県民栄誉賞受賞で声援に応える西田敏行さん(2018年9月、福島県郡山市で)

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 見る人を笑わせ、そして泣かせる。

 76歳で亡くなった西田敏行さんは、軽妙なコメディーから重厚な人間ドラマまで、幅広い役柄を演じ、親しまれてきた。テレビや映画に欠かせない、日本を代表する名優だった。

 今年もTBS系ドラマ「さよならマエストロ」に出演し、出演作が途切れることはなかった。今月8日には、東京都内で開かれた出演映画「劇場版ドクターX」の完成報告会見に姿を見せた。同作で演じる敵役・蛭間重勝について、「ずっと蛭間重勝でいたいなという気持ちがあったもんですからね」と、壇上で感極まった様子で語った。

 親しみやすい人柄や、時に古里・福島のなまりを交えたユーモアあふれる話術は、演技以外の分野でも発揮され、NHK紅白歌合戦の司会も任された。大阪・朝日放送テレビの人気バラエティー番組「探偵!ナイトスクープ」では、涙もろい「2代目局長」として視聴者に支持された。

 突然の訃報(ふほう)に驚きが広がり、都内の自宅には弔問客が訪れた。劇団青年座時代から約40年の付き合いがあり、西田さんの付き人も務めていたという男性は「つい先日の会見でずっと椅子に座っていたので心配はしていた。面倒見のいい方だった。恩人です」と悲痛な面持ちで語った。

 東日本大震災で被災した故郷に思いを寄せ、福島県に何度も足を運んだ。震災直後の2011年4月、同県郡山市のスーパーでキュウリを頬張ってみせ、原子力発電所の事故で風評被害を受けた同県産の農産物の安全性をPRした。一緒に店頭に立った当時の知事、佐藤雄平さんは「福島弁で『心配ねえから』と買い物客に語りかけていた。真心から復興を思っていて、あんな人はいないと思った」と振り返った。