鼻に噴霧するインフルエンザワクチン「フルミスト」=第一三共提供

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 日本で初となる鼻に噴霧するスプレータイプのインフルエンザワクチンの接種が、10月から始まった。

 注射の痛みが苦手な子どもには朗報だが、ウイルスを弱めた生ワクチンを使うため、接種を注意すべき場合もある。専門家は「使用を希望する場合には、医師に相談して欲しい」と話す。

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 新しいワクチンは、第一三共の「フルミスト」。2〜18歳が対象で、左右の鼻腔(びくう)の中に1回ずつスプレーで噴霧する。米国では2003年から接種が始まり、これまでに36の国と地域で承認されている。国内では昨年3月に薬事承認された。

 従来のインフルエンザワクチンは、感染力を失わせたウイルスからつくる「不活化ワクチン」だったが、フルミストは症状が出ないよう毒性を弱めたウイルスからつくる「生ワクチン」。鼻の粘膜に噴霧することで、感染した時と同じ仕組みで免疫が得られる。

 国内で実施した臨床試験では、発症を28・8%抑える効果が確認された。副反応として、鼻水・鼻づまり(59・2%)、せき(27・8%)、のどの痛み(17・9%)、頭痛(11・2%)などが報告された。

 メーカーは、従来の不活化ワクチンと比べて、効果に明確な差はないとしている。米国では、特定のウイルス株をワクチンに加えた際、不活化ワクチンに比べ効果が下がったことから、13年から接種を一時中止する事態も起きた。原因は分かっておらず、18年には接種を再開している。

 フルミストは注射が苦手な子などに有効な選択肢になる。接種回数は不活化ワクチンの場合は13歳未満は2回注射が必要だが、経鼻ワクチンは年齢にかかわらず1回となる。

 ただ、経鼻ワクチンは、妊婦や免疫不全の人には使えない。生ワクチンのため、接種するとインフルエンザにかかってしまうおそれがある。また、ぜんそくの子も注意が必要だ。日本小児科医会理事の峯真人医師は「一定期間は鼻の中に感染力の弱いウイルスがいる状態になるため、免疫の力が落ちているきょうだいがいる場合なども注意が必要になる。医師に相談して欲しい」と話す。