持った右手を高々と空に掲げた。まるで自由の女神像のように…。120回の歴史を誇るWS史上初の逆転サヨナラ満塁弾。熱狂に包まれた本拠地に「フレディ」コールが鳴り響いた。

 「夢見心地だよ。歴史の一部になれるのは素晴らしい。今夜は寝られないかも」

 1点を追う延長10回。直前の2番ベッツが敬遠されて2死満塁で打席が巡った。1番の大谷も含め強力打線の核であるMVPトリオ。「自分と勝負してくると思った。これが私たちの素晴らしさだ」。左腕コルテスの初球、内角直球を打ち砕いた。右足首痛で、メッツとのリーグ優勝決定S第6戦は欠場。本来なら1カ月以上の離脱が必要な故障ながら不屈の闘志で復帰し、初回は激走の三塁打でチームを鼓舞していた。

 36年前の伝説のシーンがフラッシュバックした。88年WS第1戦。ド軍は9回2死で代打ギブソンが逆転サヨナラ2ランを放った。ギブソンも足を痛めており、同じ左打者。打球の着弾点も同じ右翼だ。同年は4勝1敗で世界一。WSで2死からのサヨナラ弾はその時以来だった。

 7月末には3歳の三男マキシマスちゃんが大病の「ギラン・バレー症候群」を発症。看病でチームを離れたフリーマンは、マキシマスちゃんが回復し、戦列に復帰した際は号泣した。8月には右手中指を骨折、現在は右足首に故障を抱えるが「過去数カ月いろいろなことがあって、粘り抜いてきた。ここ最近は順調。マックス(マキシマスちゃん)も元気だ」と胸を張る。

 スタンド最前列では子供の頃から打撃投手を務め「今の私があるのは彼のおかげ」という父フレッドさんら家族が観戦。駆け寄ったフリーマンはネット越しに喜びを分かち合い、元女優のチェルシー夫人(35)とは何度も熱烈なキスを交わした。万雷の「フレディ」コールは、しばらく鳴りやまなかった。(杉浦大介通信員)

 ▽88年のワールドシリーズ第1戦 3―4の9回2死一塁でカーク・ギブソンが代打で登場。足の故障で満足に走ることもできなかったが、アスレチックスの殿堂入り守護神エカーズリーから片手打ちのような打撃で右翼に逆転サヨナラ2ランを放った。足を引きずりながらダイヤモンドを一周する姿など、このアーチは各メディアなどでWS名場面に選出されている。ドジャースは4勝1敗で6度目の世界一。ギブソンはこの1打席だけで、2勝を挙げたハーシュハイザーがMVPに選ばれた。

 ≪WSで2死からのサヨナラ弾は2人目≫PSにおいて同一試合で三塁打と満塁弾を記録したのは07年のロッキーズ・松井稼頭央以来3人目。WSで2死からのサヨナラ弾は88年ドジャースのカーク・ギブソン以来2人目で、PS全体では22年にアストロズのアルバレスが地区シリーズで記録している。