屋外でスマートフォンを使っている時に突然の豪雨に見舞われたり、スマートフォンを水場の近くで使ってしまったりして、スマートフォンをうっかり濡らしてしまったことがあるという人は多いはず。そんな時のために「スマートフォンから水を取り除く音」を再生できるムービーがYouTubeに公開されており、本当に効果があるのかをIT系ニュースサイトのThe Vergeが検証しています。

Testing the YouTube videos that promise to get water out of your phone - The Verge

https://www.theverge.com/2024/8/27/24228925/remove-water-phone-youtube-vergecast

The Vergeのデビッド・ピアース記者が取り上げているムービーが以下。タイトルは「電話のスピーカーから水を取り除く音(保証付き)」で、ステンドグラスが渦巻く幻想的なアニメーションと深く低いブザー音がおよそ2分間にわたって流れ続けるという内容です。

Sound To Remove Water From Phone Speaker ( GUARANTEED ) - YouTube

記事作成時点でムービーの再生回数は4500万回を越えており、「シャワーや風呂にスマートフォンを持ち込んで濡らした」「コップの水をかけてしまった」「食器を洗っている時にスマートフォンを流しに落としてしまった」など、スマートフォンを濡らしてしまったユーザーからのコメントが多く投稿されています。

ピアース記者も、2024年初頭に旅行先で親戚がスマートフォンを川に落としてしまった時に同行者がこのムービーを流し、スマートフォンは無事故障をまぬがれたということがあったとのこと。それ以来、「近年の携帯電話の防水性・耐水性がはるかに向上しているだけで、ムービーに水抜きの効果が本当にあるのだろうか」と疑問に思い続けていたそうです。



そこで、ピアース記者がAppleとGoogleとSamsungに尋ねてみたところ、「スマートフォンを濡らしてしまった場合の対処方」を示したサポートページを紹介されただけでした。しかし、音響機器メーカーのBoseのシニアリサーチディレクターであるエリック・フリーマン氏は「スピーカーが実際にやっていることは空気を押し出すことです。つまり、十分な空気を十分な力で押し出すことができれば、水滴をその場所から押し出すことはできるかもしれません」と回答しています。スマートフォンのスピーカーは小型ですが、低音域を大音量で流せば、水を押し出すことができる可能性は十分考えられるとフリーマン氏は述べています。

実際にこの原理を応用しているのが、Apple Watchです。Apple Watchにはスピーカー内部を振動させることで中から水を排出するシステムを採用しており、以下の記事を読むとどのようにして排出するのかがよくわかります。

着用したまま水泳も可能なApple Watchはどうやって中に入り込んだ水を排水しているのか?がわかるスローモーションムービー - GIGAZINE



そこで、ピアース記者はiFixitの主任分解エンジニアであるシャーラム・モクタリ氏、そしてiFixitのインターン生であるチェイトン・リッター氏と一緒に、実際に濡らしたスマートフォンでムービーを再生すると排水できるのかを確かめる実験を行いました。

実験に使われたのはiPhone 13、Pixel 7 Pro、Pixel 3、Nokia 7.1の4モデル。ピアース記者らは、紫外線に反応する染料を溶かした水を用意し、各スマートフォンを約1分間漬け込みました。そして、スマートフォンを取り出した後に軽く水を切ってからムービーを再生し、そのまま一晩放置してから紫外線を当てて、水がどこまで残っているかをチェックしました。

ムービーの効果については以下のGIFアニメーションを見ると分かる通り、どのモデルでもスマートフォンから大量の水滴が噴き出す様子が確認できたとのこと。ピアース記者は「明らかに効果はありました」と報告しています。



ただし、スマートフォンにはSIMカードスロットやUSBポートなど、スピーカー以外にも穴があるので、スピーカーから音を流すだけですべての水を抜けるわけではありません。水がほぼ残っていなかったのはPixel 7 Proのみで、iPhone 13とPixel 3は水が少し残っており、Nokia 7.1 は「多かれ少なかれダメになっていた」とのこと。

以下はiPhone 13に紫外線を当てたところで、水が浸入して残っているところが緑色に光っています。また、モクタリ氏は「携帯電話の密閉性は時間の経過と共に変化するので、気付かないうちにダメになっている可能性がある」と指摘しました。



ピアース記者は「携帯電話の防水性・耐水性は向上している」「携帯電話の防水性・耐水性は経年劣化する可能性がある」「真水ではなく海水や洗剤混じりの水の場合は故障する確率がさらに上がるかもしれない」とまとめています。それでも、ムービーの効果は確認できたことから、最終手段として緊急時に備えてムービーをブックマークしておくことをすすめました。

また、ピアース記者は、相談した相手すべてから受けたアドバイスとして「風呂場にスマートフォンを持ち込まないこと」を挙げています。