地面師たちの「実行犯」なりすまし役の正体が判明!?...ニセ地主の背後に忍ぶ《ヤクザ》の陰

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今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。

そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。

同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。

『地面師』連載第22回

『いま話題の「地面師」のリアル...数億円を《騙し取る》まるで《アメーバ》のような衝撃の手口』より続く

犯行成功のカギを握る「なりすまし役」

頭目である内田は、まず手下の大賀からもたらされた物件情報をターゲットにできるかどうかを判断しなければならない。そして次にやることが、なりすまし役のスカウトだ。ターゲット物件の地主と年恰好の似たニセ地主役を仕立てなければならない。

地面師グループにとって、犯行が成功するかどうか、カギを握るのが、このなりすまし役だといっても過言ではない。それだけに彼らにとって重要なのだが、浜田山の事件でそこに抜擢されたのが、渡邊だった。渡邊は逮捕後、検察の取り調べに対して次のように供述した。

「(11年)6月初めごろ、(共犯で逮捕された)高橋国幹からニセ地主役をするよう指示されました。そこで会ったのが、内田でした」

不動産業界ですでに有名な内田は、実際の土地取引現場には、極力顔を出さないようにしている。売却先に対し、仕掛け人が内田だと知られたら、それだけで取引を打ち切られる恐れがあるからだ。

また万が一、なりすまし役が逮捕されても、内田は知らんぷりする。警察がなりすまし役との具体的な接点をつかんでいなければ、当人に捜査がたどりつかない。そうも考えている。地面師詐欺において役割分担するのはオレオレ詐欺と同じく、実行犯と犯行の元締めとの距離をできる限り遠ざけるためだ。

「手配師たち」

したがってなりすましを仕立てる手配師は、常に内田たち企画立案者とは別に存在する。先の地面師はこともなげにこう話した。

「簡単にいえば、グループのなかに手配師がいるわけです。それが今度の場合は、高橋です。手配師たちはいわば専門職で、たいてい彼らの後ろには大掛かりな手配師のネットワークがあります」

手配師たちはなりすまし役をどのようにして探してくるのか。むろんなりすまし役は俳優ではない。が、犯行において取引現場に立ち会い、地主らしく振る舞う演技力が欠かせない。

「東京で仕事をする手配師の多くは、千葉と神奈川にネットワークがあるとされます。その典型的なパターンが温泉街の人脈でしょう。そこからなりすまし役を調達するパターンが少なくありません。千葉の手配師は、北関東の栃木や群馬の温泉地から、神奈川は箱根や熱海などに強みがある」

先の地面師が、こう説明してくれた。

「彼らが仕立てるのは、温泉地のコンパニオン派遣会社に登録をしている芸者崩れの中年女性なんかが多い。男女とも過去はそこそこいい暮らしをしていて、何らかの事情で身を隠して清掃の仕事や風呂番なんかをしている。地方にはそういう訳アリを束ねているやくざもいて、手配師にはそのネットワークがあるんです」

内田や八重森のような頭目が、物件ごとに手下を集める。昨今の地面師詐欺は、そうして寄せ集められた人間が仕事を分担する。それだけに捜査当局も、彼らのつながりを把握しづらい。そこで、いざ捜査の手が伸びたとき、犯行グループの主要メンバーたちは決まってこう言い訳をする。

「まさか地主が偽者だとは知らなかった」

『地面師なりすまし役の男が《告白》「単なる報酬目当てだった」...1回あたり《数十万円》で犯罪に加担する男の《内心》』へ続く

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