逮捕されたTelegramのパーヴェル・ドゥーロフCEOは2017年にフランスとUAEの共同作戦によりiPhoneがハッキングされていた
by TechCrunch
暗号化メッセージングアプリ・Telegramの共同設立者であるパヴェル・ドゥーロフCEOは2024年8月24日に、パリ郊外のル・ブルジェ空港に到着した際に身柄を拘束されました。これは、Telegramが児童ポルノコンテンツや組織犯罪の温床となっていること、そしてフランス司法当局の要請に協力しなかったことが疑われたためですが、その裏でフランスとアラブ首長国連邦(UAE)がドゥーロフCEOのiPhoneをハッキングしていたことが報じられています。
https://www.wsj.com/world/who-is-pavel-durov-telegram-founder-9b43eb5a
UAE weighs in on Telegram CEO Pavel Durov’s detention by France | Technology News | Al Jazeera
https://www.aljazeera.com/news/2024/8/27/uae-weighs-in-on-telegram-ceo-pavel-durovs-detention-by-france
ドゥーロフCEOは2024年8月24日、フランスのパリ郊外にあるル・ブルジェ空港でプライベートジェットから降りたところを逮捕されました。容疑は「Telegramアプリを通じて行われている麻薬密売・マネーロンダリング・児童ポルノといった犯罪行為の共犯」でした。
メッセージアプリ「Telegram」の創設者兼CEOのパーヴェル・ドゥーロフがフランスで逮捕されたとの報道 - GIGAZINE
「Telegramが犯罪の温床になっている」ということは以前から指摘されていましたが、ドゥーロフCEOとフランスの関係は良好といえるものでした。
2018年、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がドゥーロフCEOとランチミーティングを行いました。この会談で、マクロン大統領はドゥーロフCEOTelegramの本社をパリに移すよう提案し、フランス国籍の付与についても議論されていました。
そして2021年に、ドゥーロフCEOはフランスとUAEの国籍を取得しました。同年、アラブ首長国連邦はTelegramに7500万ドル(約110億円)以上を投資しています。フランス国籍の取得は「外国人名士」手続きによるもので、ドゥーロフCEOの国籍申請書には、マクロン大統領との複数回の面会が言及されていたとされています。
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その後、ドゥーロフCEOはフランス国籍を得たことで、フランスのパスポートを使ってEU圏内を自由に移動できるようになりました。2023年にはフランス北西部のノルマンディー地方へ自転車旅行に出かけていたそうです。
しかし、フランス政府はドゥーロフCEOとの関係を構築する裏で、ドゥーロフCEOの情報を掌握しようとしていたとThe Wall Street Journalが報じています。
The Wall Street Journalに関係者が語ったところによると、フランスの諜報機関はUAEと共同で、ドゥーロフCEOのiPhoneをハッキングする作戦「Purple Music」を2017年に実行したとのこと。この任務が実行された背景には、イスラム過激派のISILがTelegramを使って工作員を募集し、テロ攻撃を計画していることに対する強い懸念があったそうです。
つまり、フランス政府はドゥーロフCEOとTelegramに対して、監視と協力の両面からアプローチを仕掛けていたというわけです。
一方、フランスと合同でドゥーロフCEOにハッキングを仕掛けたとされるUAEの外務省は2024年8月27日に、ドゥーロフCEO逮捕の一件を「注視している」という声明を発表し、「フランス政府に対し、同氏にあらゆる領事サービスを緊急に提供するよう要請した」と述べています。
なお、マクロン大統領はドゥーロフCEOの逮捕について「政治的決定ではない」という声明を発表しています。
TelegramのドゥーロフCEO逮捕は「政治的決定ではない」とマクロン大統領が声明を発表 - GIGAZINE