今季限りでの退任となった楽天・今江敏晃監督(8日)

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 楽天は17日、宮城県仙台市内の楽天モバイルパークで監督就任会見を開き、来季から2020年以来5年ぶりに指揮を執る三木肇新監督が「野球をしてきた者として名誉なこと。自分自身も想像を超えた覚悟です」と決意を口にした。

 67勝72敗4分けで惜しくもCS出場を逃し、リーグ4位に終わった今季だが、なぜ2年契約の1年目だった今江敏晃監督は今季限りでの退任となったのだろうか。

 球団創設20年目となった今シーズン、開幕から星勘定に苦しみ、交流戦突入前には借金8を数えたが、交流戦は13勝5敗で球団史上初の優勝を飾る快挙を成し遂げた。ただ、ロッテと3位の座を争ったシーズン終盤に泥沼の8連敗を喫し、最終的にはロッテに5ゲーム差をつけられる4位に終わった。

 続投を基本線に来季構想を描いていた中、CS出場を逃す大きな要因となったこの8連敗が決定打となり、今季限りでの退任の流れとなったと聞く。大きな補強もなく、現有戦力での戦いに評価もある一方、選手起用や作戦面において、チーム内から疑問の声が上がることもあったという。

 森井球団社長は監督交代の経緯について「今江監督には1年間指揮を執っていただいたことは感謝しています。交流戦でタイトルも20周年に花を添えてもらった。一方で、リーグで負けが込んだこともあった。翌年に向けてチームを立て直して強くしていくかを考えた時に、現状の否定というより、よりいいものをということで、ファームで指揮を執っていて経験豊富な三木監督にお願いする結論に至った」と説明した。

 監督交代の説明は成り立っているが、球団創設20年ながら、1年で監督の座を追われた人は、2005年の田尾安志氏、10年のマーティー・ブラウン氏、15年の大久保博元氏、19年の平石洋介氏、20年の三木肇氏に続いて、これで6人目となった。評論家や熱心なファンからは、球団に対する不信感の声が噴出する異常事態となっている。

 初代監督を務めた田尾安志氏は、自身のユーチューブで「またやっちゃったかという残念な出来事。また1年でクビにするのか。残念で仕方ない。今江監督としてはやれることはやったと思うが、それでも三木谷オーナーには伝わらなかったのが残念で仕方ない」と無念さを語った。自身も3年契約ながら1年で解任されており「いいチームになってもらいたいが、20年やって1年目と変わらない。最終的にオーナーの一言で変わってしまう。その考えが正しい方向であればいいが、そうとも言えない。ファンあってのプロ野球とお話もしたことはあるんですね。20年たって思うのは、野球人への思いが薄っぺらい」と憤慨し、「魅力ある球団、ファンに愛される球団を作ってもらいたい」と願いを込めた。

 また、監督就任初年度の2015年に最下位となって1年で退任となった大久保博元氏も自身のユーチューブで「交流戦初優勝して、最後までクライマックスも争えた。そこを評価しないと。交流戦優勝なんてメチャクチャ難しい。俺はもう納得いかない」と怒りをにじませた。

 大の楽天ファンで、球団応援大使、球団20周年アンバサダーなども務めるお笑いコンビ、サンドウイッチマンの伊達みきおも、パーソナリティーを務めるラジオ番組で「2年契約なら2年見たかった。成績は悪くないわけですから、正直。1年で辞めさせられるのはちょっと悲しい」とし、「へたくそだと思うんですよ、球団が。ファンあってのプロ野球チームじゃないですか。ファンをこういう気持ちにさせるのは正直よくない。人気商売なんだから」と球団の対応を嘆いた。

 阪神OBの中田良弘氏は「球団経営だから、オーナーや本社などの言うことは絶対だということは分かる。ただ、楽天の監督交代は異質に映る。これだけ1年で切られる監督が多いのは異常。クビを切ること以上に、その人を指名したのはあなたたちなんだよと。どこかファンが置いてけぼりにされている雰囲気を感じるし、選手に影響が出そうな感じもする。これから楽天を応援しようという人、楽天を強くしようと思ってコーチや監督をやろうという人も少なくなってしまわないかが心配。唯一、東北に根ざしているチームなんだし、長期的なビジョンを持って球団を運営していってもらいたいね」と持論を述べた。

 三木監督は第8代監督に就任した2020年、55勝57敗8分けの4位という成績ながら、わずか1年で2軍監督への配置転換を命じられた経験を持つ。あれから4年、経験を積み、選手を知り、チームを感じてきた。12年ぶりのリーグ優勝に挑む来季、明るい話題で楽天が取り上げられることを願う。(デイリースポーツ・鈴木健一)