異例の“空耳”裁判「強盗だ!」か「Go to a door!」なのか…オーストラリア人英会話講師は強盗犯?判決は強盗認めず

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18日に行われた注目の判決。
「強盗だ」と「Go to a door(ドアに迎え)」、ある事件で男が発した言葉がどちらだったのかが争点となっています。

住居侵入や強盗致傷の罪に問われている被告の裁判。
争点の1つとなったのは、現場で発した英語のフレーズが全く違う意味の日本語に聞こえる、いわゆる“空耳”か否かでした。

「強盗だ」と「Go to a door」。
かつての人気番組の名物コーナーを思わせるこの空耳は、あったのかなかったのか。
18日に下された判決は意外なものでした。

事件が起きたのは2023年6月のことです。
午後11時半頃、オーストラリア人の英会話講師、オットー・ダニエル・マシュー被告(33)は、東京・新宿区にある住宅の2階ベランダ部分へ。

驚いた住人の男性が窓を開けると、マシュー被告はその場にあった小型スコップを振り上げながら屋内に押し入り、被告の腕をつかんで抵抗する男性ともみ合いになりました。

男性は被告が手にしたスコップが頭に当たるなどして負傷。
そしてこの時、マシュー被告から「強盗だ」「金はどこだ」と脅されたというのです。

付近の住民も当時のことを覚えていました。

近隣住民:
こっちの方から多分上に上がって2階に侵入したと聞いた。大きな声でおらー!って(住人の)旦那さんが騒いでいて。

現場から何も取らず逃走したものの、2023年9月、警視庁に逮捕されたマシュー被告。
2024年10月から開かれた裁判員裁判で、検察側が懲役6年を求刑する一方、弁護側は「被害者の自宅の脇を通った際にガソリンのようなにおいを感じた」という主張を展開。

なぜ2階のベランダにまで立ち入ったのかについては、当時、マシュー被告がパルクールを楽しんでいたためだというのです。

パルクールとは、フランス発祥のスポーツで、街中にある壁や障害物などを跳んだり登ったりして乗り越えるというもの。

その技術を使って火災の危険性を早く住人に知らせようとしたという主張です。

そして、男性ともみ合った際、「強盗だ」と脅したとされる点については、英語を母国語とする被告が「Go to a door」と訴えたのだと反論しました。

「強盗だ」ではなく「Go to a door」、つまり「火災が迫っているから早く扉に迎え」、そして「金はどこだ」という脅し文句も全く別の意味の英語だと主張。

それが、「金は?」ではなく「Can you walk?」、つまり「歩けるか?」と確認したというのです。

争点になっているこの空耳。
“Go to a door”と“強盗だ”の聞き間違いについて街で話を聞くと、「間違えない」と言う人もいれば、「あると思います」と話す人もいて、意見は割れました。

そして下された注目の判決は、傷害と住居侵入については認められ、懲役2年の実刑判決。

しかし「強盗だ」「金を出せ」といった言葉に関して、裁判長は「被告人の『“Go to a door”と発言した』などとの供述は信用できないが、そうであっても、被害者が何らかの発言を誤って認識することがないとまでは断定しきれない」と述べ、強盗については罪を認められませんでした。

判決の中で裁判長は、2階のベランダに立ち入った住居侵入について、「被告がガソリンのにおいを感じたという供述は信用できない」と指摘。

「危険を知らせるのであれば、玄関ドアのインターホンを押すなど、別の方法が容易に考えられる」として、マシュー被告の行動が不合理であるとの判断を示しました。