「白血病が治る確率」はご存知ですか?生存率や治療法も解説!【医師監修】
白血病は血液細胞のがん化によって発症する病気です。不治の病扱いされていたのは過去のことで、現在では完治が望める病気になりつつあります。
白血病の原因となるがん化した細胞が、白血病細胞です。白血病細胞の種類や病状のスピードによって、白血病は急性・慢性・骨髄性・リンパ性の4種類に分けられます。
この記事では、白血病の症状や生存率のほか、日本の医療現場で行われている治療法を解説します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
白血病とは
白血病はがんの一種で、血液細胞の異常が原因で起きる病気です。骨髄の造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に変化します。
骨髄系幹細胞から作られるのが血小板と血小板、そして顆粒球と単球と呼ばれる2種類の白血球です。リンパ系幹細胞から作られる白血球がリンパ球です。
白血球には、体外から入ってきた細菌やウィルスなどを倒す役割があります。しかし、造血幹細胞が白血球となる過程で、異常が発生することがあります。
この細胞のがん化によって発生するのが、白血病細胞です。白血病細胞の増殖は、正常な血液細胞を減らし、血液の機能を低下させます。
急性・慢性・骨髄性・リンパ性などの分類は、白血病の進行スピードや原因となった白血球細胞を示します。
進行が早い急性白血病は、芽球と呼ばれる白血球細胞の増殖が原因です。進行が緩やかな慢性白血病は、成熟した細胞が原因で発症します。
骨髄性白血病は、骨髄系幹細胞ががん化した病気です。リンパ性白血病の原因は、がん化したリンパ系幹細胞です。
白血病が治る確率は?
白血病は、もはや不治の病ではありません。下記に記載するのは、患者さんの生存率を病名ごとに調べた結果です。
急性骨髄性白血病の生存率
急性骨髄性白血病は、骨髄系幹細胞から作られた骨髄芽球や前骨髄球が白血病細胞となり、骨髄のなかで増殖する病気です。
白血病と診断された日本人のうち、約60%が急性骨髄性白血病です。がんの診断を受けた5年後に、患者さんが生きているかどうかを調べた数値が5年生存率です。
65歳以下の急性骨髄性白血病の患者さんの5年生存率は約40%でした。
急性リンパ性白血病の生存率
急性骨髄性白血病は、リンパ系幹細胞のがん化が原因で発症します。白血病と診断された日本人のうち、急性リンパ性白血病の割合は約20%です。
65歳以下の急性リンパ性白血病患者さんの5年生存率は約30%でした。
慢性骨髄性白血病の生存率
慢性骨髄性白血病は、顆粒球ががん化する病気です。日本人の白血病患者さんの約20%が、慢性骨髄性白血病と診断されています。
慢性骨髄性白血病の症状は、慢性期から移行期、そして急性期へと進行します。抗がん剤を使用して、症状の進行を抑えた慢性骨髄性白血病の患者さんの5年生存率は90%以上でした。
慢性リンパ性白血病の生存率
慢性リンパ性白血病は、がん化したリンパ球が増殖する病気で、日本人の白血病患者さんに占める慢性リンパ性白血病の割合は約3%です。
慢性リンパ性白血病は症状の進行が遅く、診断が下りても治療を行わないケースがあります。
慢性リンパ性の5年生存率は算出されていませんが、診断を受けてから10年以上生存している患者さんもいました。
白血病の生存率に関わる要素
こちらの項目では、白血病患者さんの生存率に関係する要素を解説します。
年齢・健康状態
白血病は、年齢の若い患者さん程、生存率が高い病気です。小児の患者さんの急性骨髄性白血病の長期生存率は約60%、急性リンパ性白血病の長期生存率は約80%でした。
15~60歳の患者さんの5年生存率は30~40%ですが、60歳以上の患者さんの5年生存率は約10%に低下します。
長期生存率は、がんと診断された患者さんが5年以上生存しているか否かを示すのに用いられる数値です。
白血病の進行度
急性白血病は進行が早い場合、発症から1ヵ月程度で患者さんの命を奪うことがあります。初診時の白血球数が30,000/μLを上回っていると、治療による症状の改善は困難です。
なお、成人の白血球数の基準値は3,300/μL~8,600/μLです。慢性白血病は進行が遅く、自覚症状がほぼない慢性期のまま5~10年経過する患者さんもいます。
治療の種類と効果・副反応
急性白血病の治療は、抗がん剤を使った化学療法が一般的です。
抗がん剤は白血病細胞を倒す働きが強く、化学療法を受けた急性白血病の患者さんの約80%が、白血病細胞が減少または縮小する寛解状態に入ります。
しかし抗がん剤は正常な血液細胞にも影響を与えるため、免疫力の低下・吐き気・脱毛・口内炎などの副作用が発生する可能性があります。
