【萩原 文博】盗難台数「トヨタプリウス」「ランクル」を超える被害多発1位の「人気車の名前」…史上最悪の窃盗ツール「ゲームボーイ」を使った衝撃の手口を明かす

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大都市圏で全国の半分

2024年8月に東京近郊で発生したレクサスLX600の車両盗難事件を取り上げたのを覚えているだろうか。最近オーナーに連絡したところ現在のところ発見に至っていないということだった。

首都圏をはじめ、愛知県などではリレーアタック、CANインベーダーそして、2024年に入ってゲームボーイと呼ばれる機器による車両盗難が増加している。そこで、今回は、車両盗難の最前線といえる、カーセキュリティショップを訪ねて、盗難事件の事例や最新の車両を守る防御策を取材した。

おさらいになるが、警察庁生活安全企画課が発表した資料によると、2023年における車両盗難の都道府県別認知件数は、千葉県、愛知県、埼玉県、茨城県、神奈川県で全体の55.6%を占めており、大都市圏での犯罪が多いことがわかる。

また、車名別の盗難台数を見てみると、2023年の第1位はトヨタアルファード。第2位はトヨタランドクルーザー、第3位はトヨタプリウス、第4位がレクサスLX、第5位はトヨタハイエースで、上位10台に8台もトヨタ車(レクサスを含む)がラインクインしており、人気の高さがわかる

(注:盗難台数とは、盗難等車両手配がなされた車名が明らかな車両であり、未遂などを含まれないため、犯罪統計における自動車盗難認知件数とは異なる。また小型トラック、中型トラック、大型トラックは含まない数字)

これを裏付けるように千葉県警察本部はビラを作り、トヨタアルファード/ヴェルファイアランドクルーザー、レクサスといった特定の車名を挙げて注意喚起を行っているのだ。今回取材で伺ったカーセキュリティ ゼロは千葉県浦安市にあるカーセュリティショップ。取材した日にも納車されたばかりのトヨタランドクルーザー250の施行中だった。

凶悪化が進む車両窃盗

取材に応じてくれたのは、カーセキュリティゼロの代表である林さん。最初に最近の車両盗難事故について聞いてみた。

「ひと言でいうと、凶悪化しています。先日も浦安市から市内で車両盗難が多発しているとSNSを通じて注意喚起が行われました。しかもトヨタアルファード/ヴェルファイアランドクルーザー、レクサス。と車名を挙げていました。これはこれらの特定の車両が狙われているということを表しているのだと思います。」

浦安市がSNSで行った注意喚起と千葉県警察本部が配ったビラに出てくる車種はピッタリと重なっている。まさに車両窃盗団が人気の高いトヨタ車やレクサス車を狙っているということだ。

続いて林さんに車両窃盗団の手口について聞いてみた。

「皆さん、ご存じのとおりリレーアタックやCANインベーダーという手口が中心でした。そして2024年になってゲームボーイという機器を使用したキーエミューターと呼ばれる盗難事件が増加しています。リレーアタックは、スマートキーから発生する電波を利用した車両盗難で、キーが近くにないとできませんでした。したがって自宅の駐車場で行われることが多かったのです。

しかしゲームボーイは電波を利用する点はリレーアタックと同じですが、もとはスマートキーが壊れた時の救済措置の機械として開発された電子機器を悪用した窃盗です。したがってスマートキーが近くになくても犯行ができるということが特徴です。」

ちょっと停めてる隙に

キーレスエントリーや電動のパワーリアゲートといった電波を利用した便利な装備が普及したことで車両盗難がしやすくなってしまったということになる。ゲームボーイを使用したと思われる盗難の事例を教えてもらった。

「最近、トヨタランドクルーザープラドが盗難被害にあいました。もともとカーセュリティは装着されていない車両でした。このオーナーさんは集合住宅にお住まいで、駐車場に出入りするには、入居者専用のカードが必要だからです。普通ならば、かなりセキュリティが高いと思います。

しかし、たまたまマンションが修繕工事を行う際に、クルマを外に置かなければならない時があったそうです。公道において数時間で車両盗難にあってしまったのです。普段からこの場所にランドクルーザープラドがあることがわからないので、一見というか行きずりの犯行です。徘徊していてたまたまターゲットのクルマを見つけたので、即犯行に及んだ。こういった盗難事案は最近増えているので、ゲームボーイによる犯行と思われます。」

これまでは、入念に下調べをしてユーザーの生活パターンを把握してから犯行に及んでいたが、ゲームボーイという機器の登場で、ちょっと停めていただけで、盗まれる可能性が高くなっているというのだ。

