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基本メンテナンスで30万kmは回るエンジン

(1)では、R230型のメルセデス・ベンツSLは複雑だとご紹介したが、300と350が最もシンプル。取引価格も比較的お手頃といえ、人気は高い。ただし、V型6気筒エンジンはV型8気筒より不調をきたしやすい傾向がある。

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その原因が、バランスシャフトの摩耗。安価には交換できない部品となる。また、プラスチック製の可変吸気マニホールド・レバーも、経年劣化で壊れがちなようだ。


メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

V8エンジンはドラマチックに回転し、V6以上にエネルギッシュな走りへ惹き込まれるはず。ユーチューブを検索してみると、熱心なオーナーが部品交換する動画が数多くあがっている。不具合が起きた時の参考になるはず。

エンジンルーム内へミチミチに収まるV型12気筒ユニットは、複雑でメンテナンスが難しい。エンジンを降ろさないと作業できない内容も多いが、そのかわりウルトラ・スムーズ。洗練され、悠々と高速移動できるのが大きな魅力だろう。

SL 500では、249km/hでカットオフが入るスピードリミッターが標準装備。追加料金でリミッターカットは可能だった。

どのエンジンでも基本的には堅牢で、基本的なメンテナンスで30万km程度は問題なく回り続ける。SL 55のV8ユニットは、60万km以上耐えるとか。ただし、SL 63 AMGのV8ユニットでは、ヘッドボルトの不具合へ注意が必要だ。

英国では専門ショップが心強い存在に

フォールディング・ハードトップやアクティブ・ボディコントロール(ABC)・サスペンション・ストラット、電気系統などの修理は、英国では専門ショップが心強い存在になっている。正規ディーラーより、安価に請けてくれるのもうれしい。

走行中にハミングのようなノイズが聞こえる場合は、ABCアキュムレーターの故障を疑う。流通する交換用部品は、高耐久化された2006年式以降の仕様で、レトロフィットできる。究極の乗り心地を復活させることも、不可能ではない。


メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

クルーズコントロールや「コマンド」インフォテインメント・システム、事故通報システム、タイヤ空気圧センサーといった装備も実装している。シフトレバーにスタートボタンが付いた、キーレスゴー・システムは2006年から標準になった。

エンジンルーム側のバッテリーは、エンジンの始動専用。荷室に、ECUや車載装備用として別のバッテリーが載っている。この状態維持が重要といえる。

ちなみに、チューニングガレージのブラバスが手を加えたR230型もあった。SL 350から600まで激しくパワーアップされたが、6.3L V8ユニットは最高出力が750馬力以上に達した。最高速度は、350km/hを超えたという。

購入時に気をつけたいポイント

電気系統

車内の湿気や長期間の放置は、電気系統の故障を招く原因に。ECUや車載機能を受け持つ、2基目のバッテリーが荷室に積まれており、ここが濡れると各種コントロールユニットやモジュール、集中ドアロック用バキュームポンプなどの不調へつながる。

イグニッション・スイッチやバッテリーの不調が、多数の警告を誘発することも。コンピュータ診断で、エラーコードの有無を確認しておきたい。

ヴァリオルーフ


メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

滑らかに開閉できるか、荷室側へ水漏れしていないかを確かめる。折りたたんだ状態で、荷物がどのくらい載せられるのかも確認した方が良いだろう。

経年劣化や長期放置で不調になりがち。油圧ポンプやバルブ、マイクロスイッチの故障、ストラットからの液漏れなどが主な内容のようだ。英国には専門ショップがあり、さほど大金をかけずに修理できる。

サスペンション

オイルポンプで油圧を制御する、ABCサスペンションは弱点の1つ。バルブのOリングやポンプ、アキュムレーターなども不調の原因。一般的なコイルオーバー・ダンパーへの交換が一般的だが、専門ショップに持ち込めばリビルドはできなくない。

エンジン

基本的に堅牢だが、ウォーターポンプの交換履歴は確かめたい。ラジエタークーラントの漏れ、エンジンオイルとクーラントの混合がないかも調べたい。

エンジンの振動が大きい場合は、エンジンマウントの交換が必要。V8の場合は簡単ながら、V12の場合はエンジンを下ろす必要がある。点火コイル、補機ベルト、テンショナープーリーの状態も要チェック。

トランスミッション

オートメーテッド・マニュアルが設定されたのは、SL 350のみ。それ以外のR230型では、5速か7速のオートマティックが載った。シフトパドルが備わらない仕様もある。オートマティック・フルードが黒ずんでいないか、滑らかに変速されるか確かめる。

メルセデス・ベンツSL(R230型)のまとめ

ハンサムで、超洗練された走りを楽しめる、R230型のSL。調子が良い期間の充足感は間違いないが、故障すると恐ろしい請求が待っている。排気量が大きいほどメンテナンスは難しく、費用も高額になる。

慎重に車両を選び、丁寧な整備を続け、専門ガレージのサポートを頼りたい。そうすれば、素晴らしい時間をSLで享受できるはず。

良いトコロ


メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

当時最も先進的といえたグランドツアラー。サーキットから高速道路まで、卓越した性能を堪能できる。車内は上質で、1日中過ごしても不満は出ないだろう。

良くないトコロ

高い洗練性を保つには、コストが必要になる。複雑なぶん、不具合の数も増えがち。極端に走行距離が短い例は、過走行の例と同じくらい不調へ陥りやすい。

メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)のスペック

英国価格:6万2885〜14万7960ポンド(2006年時)
生産数:16万9433台
全長:4535-4589mm
全幅:1960mm
全高:1298-1310mm
最高速度:249-337km/h
0-97km/h加速:3.9-7.2秒
燃費:5.3-8.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:1755- 2075kg
パワートレイン:V型6気筒3724cc 自然吸気OHC/V型8気筒4996-5439cc 自然吸気OHC/V型12気筒5513-5980cc ツインターボOHC/V型6気筒2996-3498cc 自然吸気DOHC/V型8気筒4996-6208cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:234ps/6000rpm-670ps/5400rpm
最大トルク:35.6kg-m/3000rpm-101.7kg-m/2200rpm
ギアボックス:5速・7速オートマティック/6速セミ・オートマティック(後輪駆動)