『おむすび』写真提供=NHK

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 NHK連続テレビ小説『おむすび』が現在放送中。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”だ。

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 第20話では、ついに結が糸島フェスティバルでパラパラを披露。演出を担当した小野見知が「第4週は“好きなことを好きなようにやるのは、こんなにも楽しいものなんだ”と結が身をもって知る週」と位置づけるように、ステージに立つ結が自分自身を束縛から解き放つ姿が印象的に描かれた。

 2日半に及んだ撮影には、地元・糸島の方を含め300人規模のエキストラが参加。小野は「本当に地元の方のご協力あってこその朝ドラだな、ということを痛感しながら撮っておりました。キャストのみなさんも、糸島の方たちの熱気に感動していましたし、その熱気でとてもいいシーンになりました」と思いを語る。

 撮影が行われたのは、クランクインから間もない3月末。まだ寒さも残っていた時期で、小野は「ハギャレンのメンバーはすごく薄着でしたし、地元の方にも夏の装いをお願いしていたので、体調を崩されたりしないか、という心配はありました。でも、みなさん終始楽しんで参加してくださって。特に永吉さんのマジックショーでは、松平健さんとピーターさんが突然登場されて、地元の方は本当に喜んでいらっしゃいました」と振り返る。

 待ち時間には、松平がステージ上から気さくに声をかけたり、原口あきまさやパラシュート部隊の斉藤優が観客を盛り上げるなどしていたといい、小野は「(気候は)肌寒かったのですが、みなさんのおかげでとても温かい現場になりました」とあらためて感謝した。

 劇中では、パラパラがスタートするなり「全然ダメ」とミスを連発する結。だが、ハギャレンメンバーの笑顔や客席からの歓声に触れ、「みんなが楽しそうにしとう」「なんか楽しい。超楽しい。ギャルって超楽しい!」と自分の本心を受け入れていく。

 視聴者としても、見事なカタルシスに高揚するシーンとなったが、小野は「結が自分の心に素直になることの喜びを知る場面ですが、最初に脚本を読んだときには『ただ踊りを見せるだけで終わってしまうのではないか』という不安もあって。すごく難しいシーンだなと思いました」と打ち明ける。

 第1週から第3週を通して描いてきた結の“殻”を、彼女自身が破る姿をどう描くか――。だが、そんな懸念を払拭してくれたのもまた、地元エキストラだったという。

「結といういわゆる“普通”の女の子が、ああいったステージにいきなり立ったらどんな気持ちになるのか、というところから丁寧に組み立てて何度もリハーサルを重ねて準備しましたが、いざ撮影に入ると、観客のみなさんの反応もとても大事なんだとあらためて感じました。エキストラの方同士で『ここはまだノッてないよね』『ここで盛り上がるときにもっと大きく手拍子しようかな』と相談しながらお芝居を作ってくださって。結の緊張がほぐれる演技に呼応して、客席が次第に盛り上がって熱気を帯びてゆくのをハギャレンメンバーも感じていましたし、更に生き生きと踊る彼女たちの姿に、会場全体がひとつになりました。地元の方たちのお芝居がとても素晴らしかったからこそ、あのカタルシスが完成したと思っています」

 当日、パラパラを最初から最後まで通しで踊ったのは2回のみ。小野は「キャストのみなさんは『踊れますよ、大丈夫ですよ』と言ってくださいましたが、厚底で踊るあのパラパラは実はすごくハードなものですし、こちらとしては最小限の回数で、そこに思いきり集中力を発揮してほしいと思っていました」とし、「そのおかげもあって、素敵なキャストのみなさん、客席のみなさんの表情を撮ることができたと思っています」と達成感をにじませた。

 糸島フェスティバルという一大イベントを経て、物語は震災を描く神戸編へ。結、そして米田家に、あの日なにが起きたのか。心して受け止めたい。

(文=nakamura omame)