華やかすぎる会見

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「最初からテストの答案を教えるのはダメ」

 いよいよ真打ちの登場といったところか。小泉進次郎衆院議員が自民党総裁選への出馬を表明し、次の総理の座を争う舞台役者たちが揃いつつある。

 日本テレビが行った自民党員・党友への電話調査によると、次の総裁に「誰を支持するか」という質問に対し、1位は全体の28%の支持を得た石破茂衆院議員、2位は進次郎氏で18%だった。こうした結果や各社の世論調査などから、決選投票は「石破VS進次郎」ではないか、と見る政界関係者が多い。

【写真】「わぁ、こんなにきれいな人がこの世にいるのか!」 対抗馬・石破氏は慶大時代、妻・佳子さんにひとめぼれしたという

 無論、総裁選までは3週間あるので、今後の論戦によっては別の候補が台頭してくることも想定されるが、とはいえ、現状としては石破氏と進次郎氏が本命であると言っていいだろう。

華やかすぎる会見

 実は最近、石破氏が進次郎氏について「論評」する一幕があった。まだ、進次郎氏が出馬を表明する前の8月28日、政治解説者の篠原文也氏が主催する講演会「篠原文也の直撃!ニッポン塾」に石破氏がゲストとして登壇した時のことだ。

 篠原氏と石破氏との対談形式で行われたこの講演会。丁々発止のやり取りの中で、石破氏は進次郎氏について、以下のように語っていた。

「キャラが全然違いますから。年齢は小泉さんが43歳で私が67歳、下手したら親子でしょ。小泉さんは当選5回、私は当選12回です。小泉さんは華やかでイケメンで、つかみは上手。これまで私をイケメンと言ってくれた人は誰もいませんし、話が長いと言われます。でも、これから(総裁選の)討論会があります。選管はいまどうやってやろうか、頭を痛めているでしょう」

 そして、討論の方法をこう提案した。

「年金なら年金、医療なら医療、農政なら農政、財政なら財政、とその場でくじをひいてあたったテーマについて討論すればいい。最初からテストの答案を教えるのはダメだと思いますよ」

「強靭な胃袋と強靭な神経がないと」

 進次郎氏が不安視されているのは政策面だとされる。これまで党三役や官邸の要職を務めたことがなく、いわゆる族議員のような特定の分野の政策に精通してきた、ということもない。また、環境大臣時代の「セクシー」発言を引き合いに出すまでもなく、アドリブでの答弁能力も不安要素の一つだ。

 一方の石破氏は防衛をはじめとして政策通で知られる。これまで幹事長や防衛大臣、農水大臣、地方創生担当大臣と、党の要職と複数の大臣職を経験しているという点で経験値では進次郎氏を上回る。

 さらに、石破氏は常日頃から“本の虫”でもある。夜の会合が2件、3件と続く「2階建て」「3階建て」も当たり前の政治の世界において、石破氏はこれまで夜の宴席よりも「勉強」を優先し、政治家同士の会合に積極的ではないとされてきた。

 いわば、「くじ引き討論会」の提案は、いかにこれまで自分が勉強をしてきたか、という自信の表れでもある。だが、石破氏の「勉強熱心」な姿勢が弱点にもなっていたと、篠原氏はこの時に指摘している。

篠原「石破さんは前から評価が高い一方 、永田町の人たちとの付き合いが薄い。人間関係を作っていないんじゃないか、と。最近は会食も増えていると聞いています。2階建て、3階建て、やっているんですか?」

石破「なかなか3階建てはきついですね。強靭な胃袋と強靭な神経がないとできないですね」

石破「私、能力がないので、国会答弁でも徹底的に調べるんですね。相手がこういう議論を仕掛けてきたら、どう答えるのか、と。大学の試験でもそうですよね。勉強すればするほど、自分はこんなに知らないのか、ということがわかる。どうも、(人付き合いよりも)そういう方にウエイトをかけているところはあります」

安倍氏に対し「許せない」

 要は“メシ活”よりも勉強、だというわけだ。実はここで篠原氏は石破氏が最も総裁に近づいた2012年の総裁選を引き合いに出している。後に長期政権を樹立する安倍晋三氏や石破氏を含めた5名が立候補したこの時の総裁選で、石破氏は圧倒的な地方票を獲得しながら、議員票を含め、過半数を得ることはできず、安倍氏との決選投票に進んだ。篠原氏はこの時のエピソードを石破氏とのやりとりで披露している。

篠原「あの時、町村信孝さんが出馬されていました。明日、いよいよ投票だという時に町村さんから電話がかかってきたんですよ。“決選投票に残るのは石破と安倍の二人だ。どっちに俺の票をまとめて振るか迷っている。意見を聞かせてくれ”と。」

 そこで篠原氏は「福田赳夫さん以来の派閥だから、ここは安倍さんでまとめたら」とアドバイスすると、「安倍だけは許せない。俺が立候補したのに、同じ派閥に属しながら後出しで立候補してきた」と町村氏は言った。

町村氏は当時、清和政策研究会(後の安倍派)の会長だった。

「では石破さんでまとめたら?」と篠原氏が言うと、「石破氏とはじっくり話したこともないし、メシも食ったこともない。どういう人物か、分からんのだ」と語ったという(注・石破氏は否定)。

 結果的に、町村氏がまとめた20人近くの議員票は同じ派閥の安倍氏に流れた。石破氏に町村票が流れていた可能性は大いにあった。「石破さんに流れていれば、安倍さんではなく石破さんが総理になっていた。何しろ19票差でしたから」と篠原氏は言うのだ。

父親は清和会に属していた進次郎氏

 今回、石破氏は父親が清和会に属していた進次郎氏と相対することになる。その戦いをどう見るか。

 篠原氏が言う。

「石破さんの至上命題は議員票と党員・党友票の両方で争われる1回目の投票で進次郎さんを抑え、党員・党友票でトップに立ち、尚且つ全体でも1位になることです。決選投票はこのままの流れでいけば、石破さんと進次郎さんになると思います。石破さんはもともと議員票が弱いので、1回目の投票で2位に甘んじてしまえば、決選投票で流れが進次郎さんに傾くことは確実です。石破さんとしては1票でもいいので、1回目の投票で進次郎さんを上回り、決選投票に臨みたい。そうすれば、勝てる可能性が出てくるでしょう。現に3年前の総裁選では岸田文雄さんは1回目の投票でわずか1票差でしたが、河野太郎さんを抑え、結果、決選投票で勝利しました」

デイリー新潮編集部