最新テレビ、どれ選ぶ? 2024年トレンドと各社の違いまとめた
シャープの4Kテレビ「4T-C65GN1」。モデルは、シャープ公式YouTubeチャンネルを担当している池田愛恵理さん
テレビメーカー各社から、2024年発表&発売の「4Kテレビ」がほぼ出揃った。7月現在までに、国内外の主要8ブランド(ソニー、パナソニック、シャープ、レグザ、ハイセンス、TCL、LG、FUNAI)から、全39シリーズ・121機種もの4Kテレビが発表され、家電量販店やECサイトなどで順次発売される見込みだ。
2024年のテレビは、どこがどう変わったのか。各社の4Kテレビを中心に、最新のトレンドと違いをまとめてみた。
※ここでいう4Kテレビは、4Kチューナー内蔵の4K解像度パネルを持つテレビのこと。4Kチューナーを搭載しない「4K対応テレビ」や、「チューナーレステレビ」は含まない
記事目次 ・1.メーカーで分かれた“推し”。ソニーはミニLED液晶ラブに!?
・2.ミニLEDで液晶大進化。'24年はもっと明るくお手頃に
・3.レグザも「MLA」投入。MLA vs QD-OLEDの頂上決戦へ
・4.機種数絞って大型化。80以上の“超大型”もぞくぞく
・5.ビエラがFire TVを採用! テレビOSはAmazon×Google×独自の三つ巴に
・6.動画配信サービスダイレクトボタン事情2024
・7.テレビは最新ゲームにも最適。2024年は144Hz対応がトレンドに
・8.新8Kテレビは2024年ついにゼロへ。フルHDは絶滅危惧種に
・9.アンバサダーに異変。全社メンズ化(20代後半)問題
・10.ブラビアの価格が爆上がり!? 気になる価格と消費電力
1.メーカーで分かれた“推し”。ソニーはミニLED液晶ラブに!?
テレビメーカー各社が投入するフラッグシップは、その年の最高品質、最新機能を搭載する看板モデルだ。ブランドを代表する顔でもあり、ここ数年、各社は液晶そして有機EL双方の技術を磨いてきた。しかし2024年の4Kテレビは、その看板モデルでメーカーの“推し”が分かれることになった。
大きく変わったのが、ソニー・ブラビアだ。2024年はフラッグシップを液晶1本(BRAVIA 9「XR90」シリーズ)に絞ってきた。いちおう「A95Lシリーズ」というハイグレードな有機ELモデルも発売するが、実はこれ、1年前に欧米ですでに発売済みの製品を日本仕様にしたものだ。
同社は昨年の時点で2022年モデルの有機EL「A95Kシリーズ」を継続販売するなど、少し前から有機EL離れな雰囲気があったが、今年は「有機ELを超えるポテンシャルを持つデバイスとして、ミニLEDの更なる立ち上げを目指す」と、“液晶推し”の姿勢を明確に表した。
なお、ソニー以外では、ハイセンス(2021年を最後に有機ELの新製品無し)、FUNAI(同)、TCL(有機EL未発売)も“液晶推し”のブランドだ。
ソニーのBRAVIA 9こと、4KミニLED液晶「K-65XR90」
それとは対照に“有機EL”を推しているのが、パナソニックとLG。
パナソニック・ビエラは昨年に続き、マイクロレンズアレイ(MLA)を搭載した高輝度OLED「Z95Aシリーズ」を投入。「W95シリーズ」というミニLED液晶も用意するが、65型の1サイズのみと、大胆に液晶のラインナップを絞り込んだ。
パナソニックの4K有機ELビエラ「TV-65Z95A」
LGは今年、業界最多となる15機種もの有機ELモデルを投入。液晶も14機種を用意するが、75型以上の超大型、もしくはコストパフォーマンスを優先させたスタンダード・エントリーシリーズに限定している。
現状、液晶・有機ELの二刀流(?)を続けるのが、TVS REGZA(以下レグザ)とシャープだ。
