中国の鉱業大手「西アフリカの金鉱山」買収の思惑
紫金鉱業が買収するアキエム鉱山はガーナ最大級の金鉱山だ。写真は同鉱山の選鉱設備(ニューモントのウェブサイトより)
中国の国有鉱業大手の紫金鉱業集団は、金鉱山世界最大手のアメリカのニューモントから西アフリカ・ガーナの金鉱山を買収する。
紫金鉱業は最大10億ドル(約1480億円)を投じて、ニューモントが保有するガーナのアキエム鉱山の開発権益を取得する。両社は10月9日、アキエム鉱山の(事業会社の)株式譲渡契約に署名したとそれぞれ発表した。
買収手続きの完了は2024年10〜12月期を見込んでおり、紫金鉱業はその時点で9億ドル(約1332億円)を現金でニューモントに支払う。残額に関しては、その後に一定の条件を満たしてから清算するとしている。
金鉱山で中国最大手
アキエム鉱山はガーナ最大級の金鉱山であり、2013年10月から商業生産を開始。2023年の金の産出量は9.2トンだった。
紫金鉱業による金鉱山の買収は、アキエム鉱山が2020年以降で7件目となる。同社は金鉱山で中国最大手、世界第8位の企業であり、2023年には前年比20.2%増の67.73トンを生産した。
今回の買収の発表前まで、紫金鉱業は2024年の金生産量を約73トンと見込んでいた。そこにアキエム鉱山が加わることで、同年の生産量は80トンを超える可能性がある。同社は金生産量を2028年までに100トン超に増やす目標を掲げている。
アキエム鉱山の現所有者のニューモントにとっても、開発権益の売却はメリットがあると見られている。同鉱山は現時点では露天掘りで鉱石を採掘しているが、2028年以降は(地下に坑道を建設して採掘する)坑内掘りに移行する計画だったからだ。
紫金鉱業はアフリカでの鉱山開発に積極投資を続けている。写真は同社が参画するコンゴ民主共和国の大規模銅山の選鉱設備(紫金鉱業のウェブサイトより)
欧米の鉱山会社は坑内掘りを得意とせず、ニューモントは採掘コストの上昇を懸念していた。一方、紫金鉱業は中国の低品位の鉱山開発から事業を興した歴史があり、難易度の高いプロジェクトを進めるノウハウを持つ。今回の取引成立は、両社の利害が一致した結果と言えそうだ。
埋蔵量上乗せに期待
紫金鉱業が開示した資料によれば、アキエム鉱山の(経済的に採掘可能な)金の埋蔵量は約34.6トンと推定されている。それに加えて、坑内掘りで採掘できる可能性がある資源量が約83トンあり、埋蔵量の上乗せが期待できるとしている。
同社は買収の声明の中で、アキエム鉱山の(現時点の確認埋蔵量よりも)将来的な資源量増加の潜在力を重視していると強調した。
ガーナはアフリカ諸国の中では政情が安定しており、治安も良好だ。アキエム鉱山は(開発しやすい)平坦な地形で、ガーナ国内の主要都市や鉱石の積み出し港への道路網も整備されている。電力供給も十分かつ安定しており、紫金鉱業にとって有利な条件がそろっているという。
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は、10月9日
(財新 Biz&Tech)