「夜間コインパーキングに停めておいたレクサスLX570が盗難にあったという事例もあります。これはCANインベーダーかゲームボーイなのか、わかりません。しかし現在はターゲットとなっているクルマを見つけたら、確実に盗難するという凶悪化が進んでいます。こういった点からも、カーセキュリティを強化して自己防衛する必要があると言えるでしょう。」

物理的な対策は効果なし

自己防衛として物理的なハンドルロックやタイヤロックはまだ抑止力として、効果はあるのかと聞いてみた。

「ハンドルロックやタイヤロックといったグッズは、以前はそれなりの効果はありました。窃盗する側からすれば、時間が掛かるので面倒だということで抑止力を発揮していたでしょう。

しかし、現在は、ハンドルロックやタイヤロックはバーナーで焼き切られてしまいますので、抑止力が下がっていると思います。また盗難が未遂に終わっても、犯人が証拠隠滅をために車内に消火器をまく事例もあり、こういった点からも凶悪化が進んでいて、狙った獲物は逃さない。そういう考え方が窃盗団に浸透していると思います。自動車メーカーも指紋認証などを採用してセキュリティを高めていますが、現状いたちごっこになっています。」

では、凶悪化そして進化する機器を使った窃盗団から自分の愛車を守る手段はあるのかを聞いてみた。

「私のショップでは、オーサーアラームのキーレスブロックをオススメしています。このキーレスブロックという商品は、スマートキーでロック後スマートキーの電波を車両が受け付けなくなりスマートキーの電波を使ったリレーアタックやキーエミューター(ゲームボーイ)盗難手口をシャットアウトします。スマートキーのアンロックボタンが有効なのと、スマートフォンをペアリングし、 認証もしくはキーフォブでの認証も可能で専用操作は一切不要のため日常の使い勝手が非常に良い点が特徴となっています。」

つまり、車両やスマートキーから出る電波をシャットアウトし、リレーアタックやキーエミューターによる盗難を防ぐというものだ。このキーレスブロックでドアの解錠やエンジン始動を防ぐということだ。このキーレスブロックの費用とこれで万全なのかを聞いてみたころ答えはノーだった。

車両にダメージを与えない対策

「このキーレスブロックは工賃込みで約10万円です。しかし、私としてはこれが最低限で、より完璧にするのであれば、オーサーアラームのイグラアラームの装着を薦めています。

この商品は、車内に張り巡らされたコンピューターネットワークを制御し、鍵の解除やエンジン始動を行うという盗難手口のゲームボーイやCANインベーダーを防ぎます。ドアの鍵を開けると大きな警告音がなり、エンジンスターターボタンを押すと再び大きな警告音が鳴り、さらにエンジンがかからないというデジタルカーセキュリティです。

この商品は、車両の配線を切断することがないため、クルマの走る、曲がる、止まるの基本機能および安全性、信頼性や品質への影響を最小限にとどめ、デジタル通信により車両側システムと融合できるため、確実な作動と車両にダメージを一切与えないのが特徴です。これら2つセットで30万円くらいになります。」

車両盗難は最新車両ばかりではなく、旧い車両も多くなっているが、今紹介した商品は、年式問わず有効なのかを訪ねた。

「オーサーアラームのキーレスブロックやイグラアラームは、デジタル通信が進んだ比較的新しい車両には有効です。旧い車両の場合は、クリフォードをオススメしています。年式の目安は2010年頃です。この年式あたりから、クルマのデジタル化が進み始めますので、これより年式が新しければデジタル系のイグラアラーム。旧ければアナログ系のクリフォードですね。

また、CANに対応して車両適合のソフトウェアがあれば、イグラ2とクリフォードのハイブリッドをオススメしています。取り付け時間は、オーサーアラームのデジタル系は半日。クリフォードは2〜3日です。ただ、現在商品によっては品薄となっていますので気をつけてもらいたいです」

オーナーの意識を高める

今回取材して感じたのは、車両盗難はもう対岸の火事ではないということだ。ゲームボーイという機器をもって窃盗団が徘徊していて、見つけたら即犯行に及ぶというようになっていることがわかった。

クルマを停めて一定の時間滞在するファミリーレストランや日帰り温泉など不特定多数の人が自由に出入りできて、クルマが自由に出入りできる場所はまさに危険スポットといえる。

自分の大切な愛車を守るための自衛策として、カーセキュリティの強化に加えて,駐車場の場所。ファミリーレストランなどでは、自分のクルマを店内から見えやすい位置に停めるなど、オーナーの意識を高める必要がある。残念ながら、それくらい日本の治安は悪化しているということだ。

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