レグザは、ARコート&広視野角ワイドアングルシート搭載のミニLED液晶「Z970Nシリーズ」と同社初のMLA-OLED「X9900Nシリーズ」を、そしてシャープ・アクオスは第三世代のミニLED液晶「GP1シリーズ」と国内唯一の最新QD-OLEDパネルを搭載した「GS1シリーズ」を発表。両社とも、液晶・有機EL2つのフラッグシップを引き続き投入する。
レグザは、ミニLED「Z970Nシリーズ」とMLA-OLED「X9900Nシリーズ」を発売
シャープも液晶・有機EL2つのフラッグシップを発売する
2.ミニLEDで液晶大進化。'24年はもっと明るくお手頃に
メーカーで“推し”が分かれた背景には、ここ数年の液晶テレビの画質向上が関係している。
液晶の画質向上を牽引したのが、2021~22年頃から各社が採用し始めた、ミニLEDバックライト×量子ドット技術搭載の、いわゆる“ミニLED液晶テレビ”だ。エリア分割駆動とLEDの明暗制御で高いコントラストと明るさ、そして量子ドット変換による鮮やかなカラーを実現。自発光ならではの高いコントラストで“高画質テレビは有機EL一択”という状況に、風穴を開けた。
パナソニックの4KミニLED液晶テレビ「TV-65W95A」
レグザの4KミニLED液晶テレビ「Z970シリーズ」
第二世代、第三世代とノウハウを蓄積することで、各メーカーのミニLEDモデルはコントラスト・輝度性能が着実に進化。フラッグシップはバックライトを緻密かつ高精度に制御することで、液晶テレビの弱点だった“黒浮き”感を改善。画質に強い関心がなければ、ほとんどの方が、最新のミニLED液晶(フラッグシップ限定)も有機ELも「パッと見区別がつかない」「どっちもキレイ」という感想を持つはずだ。
メーカーで温度差はあるものの、ミニLED搭載機種は年々増加しており、2024年は13シリーズ・36機種まで拡大。2024年発売の4K液晶テレビのうち、実に4割超のモデルが“ミニLED化”した。
ハイセンスの4KミニLED液晶テレビ「U8Nシリーズ」
シャープの4KミニLED液晶テレビ「GP1シリーズ」
LGの4KミニLED液晶テレビ「QNED90Tシリーズ」
サイズも、最大は115型(TCL)、最小は43型(シャープ)までとバラエティが拡がり、価格の面でも、ミニLEDの50型が16万円(TCL)、55型でも17万円(ハイセンス)から購入可能になるなど、2024年はミニLEDモデルが一段と選びやすくなった。
2024年発表・発売の4KミニLED液晶テレビ ・ソニー XR90/XR70シリーズ
・パナソニック W95Aシリーズ
・シャープ GP1/GP2シリーズ
・レグザ Z970N/Z870Nシリーズ
・ハイセンス U9N/U8Nシリーズ
・LG QNED90Tシリーズ
・TCL X955/C855/C755シリーズ
3.レグザも「MLA」投入。MLA vs QD-OLEDの頂上決戦へ
液晶のミニLED×量子ドット技術に負けじと、有機ELテレビも画質改善が進んでいる。特に近年、伸長しているのがパネルの輝度性能だ。
LGディスプレイは、発光材料に重水素を用いた「OLED EX」(2022)、微細な凸レンズで光の取り出し効率を高めた「MLA-OLED」(2023)を立て続けに開発。また、ライバルであるサムスンディスプレイも、青色発光層と量子ドットを組み合わせた「QD-OLED」(2022)でテレビパネル市場に参戦した。
液晶と比べて「暗い」と言われてきた有機ELだが、LGとサムスンの競争のおかげで、最新パネルはピーク輝度3,000nitを超えるまでに飛躍。量販店等で新旧パネルを横並びにすれば、誰の目にもその違いが一目瞭然なほど最新パネルは明るい。
LGは、最新パネルと豊富なサイズ展開で、エントリーからハイエンドまで、業界随一の3シリーズ・15機種でOLED市場を牽引。しかも2024年は、エントリーの「B4」シリーズまでも、48GbpsのHDMI2.1×4入力を実現するという気合いの入れようだ(LG以外は、フラッグシップ機でもHDMI2.1×2入力まで)。
