NPB復帰ゼロでも…“2軍球団”が開いた新たな移籍ルート 今後注目、ベテランも若手も「需要は増えてくる」
オイシックス橋上監督が見た“NPB復帰ゼロ”という現実
プロ野球は7月31日が新戦力の獲得期限となっており、今季から2軍イースタン・リーグに参加したオイシックスからNPB復帰を果たす選手は現れなかった。ただ翌8月1日に発表されたのが、元オリックスの吉田一将投手が台湾プロ野球の台鋼ホークスと契約したという知らせだ。NPBへの復帰やドラフト指名を目指す選手が集まった“2軍球団”の前に、突然開けた海外移籍への道。チームを率いる橋上秀樹監督はどうとらえているのだろうか。
7月31日は、今季からNPBの2軍に参加した2球団にとっては一つの節目となる日だった。オイシックスでも高山俊外野手(元阪神)や田中俊太内野手(元DeNA)、薮田和樹投手(元広島)や三上朋也投手(元巨人)ら、すでにプロとして豊富なキャリアを持つ選手がNPB球団への復帰を目指して戦ってきたが、声がかかることはなかった。
橋上監督は「もちろん残念ではあります。ただ彼らがNPBに復帰するためのハードルはかなり高い。すぐに1軍の戦力になれるかどうかという明らかな基準があるわけだから。ここはドラフト指名を目指している選手とは違う」と、現実を冷静に受け止める。「年齢も含め、圧倒的なものを見せないと復帰できないとは思っていました。これも想定の範囲内です」と、2軍戦で突き抜けた成績を残せなかったことに原因を求める。
「自分がNPB球団の編成担当者だったとしても、同じ判断になると思います。みんな一度はトライアウトを受けているわけです。『じゃあ、なんでそこで獲らないんだ?』ともなりますからね」
代わって、新たな道として浮上してきたのが海外リーグへの移籍だ。NPB補強期限の翌8月1日に発表されたのが、イースタン・リーグで36試合にリリーフし、防御率2.21という好成績を残した吉田一将投手(元オリックス)の台湾プロ野球、台鋼ホークスとの契約だった。
かつてのドラ1が求められて台湾へ…アジアから日本人選手への熱視線
きっかけとなったのは、四国アイランドリーグの徳島に所属している白川恵翔投手が、韓国プロ野球のSSGランダーズと6月に契約し、初登板で初勝利を挙げるなど先発として活躍したことだった。程なく、オイシックスにもアジアの球団から選手を獲得できないかという打診が入り始めた。橋上監督はこの現象を、起こるべくして起きたと見ている。
「アジアのプロ野球は、外国人選手の獲得でNPBと争うことになるわけです。そこでメキシコとか、日本でもNPB以外のリーグに目を向け始めている。行く選手にしてみても、アジアなら生活習慣がそれほど変わらないし、適応へのハードルは下がる。これから需要は増えてくるんじゃないかと思いますよ」
今回は吉田という経験豊富な選手が選ばれたが、ドラフト指名を目指す若い選手にも海外から声がかかる可能性はある。もし選手が海外の生活に不都合を感じないのであれば、チームにも好影響しかないという。
「日本の選手、特に投手のレベルの高さは、去年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも世界に知れ渡っているわけです。先方も日本の試合中継を見ていますし、道が広がるというのは選手のためにはいいこと。給料だけで言ってもここよりはいいはずですし、いわゆる“助っ人”で行くわけですから、インセンティブもある」
今回実現したのは台湾への移籍だったが、韓国プロ野球の球団からも選手獲得の打診があったという。NPBの2軍で残した数字は、アジアの球団にとっては絶好の判断材料となる。かつてのドラフト1位が切り開いた新たな道に、続く選手は現れるか。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)