中国の自動車ディーラー「半数超が赤字」の泥沼
中国の自動車ディーラーは外資系、中国系を問わずの「逆ザヤ」販売が常態化している。写真はメルセデス・ベンツの広東省の販売店(同社中国法人のウェブサイトより)
中国の自動車市場で激しい価格競争が続く中、自動車ディーラーの経営が悪化の一途をたどっている。
自動車販売業者の団体である中国汽車流通協会は8月21日、2024年上半期(1〜6月)のディーラーの経営状況に関する最新の調査報告書を発表した。それによれば、自動車販売の最前線では新車の実売価格がディーラーの仕入れ価格を下回る「逆ザヤ」現象や、自動車メーカーがディーラーに支払うインセンティブ(販売奨励金)をめぐる確執、メーカーからの在庫押し込みなどの問題が常態化している。
その結果、多数のディーラーの経営がすでに赤字に転落するか、赤字すれすれの苦況に追い込まれているという。
店頭値引率が20%超え
中国汽車流通協会は上述の調査に7月から着手し、1164件の有効回答を得た。それに基づき算出した上半期の「ディーラー総合満足度」は69.7ポイントと、2013年以降の最低記録を更新した。
ディーラーの不満がとりわけ大きいのが、インセンティブをめぐる自動車メーカーとの確執だ。中国の自動車業界では、メーカーとディーラーの間で年間および四半期ごとの販売目標を取り決め、その達成度合いに応じてメーカーがインセンティブを支払うのが慣例になっている。
ところが2024年の上半期、とりわけ4〜6月期の自動車販売は(個人消費の低迷などの影響で)顕著に減速。多数のディーラーがインセンティブの減額を避けようと、目標達成のために自腹での値引き販売に走った。
中信建投証券の調査レポートによれば、ディーラー店頭での平均値引率は2022年1月時点では11.4%だったが、2024年1月に初めて20%を超え、2024年6月には23.2%に上昇している。
だが、ディーラーは値引きの痛みに見合ったリターンを得られていない。中国汽車流通協会の調査によれば、2024年上半期の販売目標を達成(して満額のインセンティブを獲得)したディーラーは全体の3割弱にとどまり、目標達成率が70%未満のディーラーが全体の3分の1を占めた。
販売価格と仕入れ価格の逆ザヤは高級車ほど大きい傾向がある。写真は国有大手の中国第一汽車集団が展開する「紅旗」ブランドの高級車(同社ウェブサイトより)
販売業者の損益に関しては、半数超の50.8%が赤字だった。収益構造の内訳を見ると、新車販売の粗利益率は26.5%のマイナスに落ち込み、アフターサービスや自動車ローン、自動車保険などの収益に頼っている状況だ。
高級車ほど逆ザヤ大きく
こうした苦況の要因について中国汽車流通協会は、自動車メーカーが要求する(実需に対して)現実離れした販売目標が、流通在庫の膨張とディーラーの資金繰り悪化を招き、(インセンティブと運転資金を確保するための)赤字販売を余儀なくさせたと分析している。
新車の販売価格と仕入れ価格の逆ザヤは、(高額消費の冷え込みが販売を直撃している)高級車ほど大きい傾向がある。ある高級車ディーラーの元営業マンは財新記者の取材に対し、車両1台当たりの逆ザヤが数万元(1元=約20.4円)に達することもあると明かした。
中国の個人消費の弱さが短期的に改善する見通しはない。中国汽車流通協会の調査によれば、一部のディーラーは2024年の通期の販売台数が2023年の実績を割り込むと、弱気の予想を示した。
(財新記者:余聡)
※本文の配信は8月22日
(財新 Biz&Tech)