LGの4K有機ELテレビ「G4シリーズ」
LGの4K有機ELテレビ「C4シリーズ」
LGの4K有機ELテレビ「B4シリーズ」
パナソニックは、最新のMLA-OLEDパネルを「Z95Aシリーズ」に搭載。放熱プレートと放熱シートを組み合わせた「デュアルメタルヒートレス構造」や発光制御、製造ラインでのパネル測定・調整などといった独自のチューンナップで、プロクオリティの画質性能を追求している。
レグザは、2024年モデルの「X9900Nシリーズ」で初のMLA-OLEDを採用。パナソニックよりも1枚多い、3層のアルミプレートによる高冷却システムと、定評あるAIエンジン「ZRα」でレグザ史上最高輝度のOLEDモデルに仕上げた。
レグザの4K有機ELテレビ「X9900Nシリーズ」
シャープとソニーは、ハイエンドラインにQD-OLEDパネルを採用。
シャープのQD-OLEDは、今回で第三世代目。最新「GS1シリーズ」ではパネル制御回路を改め、'23年モデル(FS1)から約15%UPの輝度を実現。さらに、炭素製シートとアルミ製プレートの2層式放熱構造「クールダウンシードII」でパネル性能を最大化した。
シャープの4K有機ELテレビ「GS1シリーズ」
ソニー「A95Lシリーズ」は、'22年モデル(A95K)比で倍のピーク輝度を実現。画面自体を振動させて音を出すことで、画音一体を狙った独自のサウンドシステムも継承している。
ソニーの4K有機ELテレビ「A95Lシリーズ」
2024年発表・発売の4K有機ELテレビ ・ソニー A95L(QD)/XR80シリーズ
・パナソニック Z95A(MLA)/Z90A/Z85Aシリーズ
・シャープ GS1(QD)/GQ1/GQ2シリーズ
・レグザ X9900N(MLA)/X8900Nシリーズ
・LG G4(MLA)/C4/B4シリーズ
4.機種数絞って大型化。80以上の“超大型”もぞくぞく
2024年は、液晶・有機ELテレビともに、60型以上が全体の半分を占めるなど“テレビの大型化”が一段と進行。多くのブランドが機種数を絞りつつ、50・60・70型といった、より大きなサイズのモデルの開発に注力している。
4K液晶テレビのサイズ構成比(2024年発表・発売の83機種)
4K有機ELテレビのサイズ構成比(2024年発表・発売の38機種)
年度別の機種数・サイズの内訳。ソニーの場合
パナソニックの場合
シャープの場合(8Kテレビ含む)
レグザの場合
LGの場合(8Kテレビ含む)
80型以上の“超大型”を積極的に展開しているのが、海外ブランド。2024年発表・発売の超大型15機種のうち、ハイセンス、TCL、LGが13機種を独占。ハイセンスは100型で約90万円(U7N)、TCLは98型で60万円(C655)、LGは86型で約36万円と、手頃な価格も強みになっている。
なお、2022年~2023年にかけて発売されていた4K液晶の「42型」「49型」「58型」「60型」「70型」は、今年発売されていない。
ハイセンスの100型液晶「100U7N」。とにかくデカい
4KテレビのサイズランキングTOP10 ・1位(115型) TCL「115X955MAX」 (液晶・500万円)
・2位(100型) ハイセンス「100U7N」 (液晶・89.8万円)
・2位(100型) レグザ「100Z970M」 (液晶・137.5万円) ※2023年モデル
・4位(98型) TCL「98X955」 (液晶・160万円)
・4位(98型) TCL「98C655」 (液晶・60万円)
・6位(97型) LG「OLED97G4PJA」 (有機EL・418万円)
・6位(97型) LG「OLED97M3PJA」 (有機EL・429万円) ※2023年モデル
・8位(86型) LG「86QNED90TJA」 (液晶・71.5万円)
・8位(86型) LG「86QNED85TJA」 (液晶・58.3万円)
