―エヌビディア・エフェクト発現、AIソフトウェアに世界マネーのグレートローテーション始まる―

 東京株式市場は上値の重い展開で、週末18日は日経平均が朝高後に伸び悩み、一時はマイナス圏に沈む場面もあった。大引けはプラス圏で着地したものの、総じて3万9000円を割り込んだ水準でのもみ合いに終始した。NYダウが史上最高値圏を走る米国株市場と比べ出遅れ感が目立つ。欧州ではドイツの主要株価指数であるDAXが最高値を更新している。また、アジアでは中国・上海総合指数が直近は買い一巡感が出ているとはいえ、景気刺激策の発動を好感し、急激な底値離脱の動きを見せ話題となった。世界的な株高局面のなかで、しかも為替市場で円安のフォローウインドが吹いているにもかかわらず、東京市場が取り残されているのは想定外の展開ではある。だが、ここで焦りは禁物である。

●安いうちに拾うことが投資価値を高める

 株は安いうちに拾い、高いところで売るのが分かりやすい必勝の極意である。高値を追う形で買いを入れるよりは、全体相場が凪の状態にある時こそ買いを入れるチャンスと心得なければならない。そして今、米国を起点に新たなテーマ物色の波が再び東京市場に押し寄せようとしている。 生成AI市場の成長性が改めて確認されるなか、その周辺株に見直し機運が台頭しつつある。AI用半導体に対する爆発的な需要をフェーズ1とすれば、その半導体によるインフラ構築を経て、早晩フェーズ2であるソフトウェアの開発・実装段階へと移行する。株式市場でも投資テーマとしてAIソリューションにスポットライトが当たることは必然である。来年にかけてAI関連株の範疇にある銘柄群から新たな出世株を探す動きが顕在化しそうだ。

●エヌビディアをモンスター化させたGPU特需

 米国ではエヌビディア の株高トレンドが復活、17日は取引時間中に140ドル89セントまで上値を伸ばし、ついに上場来高値を更新した。時価総額は日本円換算で500兆円を上回り、時価総額世界首位のアップル に肉薄している。今から2年弱ほど時計の針を戻し2023年の年初までさかのぼると、当時のエヌビディアの株価は分割修正後株価でわずか14ドル台であった。つまり株価は2年弱で10倍、厳密には6月中旬に現在と同じ株価水準に到達していたので、1年半でテンバガー化したことになる。言うまでもなく、エヌビディアの時価総額をモンスター化させた背景には収益の変貌があり、その変貌をもたらしたのがAI用半導体の代名詞ともなったGPU(画像処理半導体)の爆発的な需要創出であったことは広く認知されている。

 GPUは3Dグラフィックスなどの画像描写に必要な同時並列的な演算処理を行うが、これは元来ゲーミング向け需要がメインとなっていた。しかし、これがAIに爆発的進化をもたらしたディープラーニング用として性能がマッチングし、生成AIの登場とともに加速度的に需要が高まった。また、GPU特需に連動して高速DRAM技術を代表するデバイスであるHBM(広帯域メモリー)にも高水準のニーズが発生。GPUがディープラーニングを実行している最中、それを一時的に記憶する役割を担うのがHBMであり、AI用半導体としてGPUとHBMはある意味セットで需要を獲得する構図となっている。

●半導体企業の業績を支配する生成AI

 半導体関連企業の決算発表が相次ぐなか、「生成AI向けが好調」というワードが随所に登場するが、これらはGPUやHBMなどのAI用半導体の製造にかかわる部分での需要が当該企業の収益に貢献しているという意味合いである。直近ではオランダの半導体製造装置大手ASML の決算発表で受注の停滞が嫌気され、同社株にとどまらず半導体関連株全般に売りが波及し「ASMLショック」とも言われたが、これは内訳をみるとスマートフォンの販売不振が反映されたものであり、AI用半導体向けに限れば好調だった。