国内既存店が回復した要因は?(撮影:尾形文繁)

イタリアンレストランのサイゼリヤは、発表済みである今期第3四半期まで(2024年5月末まで)の業績が好調だ。中でも長らく「ぎりぎり黒字」で苦戦の続いていた国内事業が回復している点には注目。定番メニューを値上げしない異色の経営スタイルが当たっている。本決算の発表を前に、このテーマについてQ&A形式で解説する。

※記事の内容は記者による解説動画「Q Five」からの抜粋です。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

制作:田中険人

Q:営業利益が急改善!直近業績のポイントは?

サイゼリヤの直近の状況を端的に言うと「苦戦が続いてきた国内事業にようやく復活の兆しが見えてきたところ」です。

業績の全体像を見ると、今期の力強い回復は中国を中心とするアジア事業の成長が貢献している部分が大きいです。ただ、これまで(中間決算〈2月末〉まで)と様相が異なるのは、国内事業です。

コロナ禍以降、サイゼリヤの国内事業は利益の苦戦が続いており、今期も中間決算までは「四半期でぎりぎり黒字」の状態でした。それが第3四半期になって、大きく復調したのです。

カギとなったのは、開店から1年以上が経過している「既存店」です。とくに客数の伸びは他社の追随を許していません。他社が値上げをする中、サイゼリヤは価格を据え置くことで優位に立っています。

Q:なぜ国内事業でサイゼは値上げをしない?

サイゼリヤには、他社より「値上げに踏み込みづらい」側面もあります。サイゼリヤといえば「ミラノ風ドリア=300円」というように、具体的な価格のイメージを持っている人も多いはず。それを変えることは、ほかのチェーンが行うよりも社会的なインパクトが大きいといえます。

一方で、値上げをしていないことが客数の増加に貢献している面もあります。サイゼリヤの松谷秀治社長は決算説明会の場で「来店頻度が増え、客数増加につながっている」と手応えを語っています。

とはいえ、人件費、物流費などのコスト高が続く中で、何も手を打たなければすぐに赤字になってしまいかねません。

メニューに関しては、既存の定番商品を値上げしない一方で、3カ月ごとに実施しているメニュー改定では単価の高い新メニューを導入しています。またオペレーションの面では、前期から店舗運営の効率化を徹底。セルフレジやテーブルオーダーの導入店舗を拡大しています。

さらにサイゼリヤは、売れ行きの悪いメニューの絞り込みを実施しています。1年前には130ほどあったメニュー数を、直近で100ほどに減らしました。これにより、店舗スタッフの作業効率は高まっています。

サイゼリヤはこれらの施策を通じて高騰するコストを吸収し、利益を確保できるよう、体質改善を図っています。

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(金子 弘樹 : 東洋経済 記者)