目にレンズを移植する「ICL」は危険!? 失敗しないためのポイント・注意点を医師が解説!

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眼内コンタクトレンズとも呼ばれ、近視や遠視、乱視を矯正する治療として普及している「ICL」。コンタクトレンズのように着脱が不要なことに加え、レーシックのように角膜を削る必要もないといったメリットがあります。しかし、手術にはリスクがないのでしょうか。手術当日の注意点と合わせて、「ASUCAアイクリニック」の野口先生に解説していただきました。

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監修医師:
野口 三太朗(ASUCAアイクリニック)

東北大学医学部卒業。大阪大学大学院修了。その後、東北大学医学部眼科学教室、ツカザキ病院、石巻赤十字病院眼科などで経験を積む。2022年、宮城県仙台市に位置する「ASUCAアイクリニック」の主任執刀医を務める。医学博士。日本眼科学会専門医。日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本白内障学会ほかの各会員。

ICL(眼内コンタクトレンズ)とは?

編集部

まず、ICLについて教えてください。

野口先生

ICLは、目の中に有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)という小さなレンズを移植して、近視や乱視を矯正する治療です。

編集部

どのような人が対象になりますか?

野口先生

近視や遠視、乱視を矯正することができ、レーシックと比べて適応条件が非常に広いという特徴があります。適応年齢については、ガイドラインで「目の発達が落ち着く21歳以上でおこなう」ということが定められています。

編集部

レーシックの場合、強度の近視の人は受けられないと聞きました。

野口先生

ガイドラインでは「-6.00D以上の強度近視はレーシック“慎重適応”、-10.00Dを超える場合はレーシック“禁忌”」とされています。強度の近視の場合、角膜を削る量が増えるからです。その一方、ICLは角膜を削る必要がないため、強度の近視でも適応となります。

編集部

レーシックが適応外でも、ICLでは治療可能になるのですね。

野口先生

はい。そのほか、一般にレーシックは適応外とされる角膜が薄い人や非進行性の円錐角膜の人も、ICLの治療を受けることは可能です。レーシックと比べて適応範囲が広いだけでなく、「光学的特性に優れており、視機能の回復が期待できる」「レンズを摘出したり交換したりすることで度数の変化に対応することができるほか、元の状態に戻すこともできる」といったメリットもあります。

編集部

「レーシックはできない」と言われた人でも、ICLができるのは嬉しいですね。

野口先生

ほかにも、授乳中や妊活中の人などはレーシックが難しいとされていますが、ICLは受けることができます。また、ドライアイの人も同様に、ICLであれば受けることができます。

編集部

ICLに年齢制限はありますか?

野口先生

明確な上限は定められていませんが、実際には50歳までにおこなうのがベストと言われています。50歳頃から、老眼や白内障などの目の病気やほかの症状が出現するからです。したがって、ICLの効果を最大限実感したければ、それ以前に手術をするようにしましょう。

ICLの手術の流れと注意点

編集部

ICLの手術は、どのようにおこなわれるのですか?

野口先生

まずは治療が適応となるのか、角膜形状解析や角膜内皮細胞検査など、各種検査をおこないます。安全に治療がおこなえることを確認したら、レンズを選定します。レンズには様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあるので、患者さんの目に最適なレンズを提案します。

編集部

その後は?

野口先生

検査をしてからレンズを発注し、1週間程度でレンズが届くので、その日を目処に手術の日を決定します。手術の3日前から殺菌と術後感染症予防のために点眼を開始します。手術は点眼麻酔と眼内麻酔でおこなわれ、手術時間は片目3分半ほどです。

編集部

手術中や手術後に、痛みは出るのでしょうか?

野口先生

ICLのレンズは折り畳んだ状態で目の中に入れるので、非常に小さな切開創で手術ができます。そのため、痛みをほとんど感じないという患者さんがほとんどです。もし痛みを感じたら、手術中に麻酔を追加することもできます。

編集部

痛みがないのはいいですね。

野口先生

手術前に目の消毒をおこなうのですが、ときどき、その際にしみるという患者さんがいます。また、術後は目の表面がしみることがありますが、1時間程度でなくなります。

編集部

手術後はどれくらいで視力が安定しますか?

野口先生

手術直後から視力の改善を実感できると思います。ただし、手術当日はぼんやりした見え方がするかもしれません。少しずつ視力が安定して、手術当日の夕方や夜には視力が回復します。術当日は目を休めるようにしましょう。翌朝にはバッチリ回復していると思います。

編集部

手術当日の注意点はありますか?

野口先生

手術中に毛や繊維が飛び散ることがあるので、毛羽立った衣類や小物は身につけないで来院してください。また、当日は車やバイクの運転ができません。必ず公共交通機関を利用して来院するようにしましょう。

編集部

ほかにもありますか?

野口先生

手術翌日から洗顔やシャワー、入浴、事務系の仕事が可能となります。2~3日目から軽い運動が可能になり、1週間後から旅行や運転ができるようになります。ただし、個人差があるので、詳しくは主治医にご相談ください。

編集部

そのほか、手術後に注意することはありますか?

野口先生

手術後、目をこする動作はあまり好ましくありません。特に術後1週間はこすらないようにしましょう。加えて、手術当日から点眼をおこないます。医療機関によって異なりますが、当院の処方では手術当日は1時間おきの点眼が必要です。必ず医師の指示に従ってください。

ICLの手術のリスクはある?

編集部

ICLの手術のリスクはありますか?

野口先生

術前の検査結果をもとに、その人に適したレンズを選定しますが、眼内に入れたレンズの大きさや度数が、合わないということが稀にあります。レンズの大きさが合わない状態が長期続くと角膜のダメージが発生するリスクがあるため、再手術になることもあります。

編集部

そのほかには?

野口先生

こちらも稀ですが、レンズに対するアレルギーや、術後の炎症や感染症のリスクがあります。また、夜間に光の輪が見える「ハロー・グレア」という症状が出現することもあります。徐々に症状は和らぎますが、気になるのであれば医師に確認しましょう。

編集部

ICLは一生入れたままでもいいのでしょうか?

野口先生

コンタクトレンズと違って、一生入れたままでも大丈夫で、レンズが汚れたり曇ったりすることもありません。レンズの耐久性は確認されており、数十年以上にわたり、耐久性や生体適合性が安定していることが認められています。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

野口先生

ICLは非常に安全で広くおこなわれている手術ではありますが、まだ医療分野では新しい技術です。そのため、医師の知識や手技の能力に依存する部分も多々あります。できれば眼内レンズを専門とするドクターを受診してください。その際には、「積極的に論文や研究を発表しているか」「手術数が多いか」などを参考にしてください。眼内レンズは複雑で専門性の高い知識を要するので、医師が眼内レンズについてどの程度の理解があるのかを知ることは重要です。また、ICLの手術は白内障手術の手術手技の一部です。ICLを受けた人は、いつか白内障手術も受けることになります。そこまで見越した治療を受ける必要があるため、眼内レンズ・白内障手術のプロ、研究者の眼科医を頼ると質の高い視力を術後に得ることができるのではないかと思います。

編集部まとめ

コンタクトレンズやメガネの煩わしさから解放されたい人にとって、ICLは非常に優れた治療法です。その反面、まだ新しい治療法のため、医師による技術の差が大きいとのことでした。ICLを受けるのであれば、信頼できる医師を選びましょう。その際、研究や論文発表への積極性や症例数が医師選びのポイントとなります。

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