・8位(86型) LG「86UT8000PJB」 (液晶・36.3万円)
5.ビエラがFire TVを採用! テレビOSはAmazon×Google×独自の三つ巴に
パナソニックはAmazonと協業し、ビエラに「Fire TV」を搭載した
パナソニック・ビエラの「Fire TV」搭載も、2024年テレビのトピックの1つ。
これまでテレビを動かすための基本ソフトは、ソニー・シャープ・TCLなどが採用する「Google TV」系か、その他の独自OS系に二分されていて、パナソニックは後者だった。後者は自分たちで直接システムのコアにアクセスできるため、視聴や録画に関係する機能を加えたり、メニューの更新などを比較的容易に行ないやすい。ただその一方、次々に生まれる動画や音楽、ゲームといったサービスのアプリを迅速に対応させるのが難しかった。
そこでパナソニックは、人気メディアプレーヤー「Fire TV Stick」「Fire TV Cube」を展開するAmazonと協業し、ビエラ用にカスタマイズしたFire TVを搭載。Fire TVが持つメニューや操作性、豊富なアプリを取り込みつつ、従来ビエラが持っていた独自機能を継承。さらに、メイン画面に現在放送中の番組を表示させるなど、メディアプレーヤーにはない、テレビならではのFire TV機能も盛り込んだ。
“Fire TVビエラ”のメニュー画面
Fire TV搭載で、様々なアプリに対応した
7月現在、「4K衛星放送録画」「お部屋ジャンプリンク」「過去未来番組表(ディーガ連携)」「Panasonic Media Access」「LAN録画」は、年内アップデート対応とアナウンスされているが、OSが変わっても従来機能をしっかりサポートしてくれるのは嬉しいところ。
ちなみに、この新しい“Fire TVビエラ”。Amazonアカウントが無くても、セットアップやテレビ放送の視聴はいちおう可能だ(Google TVの“ベーシックテレビ”モードに相当)。ただ、Amazonアカウント無しではネットワーク設定ができない仕組みになっている。ネットワーク設定をしなければ、アプリの利用はもちろん、お部屋ジャンプリンク、スマホ宅外視聴等の機能も使えないままとなるため、やはりAmazonアカウント前提のテレビ、と考えた方がよさそうだ。
なおパナソニックのFire TVの採用は、国内ブランドではFUNAIに続いて2社目(FUNAIは2022年から採用)。今後も、Fire TV、Google TV、そして独自系OSによる機能競争が激しくなりそうだ。
ちなみに、LGが採用する「webOS」は今年“24”(正確にはwebOS 24)にアップデート。メイン画面のデザイン変更やユーザープロファイル拡張のほか、チャットボットによる設定・操作ガイドが新たに追加。Chromecastも初めてサポートした。
webOS 24から追加された「チャットボット」機能
チャットボットで設定・操作をガイドしてくれる
6.動画配信サービスダイレクトボタン事情2024
パナソニックが独自OSからFire TVに切り替えたように、最近テレビで重視されているのが「動画配信サービス」への対応だ。
コロナ禍での巣ごもりも影響し、テレビを使ったネット動画視聴の利用が急増。テレビメーカー各社は、動画配信サービスの対応を拡大させると当時に、これまで放送などに注力してきた高画質機能を動画配信サービスにも適用するようになった(2024年テレビは各社でノイズリダクション処理が強化されている)。
そして、もっと少ない工数で手軽に素早く動画配信サービスが始められるよう、リモコンに“動画配信サービスダイレクトボタン”が用意されるようになった。ダイレクトボタンがリモコンにあれば、放送のチャンネルを変えるような感覚で、今観たいサービスをボタン一押しで起ち上げることができる。
