1兆円がムダ金になった…日本で開発中の「国産旅客機」が、とつぜん打ち切りになった「ざんねんな理由」

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世の中には残念な乗り物がある。すぐれた性能や将来性を備えていたのに、時代のニーズや期待などからズレてしまい、十分な活躍ができなかった乗り物などだ。

書籍『ざんねんなのりもの事典』には、失敗作などではなく、成功できなかったちょっと残念な乗り物がたくさん掲載されている。なかには登場(発表)当時には期待いっぱいだったのに、手のひら返しをされてしまったかわいそうな乗り物もある。

YS-11に次ぐ、国産旅客機として期待された三菱スペースジェットも、残念な道をたどった乗り物の一つ。

1歩進んで2000歩下がる歩み

欧米諸国の刺激を受けて、経済産業省が「環境適応型高性能小型航空機」計画を発表したのは2002年のことでした。小型ジェット機を国産化しようという提案です。

これに沿う形で、三菱重工業によって立ち上げられた三菱航空機が「Mitsubishi SpaceJet」の開発を進めます。2015年11月には初飛行に成功し、国内外の航空会社からの発注もあって、YS-11に次ぐ国産旅客機の誕生は間近と思われました。

しかし、計画は頓挫します。トラブルの発生による納期の延期が続き、許認可にも不手際が繰り返されます。それまで国内の市場しか相手にしてこなかったメーカーと、これを管轄する省庁の動きは安穏として遅く、海外メーカーとの競争に勝つことはできなかったのでした。

また、自分の売ろうとしている商品を理解する気がない面々、いわゆる天下りを招き入れ、さらに口を出す権限まで与えてしまったのも現場を混乱させ、開発の遅れに二役も三役も買ったと言われています。

計画の中止が発表されたのは、2023年2月のこと。技術面よりもむしろ、日本のビジネススタイルにおけるダメ要素ばかりが集まり、1兆円もの費用を投じた国産ジェット旅客機を、そのまま残念な結末へと導いたのでした。

…つづく<世界でわずか20機「超ハイスぺ」なのに、なぜか消えてしまった「ざんねんな乗り物」の名前>では、費用対効果が悪すぎた超高級旅客機を紹介します。

世界でわずか20機「超ハイスぺ」なのに、なぜか消えてしまった「ざんねんな乗り物」の名前…費用対効果が悪すぎた