このような抗がん剤の副作用を抑え、感染症を予防するために行われているのが、支持療法です。
それでも高齢の患者さんや臓器に障害のある患者さんは、感染症・合併症で命を落とすケースがあるため、抗がん剤の投与は慎重に行われます。
また、抗がん剤には胎児の奇形化・死産・流産などを引き起こすものがあります。
化学療法で症状が改善しなかった場合や、白血病が再発した場合に候補に挙がるのが、造血幹細胞移植療法です。急性白血病が寛解した患者さんの約50%が、造血幹細胞移植療法で治癒しています。
しかし造血幹細胞移植療法は患者さんの心身への負担や合併症のリスクが大きく、30~40%の患者さんは白血病が再発します。
白血病の治療法
この項目で解説するのは、日本の医療現場で行われている白血病の治療法です。慢性白血病の場合、症状が進行するまで治療を行わないケースもあります。
化学療法
白血病の基本的な治療法となるのが、抗がん剤を使用する化学療法です。
化学療法では、まず寛解導入療法で正常な血液細胞を回復させ、白血病細胞が5%以下の完全寛解と呼ばれる状態を目指します。
急性白血病の患者さんの約80%は、寛解導入療法によって寛解します。この状態のとき、体内に残っている白血病細胞は1000万~1億個です。
白血病の再発を防ぐには、体内の白血病細胞を0個にする必要があるため、寛解導入療法に続いて寛解後療法が行われます。
寛解後療法には、地固め療法・維持療法・造血幹細胞移植などがあります。
造血幹細胞移植
一度は寛解したものの回復の見通しが立ちにくい場合や、白血病が再発した場合に候補となる治療法が、造血幹細胞移植です。
この治療法では患者さんの体内に、ドナーから提供された健康な骨髄を取り入れます。造血幹細胞移植を行うには、患者さんとドナーの白血球の型が一致していなければなりません。
ヒト白血球型抗原と呼ばれるHLAの適合率は兄弟姉妹でも25%程度で、ごくまれに血縁関係のない他人とHLAが一致するケースがあります。
造血幹細胞移植は、患者さんの年齢が上がるにつれて、合併症が発生する可能性や重症化するリスクが上がります。そのために研究されているのが、患者さんへの負担が少ないミニ移植です。
放射線治療
放射線療法は、がん化した細胞を放射線で攻撃する治療法です。白血病の治療では、中枢神経に入りこんだ白血病細胞を退治するために、寛解後療法中に放射線治療が行われることがあります。
白血病が治る確率についてよくある質問
ここまで白血病の症状や生存率・治療法などを紹介しました。ここでは「白血病が治る確率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
白血病の症状について教えてください。
中路 幸之助(医師)
白血病の代表的な症状は、以下のとおりです。動悸
息切れ
目眩
発熱
全身の倦怠感
不正出血
大幅な体重の減少
大量の寝汗
腹部の張り
慢性白血病の患者さんの場合、慢性期に症状が出ないこともあります。
白血病は完治しますか?
中路 幸之助(医師)
医学の進歩により、白血病は完治する病気となりました。ですが再発する可能性も高いので、まずは症状の軽減や身体機能の回復を目指します。
編集部まとめ
白血病は血液のがんといわれる病気です。骨髄にある造血幹細胞が血液細胞になる過程でがん化すると、正常な血液を作る機能が失われます。
白血病の代表的な症状は、全身の倦怠感・動悸・息切れ・目眩などです。慢性白血病の場合は、症状が現れないこともあります。
白血病の生存率には患者さんの年齢が関係しており、若い患者さんは生存率が高く、年齢が上がると生存率が下がる傾向にあります。
白血病の治療は、抗がん剤を投与して白血病細胞を減少させる化学療法が一般的です。
造血幹細胞移植は、化学療法の成果が思わしくなかった患者さんや、白血病が再発した患者さんに行われます。
白血病と関連する病気
「白血病」に関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
播種性血管内凝固症候群
肺炎敗血症播種性血管内凝固症候群は、血が固まりやすくなって血栓ができたり、血が止まりにくくなる病気です。白血病の治療中は、免疫機能が低下するため、肺炎や敗血症を招くこともあります。
白血病と関連する症状
「白血病」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
倦怠感動悸息切れ
目眩
不正出血内出血
青あざ
白血病による血液細胞の減少は、血液に関するさまざまな異常を引き起こします。気になる症状が現れた場合は、医療機関で受診してください。
参考文献
急性骨髄性白血病(国立がん研究センター)
白血球(国立がん研究センター)
白血病の分類(国立がん研究センター)