上のグラフは、直近4年間のダイレクトボタン数の推移を表したもの。4年前は5個前後だったダイレクトボタン数は、今年レグザとハイセンスが12個の大台(?)に到達。ダイレクトボタンはいよいよ、テレビチャンネルのボタン(12個)と同じ数になった。
テレビチャンネルのボタン(12個)と同じ数になった、2024年版レグザリモコン
上の表はどの動画配信サービスがボタンになっているのかを示したもの。現在、8ブランド全てのリモコンに採用されているのは、「Netflix」「Prime Video」「U-NEXT」ボタン。
「hulu」ボタンはFUNAI以外、「TVer」ボタンはソニー以外の7ブランドで採用。「ABEMA」「YouTube」ボタンはLG・FUNAI以外、「Disney+」ボタンはTCL・FUNAI以外の6ブランドに入っている。
2023年からは、レグザ・LGに「NHKプラス」、そしてハイセンスに「DAZN」ボタンが参入。dTVから生まれ変わった「Lemino」も、2024年のハイセンスモデルに初搭載されている。
DAZN、Leminoボタンのある2024年版ハイセンスリモコン
徐々に勢力を拡大しているのが、フジテレビ系の動画配信サービス「FOD」だ。2022年のTCL採用を皮切りに、昨年はシャープ、そして今年はソニー、レグザ、ハイセンスのリモコンにもボタン搭載され、躍進を続けている印象だ。
2024年版ソニーリモコン(写真左)には「FOD」ボタンが搭載された
7.テレビは最新ゲームにも最適。2024年は144Hz対応がトレンドに
テレビのゲーミング対応も、近年のトレンドの1つだ。
4K120HzやALLM(自動的に低遅延モードに切り替わる機能)、VRR(フレームレートが変動するゲーム信号に応じて滑らかに表示する機能)対応は、もう当たり前。最近は、敵を発見しやすくする映像モードや、標的を狙いやすくするクロスヘア表示、視線の移動を狭めるための画面サイズ調整といったゲーム専用メニューも定番になりつつある。
そして2024年は、各社が「144Hz入力」をサポート。高性能なPC・グラフィックボードから出力したハイフレームレートなゲーム映像を、そのまま表示できるようになった。
LGのゲーム専用メニュー
対応テレビを144Hzで表示させるには、ゲーム信号をVRR適用させた場合のみ。通常の放送番組や映画、ネット動画などが144コマで増えて滑らかに表示されるわけではないのでご注意を。なお、今期のソニーモデルは従来通り4K/120Hzまでの対応となっている。
144Hz入力に対応した2024年製4Kテレビ 液晶テレビ
・パナソニック W95A/W90Aシリーズ
・シャープ GP1シリーズ、GN1シリーズ(75型のみ)
・レグザ Z970N/Z670Nシリーズ、Z870Nシリーズ(55型除く)
・ハイセンス U9N/U7Nシリーズ、U8Nシリーズ(55型除く)
・TCL X955/C855/C755シリーズ、C655シリーズ(50/43型除く)
有機ELテレビ
・パナソニック Z95A/Z90Aシリーズ、Z85Aシリーズ(48型除く)
・シャープ GS1/GQ1シリーズ
・レグザ X9900Nシリーズ
・LG G4シリーズ(97型除く)、C4シリーズ
8.新8Kテレビは2024年ついにゼロへ。フルHDは絶滅危惧種に
最近の8Kテレビ事情にも触れておこう。
世界初の8K放送チューナー搭載8K液晶テレビ「AX1」(シャープ)の登場以降、毎年何かしらの8Kテレビが発売されてきたのだが、ついに2024年は、どこのテレビメーカーからも新しい8Kテレビが発売されない状況となってしまった。
2023年6月に発売した、LGの8K有機ELテレビ「OLED88Z3PJA」は2024年も継続販売する
2020年発売の、ソニー8Kブラビア「KJ-85Z9H」。ソニーストアでは現在、110万円で販売されている
価格やサイズの問題はあるにせよ(海外の場合はEUの省エネ規制も)、何より、消費者の購入意欲を刺激するような8Kコンテンツが圧倒的に不足している事が大きい。
2018年に鳴り物入りで始まった肝心のBS8K放送も、当初は8Kスキャンした映画「2001年宇宙の旅」やドラマ、スポーツ、音楽ライブ、ドキュメンタリーなど、非常に見ごたえのあるラインナップを展開していたが、近年はオリジナルコンテンツが激減している。
日本時間の27日から始まったパリ五輪でさえ、8K放送されるのは開会式(閉会式は8K放送無し)、東京五輪(2021)から正式種目になった「3×3バスケ」「スケートボード」、そしてパリ五輪唯一の新種目「ブレイキン」と、ごく限られた競技だけ。
現在8Kは、コンテンツも、新しい8Kテレビもチューナーもレコーダーもない、という悪循環に陥っている。このまま日本の8Kは萎んでしまうのだろうか……。
発売中の8Kテレビ ※2024年7月現在 ・ソニー 85型液晶「KJ-85Z9H」(2020年モデル、200万円)
・シャープ 85型液晶「8T-C85DX1」(2021年モデル、176万円)
※DX1の75/65型は在庫僅少
・シャープ 60型液晶「8T-C60DW1」(2021年モデル、38.5万円)
※DW1の70型は在庫僅少
・LG 88型有機EL「OLED88Z3PJA」(2023年モデル、396万円)
本記事を読んでいる方の中には、もしかしたら「4Kも8Kも見ない。ハイビジョン(HD)テレビで十分」という方もいるかもしれない。
ただ残念ながら、いまやHDテレビは、レグザ、シャープ、ハイセンス、LG、TCL、FUNAIなどから数シリーズが出ているだけ。パナソニックはポータブルテレビ(プライベートビエラ)で小型のハイビジョンモデルを残しているものの、ソニーはハイビジョンテレビからすでに撤退している状況だ。
しかも、HDテレビの中にはパネルがフルHDに満たない、1,366×768解像度の製品もまぎれている。もしHDテレビを検討しているなら、1,920×1,080解像度を持つモデルから選ぶことをオススメする。
レグザの40型フルHDテレビ「40V35N」
ハイセンスの32型フルHDテレビ「32A4N」
発売中のフルHDテレビ ・レグザ 「40V35N」
・ハイセンス 「40A4N」「32A4N」
・LG 「32LX8000PJA」
・TCL 「40S5400」「32S5400」(※2023年モデル)
9.アンバサダーに異変。全社メンズ化(20代後半)問題
テレビ製品のCMキャラクター/アンバサダーと言えば、シャープ・アクオスの吉永小百合さんを筆頭に、日立・Woooの黒木瞳さん、パナソニック・ビエラの小雪さんなど、女優の起用が多かったが、近年は、テレビを購入したことがない“若年層”に影響力を持つ男性、“推し活”を刺激する俳優を起用する動きが目立っている。
具体的には、シャープ・アクオスの志尊淳や、TCLの堂安律、ハイセンスの横浜流星、レグザの目黒蓮で、キャラクターの起用を止めてしまったソニー・パナソニックを除く主要ブランドが、20代後半の男性に切り替わった。
最近は20代後半のイケメンが人気
CMキャラクター/アンバサダー ※2024年7月現在 ・志尊淳(1995年3月5日生) 2022年からAQUOS CMキャラクターに
・堂安律(1998年6月16日生) 2023年からTCLアンバサダーに
・横浜流星(1996年9月16日生) 2024年からハイセンスアンバサダーに
・目黒蓮(1997年2月16日生) 2024年からレグザアンバサダーに
メーカー担当者によると、若手俳優のCMの反響は大きく「これまでなかなかアプローチできなかった若い女性層にも、ブランドの認知を高めることが出来ている」とのこと。また、売り場からカタログが減る量も増えたという(実際都内には、カタログの持ち帰りは「1冊まで」と明記している量販店も存在する)。
