飲食店の中にも関わらず、下着姿を投稿する迷惑客がSNSを騒がせている。まったく理解しがたい行為だが、企業はどう対応していけばいいのだろうか?(写真はイメージです:Ushico/PIXTA)

このところ、SNS上での「露出テロ」が相次いで話題になっている。飲食店内で衣服を一部脱ぎ、下着を見せた状態で写真を撮影。それをSNS上で投稿するもので、風紀の観点からどうなのか、といった批判が続出している。

なかには、かつて話題になった「しょうゆペロペロ」などの迷惑行為との類似を指摘する声もある。しかし、ネットメディア編集者として、これまで幾多の「炎上」を見てきた筆者からすると、今回の「露出テロ」と「客テロ」には、共通点もあるが、それなりに相違点もあるように感じられる。

そこで今回は、過去の事例を振り返りつつ、店に突然やってくる悪質な迷惑客に対して、「運営企業側は何ができるのか」の対策を考えていきたい。

飲食店での露出するような格好が話題に

このところ注目されているのは、しゃぶしゃぶ店内で撮影されたとおぼしき画像だ。鍋を前に、肉の盛られた皿を片手に、女性がピースサインをしている。特筆すべきは、女性の服装だ。服の裾を胸元までまくり上げて、胸部が露出するような格好になっている。当然ながら下着は着用した状態だ。

【画像5枚】「店内で下着を出す」「個室だと嘘つく人も」…。飲食店で「露出テロ」する迷惑客に企業も声明を出し始めている

このX投稿が話題になり、撮影されたのは、しゃぶしゃぶチェーン店「木曽路」の店内ではないかと特定が進んだ。10月22日ごろから「NEWSポストセブン」「週刊女性PRIME」「Smart FLASH」「女性自身」といった、週刊誌のウェブ版を中心に、関連する話題が報じられている。

飲食店内で撮影された露出画像を投稿しているのは、今回の女性だけではない。各社報道やXユーザーの投稿によると、木曽路の他にも、「マクドナルド」や、カフェチェーン「コメダ珈琲店」、つけ麺の「三田製麺所」などで撮影されたと思われる画像が拡散されている。また、中には「個室」だと弁明し、それが嘘だったと判明する……というケースもあった。

相次ぐ「露出テロ」とも言える状況に、SNS上では「法規制すべきだ」「常識がなさすぎる」「バズれば何をしてもいいのか」といった批判が続出している。一部には「男性が筋肉アピールするのと同様ではないか」との擁護も見られるが、そちらは少数派だ。

なおNEWSポストセブンの記事では、木曽路広報担当者への取材で得たコメントとして、同社店舗で撮影された写真と確認できた場合には、「法的措置も含め厳正に対応する所存」と伝えられている。

そして10月23日には、三田製麺所が「店舗における禁止行為ガイドライン」を定めたと発表した。ここでは8つの禁止行為を掲げ、「発見した場合、当店従業員は適切な対応を取らせていただきます」と明言した。



(画像:三田製麺所HPより)

なお、今回の件は「不適切な撮影や録音」と「公序良俗に反する行為」の項目に当てはまると思われる。

過去に炎上した「下着ユニバ」

「公共の場での露出」と聞いて、筆者がまず思い出したのが、2022年10月に話題となった「下着ユニバ」の炎上事例だ。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)の園内で、ハロウィーンの「コスプレ」と称し、複数の女性が露出度の高い衣服で写真撮影して、インスタグラムに投稿。家族連れや子どもも多く訪れる施設ゆえに、TPOをわきまえていないのではないかと問題視された。

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テレビ番組などにも取り上げられる事態となり、USJの公式SNSも「公序良俗に反する服装やパークにふさわしくない過度な露出はお断り、退場いただく場合があります」と注意喚起を行った。


公式ツイッターによる「お願い」も話題となった、2022年の下着ユニバ騒動(出所:USJ公式ツイッター)


とはいえ騒動以前にも、USJは「以下はお断りします」の項の3つ目に、「過度な露出」に関する記載をしていた(出所:USJ公式サイト)

飲食店での客テロ事案で言えば、2023年初頭に話題となった「寿司テロ」は、読者の記憶にも新しいだろう。なかでも知られているのが、「スシロー」店内で撮影された、しょうゆボトルや、湯飲みをなめた動画だ。店舗ではあらゆる器具の洗浄・交換を余儀なくされ、一時は約6700万円の損害賠償請求訴訟が起きるまでに発展した(後に和解・取り下げ)。

