by Like_the_Grand_Canyon

トレーディングカードゲーム(TCG)を取り扱うカードショップでは、公式が販売しているカードパックなどの商品のほか、ユーザーのカードを「そのカードの現在の価値」「カードの傷や痛みの状態」「レアカードが本物かどうか」など査定し、価格をつけて販売する業務を実施していることが多くあります。世界的なオンラインショップのeBayが2022年に買収したオンラインTCGショップでユーザーから持ち込まれたカードを査定する専門家が、「専門性が高く労力のかかる仕事にもかかわらず、著しく低賃金である」と主張し、労働組合契約を求めています。

eBay’s trading card authenticators are rallying for a union contract | Polygon

https://www.polygon.com/tabletop-games/459782/tcgplayer-union-ebay-rally-fair-pay



オンラインTCGマーケットプレイスのTCGplayerは、ニューヨーク州シラキュースにある認証センターに持ち込まれたカードを査定し、価格を付けています。扱っているTCGはポケモンカードゲーム、遊戯王OCGデュエルモンスターズ、マジック:ザ・ギャザリング(MtG)、ディズニーロルカナなど多岐にわたり、毎週数千枚から1万以上のカードが認証センターに届くそうです。TCGplayerは2022年時点で1億1500万枚以上のトレーディングカードを保管しており、そのうち3200万枚は2021年だけで認証されたことが過去に報じられています。

持ち込まれたカードの認証としては、傷や痛み、折り曲がりなどの状態をチェックするほか、人気のレアカードには偽物もしばしば出回っているため、本物かどうかを見極める必要もあります。過去には、350万ドル(約4億円)で購入した貴重な初版のポケモンカードの未開封パックが偽物だったという事件もありました。

YouTuberが約4億円で購入したポケモンカードが偽物だったことが明らかに - GIGAZINE



一連のチェックはすべて手作業で処理する必要があり、専門の知識を持った担当者が行います。受け取りと専門家による検査の後、カードは倉庫のような保管システムに入り、最終的に個別の注文に引き出されて出荷されます。

TCGplayerの受け取り担当の専門家を務めるジュリア・ジャコナ氏の場合は、ポケモンと遊戯王、MtGの担当として、午前7時から午後6時までほとんど座りっぱなしでカードの検査および在庫管理をしているとのこと。ジャコナ氏は「同僚の多くは座りっぱなしの業務で腰を痛めており、実際かなりキツいです」と語っています。また、同じく受け取りの検査を専門とするメーガン・ウィーラー氏は、「カードを評価するためには、価値に影響する傷や汚れなど、カードの細部をじっくり見るために前かがみで目をこらす必要があります。背中や腰、目にも大きな負担がかかります」と仕事の大変さについて述べました。

2023年3月からアメリカ通信労働組合に加入しているTCGplayerの労働者は、「eBayは時間給労働者に仕事に見合った賃金を支払っていない」とゲーム系メディアのPolygonに対して語りました。検査の専門家は1時間あたり16.25ドル(約2400円)からスタートしますが、その額は「仕事の専門性を考えると侮辱的です」とジャコナ氏は主張。また、出荷などの他の部門における専門家も、「著しく低賃金」の傾向にあるそうです。

そこで、2024年10月初め頃、労働組合はTCGplayerの賃金および倉庫所在地の生活費に関する詳細レポートを発表しました。レポートでは、労働者の87%は「ニューヨーク州シラキュースの子供のいない独身者の生活賃金を下回る賃金しか稼いでいない」と示しています。レポートの公開後には労働組合の集会も開催され、「eBayに対し、交渉の席で真剣になり、妥当な契約条件に同意することを望んでいます」と集会の結果について報告しました。



労働組合の主張を受け、eBayの代表者は「交渉プロセスを開始したとき、賃金などの経済問題を議論する前に、契約の非経済的な部分について話し合うことでアメリカ通信労働組合と合意しました。まず合意すべき非経済的な提案を処理した後に、経済に関する議論が間もなく始まると予想しています」とPolygonの取材に回答しています。