ちょっとがんばりすぎたり、無理してしまうことで、体調を崩してしまう人もいるかもしれません。作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんは、夏の長い農作業の後に始まった腰の痛みに不安を感じ、思いきって皮膚科を訪れると「帯状疱疹」と診断されたと言います。今回の体験について詳しくつづってくれました。

がんばりすぎた夏の終わりに出た症状

右の腰が痛いなあとは思っていたのだ。

2か月間、愛媛での農作業を終え、へとへとで東京の家に戻ってきたのは8月下旬のこと(東京と愛媛の二拠点生活中です)。

いつもなら数日寝たら復活するのに、右側の腰痛は酷くなるばかりだった。マッサージガンでもみほぐす。お風呂につかる。ストレッチをする。それでも痛みは引かず頭や眼球、歯も痛くなってきた。それも右側だけだ。マッサージしすぎたせいか、腰の皮膚まで焼けつくように痛みだし、こういうときこそ湿布の出番と貼ってみるも、跳び上がるほど痛くてすぐはがした。

これはもしや…。昔、友人が帯状疱疹になったのを思い出した。神経に沿って帯状に赤い発疹ができて、すごく痛がっていた。

右腰を見てみたけど、発疹は見当たらない。やっぱりこれは農業のやりすぎによる極度の腰痛だろう。寝れば治る、とベッドに横になるが患部が圧迫されて痛くて痛くて眠れない。そのうち熱も上がってきて、こいつはただの腰痛ではないと思った。

医師に告げられたのは「帯状疱疹」

翌日、木曜日でかかりつけの病院はお休みだった。では、整形外科か? 皮膚科か? 鍼灸院か。この三択で迷ったが、一か八かで皮膚科を受診することにした。

「帯状疱疹ですね」

見るやいなや、先生はそう言った。

「でも、発疹もないですし。マッサージガンのしすぎで炎症が起きているとか?」

私は、こんなピンピンしているのに帯状疱疹になんてなるはずないと思いこんでいた。

「ここにひとつ赤いのがあります」

これ? そのオデキは1週間前に私も発見して、変なとこを蚊に刺されたなーと思っていた。これひとつで帯状疱疹だと?

体の片側だけに皮膚の痛みが出て、発疹がひとつでもあるのだから、ほぼ間違いないだろうと即決だった。

「子どもの頃に水ぼうそうしてます?」

「はい、2歳のときに」

「帯状疱疹はね、そのウイルスが神経に潜伏して、体力の落ちたとき目を覚まして暴れるんですよ。最近お疲れでした?」

「まあ…」

2か月間、ほぼ毎朝5時前に起きて畑仕事をしていた。昼間は外に出られないので、早朝と夕方から夜にかけての作業。夜帰ってから夕飯をつくってお風呂に入って…翌朝も早朝、となると必然的に睡眠不足は積み重なった。同時に執筆もしていた。気力で乗りきったようなもんだったのか。体は正直だな。

「もし膀胱とか子宮とか、内臓まで痛むようでしたら、専門の病院へ行ってくださいね。急な変化があったらまた来てください」

急にこんなにいろいろ、怖すぎるなあ。内臓にまでくることもあるのか。

採血もないままに薬を処方されたので、薬剤師さんに聞いてみると、

「検査結果待ってたら2日後とかになるでしょう。とにかく、一分でも早く抗ウイルス薬を飲まないと帯状疱疹は取り返しのつかないことになるから」と。

帰ってすぐ薬を飲んだ。

ここからが本格的な痛みとの闘いだった

これでもう安心と思ったのも束の間。おかしい、痛みも熱も増している。腰を触ると…発疹が増えて、お腹の方まで帯状に出てきている! 下着の締めつけさえも痛いし、相変わらず痛すぎて眠れぬ。立っているとましなのだけれど、顔を洗おうにも痛くて腰も曲げられん。心なしか子宮もちくちくしてきたような。

不安すぎて土曜日にまた病院へ行ってしまった。

「今はウイルスと体が闘っているところだからいちばん痛いでしょうね。発疹もまだ出てくるでしょう」

二次感染して発疹が膿みをもちはじめると大変だけれど、見た感じその心配はないから、とにかく体をよく休めること。そのためにも痛み止めを追加して安眠できるようにしましょうと言った。1、2、3、4、5、6、7…こんなに大量に薬を飲むのは初めてだが、追加した痛み止めのお陰かやっと眠ることができた。

それからも、痛み止めがきれると猛烈な痛みがやってくるのを繰り返しながら、ちょっとずつ元の体に戻りつつある、と信じたい。

この痛みが1か月〜1年以上続く人もいるそうだ。気の毒すぎる。そして、体力が落ちたら、この病また5年とか10年後に目を覚ますそう。ひー。やめてくれー。

周囲でも多い帯状疱疹

意外と帯状疱疹になった人はたくさんいた。私は腰だったからまだ大事にならなかったけど、目に出てしまってお岩さんどころではなくなった人や、帯状疱疹が原因で顔面神経痛になって片方の顔がしばらく動かなくなった祖母のことを思い出した。あれは本当に辛そうだった。とにかく早期発見が大切だとか。

入院中など免疫の落ちているときになる人が多いようだが、受験中になったという人もいた。テレビCMなんかで「50代から帯状疱疹のワクチンを打ちましょう」というのを見ていたから高齢者の疾患と思い込んでいたけど、若くても疲れていたらなるんだなあ。

治療が遅れて入院したという人もいた。早期発見と言われても、判断がとても難しい。私は、偶然にも皮膚科に行く選択ができたけど、発疹も見当たらず腰痛となると、普通は整形外科に行くだろう。片側の皮膚にピリピリとした痛みやかゆみを感じて、発疹がひとつでも出たら、すぐ皮膚科に行ってみてほしい。

間違っていたら間違っていたで、笑える方がいいもの。私もあの日、痛くて痛くて本当は外になんて一歩も出たくなかったけど、皮膚科へ行ってよかった。たったひとつの発疹を見逃さなかった先生のお陰なんだけれどね。

自分の体が出したSOSで感じたこと

「とにかく、ぼーっとすることが大事よ」

と、20代で帯状疱疹になった友達がメールをくれた。

ぼーっと。私のお得意のやつだったはずだが、いざぼーっとしてみると、とても懐かしい感覚だった。畑で虫が大量発生したり、猪に荒らされたり、炎天下での草刈り、日照りで野菜が次々に枯れたり、人手がたりなくてひとりでがんばりすぎたことも。この2か月、体力だけでなく、私は精神的に参っていたのだと、ぼーっとしてわかった。

私の体が出したSOSは、今後のことを考えるいい機会にもなった。時間は有限だ。やりたいことなにからなにまで全部やりたいけど、体力も昔よりも有限であることを知った。少しずつ引いていく痛みとともに、夏の終わりを感じている。

※この記事の病状や診断は個人的なものです。健康不安があれば、かかりつけ医や信頼できる医療機関を受診、相談しましょう