同時期には「はま寿司」や「CoCo壱番屋」「資さんうどん」などでも、客による不衛生な動画が撮影され、SNS上で拡散し、問題となった。いずれの場合も、店は清掃のみならず、無料トッピングの提供形態などを変更する必要に迫られた。

これらのケースと、今回の露出を絡めて、SNSでは「なんら変わらない」「承認欲求を満たすためなら、なんでもやっていいと思っているのか」といった疑問の声が多々上がっている。

客テロブームとの相違点は?

「炎上ウォッチャー」の視点からすると、今回の「露出テロ」と「客テロ」には相違点も多々ある。まずは衛生面だ。

1年半前に話題になった客テロでは、共用の調味料を汚すなどの特徴があった。こうした行為には、心理的な嫌悪感に加えて、病気などの感染リスクも生じる。また、当時はまだ新型コロナウイルスの5類移行前だったこともあり、より警戒感が募っていた背景もある。

加えて、被害の矛先が「他の客」に向けられている点も大きい。もちろん店舗にも影響はあるのだが、リスクを直接負うことになるのは、飲食をする客のほうだ。女性たちを擁護するわけではないが、今回話題になっている露出は、死角で行われれば気づかれない。なお当然ながら、他の被害者として、「タイムラインに流れてきて不快感を覚えたSNSユーザー」がいることを忘れてはならない。

そして、一番の違いが「迷惑行為を行う動機」だ。前回の客テロブームは、いずれも「仲間内の悪ふざけ」の延長線にあった。10年ほど前の「バカッター」「バイトテロ」から続く、SNS炎上の王道とも言えるスタイルだ。

しかし、露出はそうではない。アピールする相手が「身内」ではなく「第三者」に設定され、いかに興味関心を引けるかに、力点が置かれているように感じられる。そこには、「エロで釣って、その影響力を利用したい」という野心が見え隠れする。

このように考察してみると、一連の露出テロはアテンション・エコノミー(関心経済)の観点から論じたほうがいいように思える。動画で言えば「迷惑系YouTuber」のように、過激なコンテンツで注目を集め、それを元手に商売につなげる素地になっているのではないか。

そう考えると、以前の客テロには、まだ世間知らずゆえの無邪気さがあったように思える(とはいえ許されるものではない)。今回の露出テロは、企業に与える「実害」としては少ないかもしれないが、こういった形でニュースになることを望む企業は存在しないだろう。

そう考えると、今回の「露出テロ」は、悪い意味で迷惑行為を次のステージへ進めてしまったとも言えそうだ。

迅速かつ適切な対応が求められる

これ以上エスカレートしないために、早期に取れる術はなんだろうか。

衛生面であれば、回転寿司チェーンで「ガリ」を個包装にするなどの対応を取れるが、撮影への対応だと簡単にはいかない。しかしながら、店内撮影を一律禁止としてしまえば、「チェーン店なのにハードルが高い」と思わせてしまいかねない。ドレスコードの設定も同様に、一般的な外食チェーンでは非現実的だ。

飲食店を襲う露出テロの脅威を前に、おそらくルール設定や、業務フローの改善では対処しづらいだろう。見せしめなどによって、いかに「撮りづらい雰囲気」を醸成できるかに、今後の行方は左右されるように思える。

まずは今回の現場となった各店舗が、厳然とした対応で、見解を出すことが第一歩になると考えられる。声を上げることは、手間もかかる上に、「客を選んでいるように感じさせるのでは」とブランドイメージから避けたい場合もあるだろう。

しかし黙り続けることで、一般消費者からは「黙認するのか」と非難され、迷惑客や模倣犯にも「この店は甘い」と隙を与えることになるのではないか。その点において、三田製麺所の反応はスピーディーだった。

「公共の場で下着を出す行為に、模倣犯もいないだろう」と思う人もいるかもしれないが、公共の場で露出する人の心理や行動を、企業側が予想するのは困難だ。場合によっては、業界団体が代弁してもいい。迅速かつ適切な対応ができるか否かが、今後の試金石になるだろう。

(城戸 譲 : ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー)