日本郵便近畿支社が各郵便局で「感謝デー」を企画するよう指示した2024年4月の内部文書。「定額貯金満期」などの条件で顧客をリストアップし、保険を売り込む事例が挙げられている

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 郵便局でゆうちょ銀行の顧客情報がかんぽ生命の保険営業に流用されていた問題で、日本郵便は11日、同意なく保険募集のためにリスト化したと推定できる顧客の情報は155万人分にのぼると発表した。

 日本郵便の千田哲也社長が同日の記者会見で謝罪し、不正に使われた社内システムを止めるなどの再発防止策も公表した。

【写真】問題が発覚した郵便局のイベントチラシ、通報窓口に情報が寄せられていた

 情報を流用したゆうちょの顧客数は2014年2月以降のデータが対象。不正は民営化をした07年から漫然と続いていたといい、実際の流用数はもっと多いとみられる。

 千田社長は「(不正は)全国規模で起きていたことを確認するには十分な数字だ」「(155万人は)システムで追えるぎりぎりの数字だ」などと会見で述べた。長期にわたり違法行為を防げなかった点は「何の言い訳もできない。情けない限り」とした。日本郵便は今後、調査結果を踏まえて本社役員の責任を明確にするとしている。

 日本郵便は社内の情報システムを改修し、近く郵便局でゆうちょの顧客情報(非公開金融情報)を検索できなくする。ゆうちょの貯金残高や定額貯金の満期時期といった条件にあわせて顧客を検索し、リスト化してダイレクトメール作成やアポ入れ電話に使われていたものだ。

 全国の多くの郵便局では、ゆうちょの顧客情報をもとに保険などを売りたい顧客をリスト化し、景品がもらえるイベントを企画してチラシや電話で誘い出していた。キャッシュカードの切り替えを口実に来局を促す手法もあった。保険業法違反の疑いがあり、金融庁が事実確認を進めている。

 来局を促すイベントをめぐっては、近畿支社が金融商品を売り込むために企画するよう指示していたことが9月初めの朝日新聞報道で判明。商品販売の目的を隠した勧誘を禁じる自治体の消費生活条例に反する恐れがあったのに、社員の通報を受けた日本郵政の社外通報窓口が「問題なし」と取り合わなかった。

 千田社長は「条例違反もあった」と認めたうえで、保険業法違反に気づいたのは報道後の9月6日だとしている。(藤田知也)