不倫発覚した内縁の妻が家を出て行ってしまい…、病身の夫が「置き去りにされた」と慰謝料請求
「うつ病で日常生活を一人ではできない状態なのに、内縁の妻に家を出ていかれ、大変な思いをした。慰謝料を請求できないのか?」。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談を寄せた男性は、うつ病を患っているといいます。10数年間連れ添った内縁の妻による介護がないと、1人では食事やトイレをすることが困難な状態でした。ところが妻の不貞行為が発覚し、男性が問い詰めると「妻は家を出ていってしまった」そうです。
男性の状態を知りつつ、家を出ていった妻に対し「慰謝料を請求したい」としています。内縁の妻にあたるのであれば、不貞や「悪意の遺棄」にあたるとして慰謝料を請求することはできるのでしょうか。松本典子弁護士に聞きました。
●「内縁の妻」とは
--婚姻関係にはなかったとはいえ、10数年の付き合いで同居もしていたことは「内縁の妻」に該当するのでしょうか
「内縁の妻」とは、婚姻の届出をしていないため法律上の夫婦とは認められないものの、社会生活を送る上で事実上夫婦同然の生活をする女性のことを指します。判例も、内縁関係を「婚姻に準ずる関係」と認めています。
法的に内縁関係があるかどうかの判断ポイントとしては、
・その男女に婚姻の意思があるかどうか
・夫婦同然の共同生活を営んでいるかどうか
という点から判断されることになります。同居の期間もこの判断の中で考慮されることになります。
--今回、相談者は10数年、同居していたそうです。この期間はどう判断されますか
一般的には、3年程度の同居期間があれば、内縁関係が認められやすくなる傾向にあります。
本件のケースでは、婚姻関係になかったとはいえ、10数年の付き合いで同居もしていたということですので、「内縁の妻」に該当すると考えられます。
●慰謝料の請求は可能?
--その場合、不貞行為や「悪意の遺棄」に該当するとして、慰謝料請求は可能なのでしょうか
まず、不貞行為についてですが、内縁関係の夫婦も、結婚している夫婦と同様、貞操義務を負うものと考えられています。
本件のケースでは、内縁の妻が貞操義務に違反して不貞行為をしていますので、慰謝料を請求することができると考えられます。ただし、不貞行為の当時、すでに内縁関係が破綻していたといった事情がある場合には、慰謝料を請求することはできません。
次に、「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく、夫婦の同居義務、協力義務および扶助義務を放棄する行為のことをいいます。法律婚の場合には、裁判で離婚が認められる事由のひとつです。
内縁関係の場合も、夫婦同然の共同生活を営んでいることが前提となっていますので、正当な理由のない破棄があれば、慰謝料を請求することができると考えられます。
本件のケースでは、内縁の妻は男性の症状を知りつつ、不貞行為の発覚を理由に家を出ていったということですので、慰謝料請求をすることができると考えられます。
【取材協力弁護士】
松本 典子(まつもと・のりこ)弁護士
歌舞伎町でキャバクラ嬢として働いているときに弁護士を志す。国際基督教大学教養学部理学科生物学専攻卒業。予備試験経由で司法試験合格。東京弁護士会所属。企業法務を中心に、男女問題、相続、刑事事件等幅広く取り扱う。現在はテーマパーク業界を中心とした横断的な法律問題や個人情報保護に注力している。
事務所名:松本中央法律事務所
事務所URL:https://www.m-laws.jp/