とはいえ。カタログの表紙がイケメンだらけになってしまうのは、女優陣のテレビカタログを収集してきたオッサン(筆者)にとっては、寂しさを感じるところだ。
あの頃はよかった
10.ブラビアの価格が爆上がり!? 気になる価格と消費電力
円安に物価高と、暗いニュースが続く昨今だが、今年の4Kテレビの価格はどうなっているのか。2024年発表・発売の4Kテレビの中から、4KミニLED液晶テレビ(36機種)と、4K有機ELテレビ(38機種)の価格を調べてみた。
4KミニLED液晶テレビ
最上段の数字は「インチサイズ」、マス目の中の数字は店頭予想価格(万円)
4K有機ELテレビ
最上段の数字は「インチサイズ」、マス目の中の数字は店頭予想価格(万円)
これを見ると……
・国内ブランドは割高、海外ブランドは割安
・(生産枚数の多い)55型、65型がコストパフォーマンスがよい
・(生産枚数の少ない)有機ELの42型、48型はあまり価格が変わらない
・同じ金額を払うなら、有機ELよりも液晶を選んだ方がより大きなサイズが買える
……という、例年の傾向に大きな変化はなさそうだ。
次に、最上位クラスに絞って、液晶テレビと有機ELテレビの価格推移を調べてみた。
4K液晶テレビの価格推移
※対象としたのは以下の65型。ソニー:X9500E、Z9F、X9500G、X9500H、X95J、X95K、X95L、XR90。パナソニック:EX850、FX800、GX850、HX900、JX950、LX950、MX950、W95A。レグザ:Z810、Z720、Z730X、Z740X、Z740XS、Z875L、Z970M、Z970N。シャープ:DN1、DP1、EP1、GP1。ハイセンス:U9H、UX、U9N。TCL:C835、C845、C855
4K有機ELテレビの価格推移
※対象としたのは以下の65型。ソニー:A1、A9F、A9G、A90J、A95K、A95L。パナソニック:EZ1000、FZ1000、GZ2000、HZ2000、JZ2000、LZ2000、MZ2500、Z95A。レグザ:X910、X920、X930、X9400、X9400S、X9900L、X9900M、X9900N。シャープ:CQ1、DS1、ES1、FS1、GS1。LG:EP7、G8P、E9P、GX、G1、G2、G3、G4
最上位モデルにおいては、液晶でミニLED化(2021年~)、有機ELで新技術の高輝度パネル化(2022年~)が進んだ影響もあって、コロナ禍の2020年と比べると価格は上昇気味ではあるが、何とか持ちこたえている感はある。
ただ、ソニーに限っては今年、価格が大幅に上昇してしまったため、購入を検討していたブラビアファンにとっては悩ましい問題だろう。
最後に、最上位クラスの年間消費電力(目標年度2026年度基準、一般家庭の平均視聴5.1時間計算)をまとめたのが以下の表だ。以下の数字に、契約している電力供給会社の電気料金単価(1kWh)をかければ、1年間にかかる電気代を求めることができる。最上位モデルにおいては現状、有機ELよりもミニLED液晶の方が省エネ性能が高い結果となっている。
4K液晶テレビの年間消費電力
※対象としたのは以下の65型。ソニー:X95K、X95L、XR90。パナソニック:LX950、MX950、W95A。レグザ:Z875L、Z970M、Z970N。シャープ:EP1、GP1。ハイセンス:U9H、UX、U9N。TCL:C835、C845、C855
4K有機ELテレビの年間消費電力
※対象としたのは以下の65型。ソニー:A95K、A95L。パナソニック:LZ2000、MZ2500、Z95A。レグザ:X9900L、X9900M、X9900N。シャープ:ES1、FS1、GS1。LG:G2、G3、G4
以上、各社の4Kテレビを中心に、最新のトレンドと違いをまとめてみた。購入時の参考になれば幸いだ。