鍼治療は身体の特定部位を刺激するために専用の鍼(はり)を刺す治療法であり、日本を含む東アジア諸国で盛んに行われています。「実際の鍼治療を行うグループ」と「偽の鍼治療を行うグループ」を比較した新たな研究では、本当に坐骨神経痛の改善に鍼治療が役立つことが確認されました。

Acupuncture vs Sham Acupuncture for Chronic Sciatica From Herniated Disk: A Randomized Clinical Trial | Complementary and Alternative Medicine | JAMA Internal Medicine | JAMA Network

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2825064



Acupuncture really works for sciatica pain, study finds | Live Science

https://www.livescience.com/health/acupuncture-really-works-for-sciatica-pain-study-finds

鍼治療は伝統医学として長い歴史を持っており、日本では施術を行うために国家資格を取る必要がありますが、西洋医学が発達した現代ではその効果に懐疑的な目を向ける人もいます。そこで中国の研究チームは、坐骨神経痛の患者を対象に「本当の鍼治療」と「偽の鍼治療」を行い、その効果を確かめる実験を行いました。

坐骨神経痛は体の中で最も大きい神経である坐骨神経が刺激されることにより、腰から下の部位に痛みやしびれ、脱力感などの症状が出る状態のことを指します。坐骨神経痛の患者には一般に鎮痛剤が処方され、一部の患者には脊髄の周囲に局所麻酔薬を注入する硬膜外ブロック療法や、神経を圧迫する部位を切除する手術などが行われます。また、理学療法やアイシング、ストレッチなどで症状の改善を試みることもあります。

しかし、さまざまな選択肢があるにもかかわらず、坐骨神経痛の治療法はうまくいかないこともあります。その理由には、身体への負担が低い治療オプションが常に効果的というわけではないことや、負担の大きい硬膜外ブロック療法や手術などの治療には及び腰になる患者が多いことなどが挙げられるそうです。鍼治療も坐骨神経痛の治療の選択肢になっていますが、その効果については確固たる研究結果が報告されていなかったとのこと。



研究チームは実験にあたり、椎間板ヘルニアに伴う坐骨神経痛を患う患者220人を募集しました。患者の坐骨神経痛は中度〜重度で、脊椎専門医によって診断が下されており、異なる脊椎疾患や神経疾患を持っておらず、服用中の治療薬や過去1年以内の鍼治療歴がありませんでした。

被験者は110人ずつ「本当の鍼治療を10回受けるグループ」と「偽の鍼治療を10回受けるグループ」に分けられ、中国の6つの病院で4週間にわたる施術が行われました。被験者には、自分が本当の鍼治療を受けているのか、それとも偽の鍼治療を受けているのかは知らされませんでした。また、偽の鍼治療では治療効果がないと考えられている「非つぼ」の部位に鍼が配置され、本当の鍼治療を受けていると錯覚させるために1本の鍼が刺されるのを除き、ほとんどの鍼は刺されなかったとのこと。

研究チームは治療開始前と治療開始から2週間後、4週間後、治療セッションが終わった後の8週間後、26週間後、52週間後にアンケートを行い、脚や背中の痛みについて評価しました。また、睡眠の質や物体を持ち上げる動作などの日常的なタスクができるかどうかについても聞き取りました。



実験の結果、「本当の鍼治療を受けるグループ」と「偽の鍼治療を受けるグループ」の両方で痛みのレベルが減少し、日常的な機能の改善がみられました。さらに、「本当の鍼治療を受けるグループ」はすべての項目で「偽の鍼治療を受けるグループ」を上回る良好な結果を示し、治療開始から52週間後の時点でも両グループの差は統計的に有意なままでした。

偽の鍼治療を受けるグループでも治療効果がみられた理由については、治療を受けていると錯覚したことによるプラセボ効果の可能性や、時間経過と共に病状が自然回復した可能性などが考えられます。

どちらのグループでも治療が必要なほど重篤な副作用はみられませんでしたが、本当の鍼治療を受けるグループは24%に軽度の出血や皮下出血などの副作用がみられました。一方、偽の鍼治療を受けるグループでは、副作用を報告した被験者はわずか4.6%だったとのこと。

今回の研究結果はあくまで「本当の鍼治療」と「偽の鍼治療」を比較したものであり、鎮痛剤や手術といった他の治療法と比較したわけではありません。それでも研究チームは、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛患者の治療法として、鍼治療を検討すべきであることが示唆されたと結論付けました。



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