クルックス容疑者は犯行当時、銃や爆発物を紹介するYouTubeチャンネルのTシャツを着ていたとされる(写真・時事通信)

 2024年7月14日、アメリカのトランプ前大統領が選挙集会の演説中に銃撃を受け、右耳を負傷した暗殺未遂事件の衝撃がいまだおさまらない。銃撃直後、流血しながら右拳を高く突き上げ、「Fight、Fight!」と叫ぶトランプ氏のドラマチックなガッツポーズ姿は、驚きとともに世界に拡散。その写真をデザインしたTシャツが即座に作られるなど、大反響を呼んでいる。

 事件発生から1夜が明けて、容疑者の人となりが徐々にわかってきた。

「銃撃したと見られるのは、事件が起こったペンシルべニア在住で介護施設に勤務していたトーマス・クルックス容疑者、20歳の若者です。犯罪歴はなく、共和党員の有権者登録はあるが民主党系の団体に寄付をしたことがあるともされ、詳しい動機は不明です。米メディアによると、高校時代は成績優秀で表彰されることもあった優等生だったようで、『射撃部』に関心を示していたという同級生の証言もあります。学校生活に馴染めなかったようで、友人は少なくいつも服装をばかにされるなど、ひどいいじめを受けていたといいます」(週刊誌記者)

 欧米のメディアは、クルックス容疑者がハイスクールに通っていた2020年度のイヤーブック(年度の終わりに発行されるアルバム)に掲載された顔写真を入手。眼鏡をかけて微笑む10代当時のクルックス容疑者が写っている。この時、彼が着ていたTシャツのデザインに注目するのはあるアメリカ人ジャーナリストだ。

「イヤーブックでクルックス容疑者が着ているTシャツの絵柄は、米国旗にジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、エイブラハム・リンカーン、セオドア・ルーズベルトの4人の元大統領の顔をあしらったもの。米国人なら誰もが知る、米サウスダコタ州のラシュモア山国立記念公園にある巨大彫刻をモチーフとしています。トランプ氏はかねがね、ここに自身の顔を加えたいという“野心”を持っていたらしく、実際に大統領だった当時、サウスダコタ州の現知事クリスティ・ノーム氏と会談した際に『私の夢はラシュモア山に自分の顔を刻むこと』と、真剣に語っていたそうです」(アメリカ人ジャーナリスト)

 実際、2019年にホワイトハウスが同知事に対して元大統領の4人の顔に新たな彫刻を加える手続きを打診したと、米ニューヨーク・タイムズ紙が報じており、トランプ氏の本気度が伺える。ジャーナリストが続ける。

「“自由の女神”と並ぶアメリカのシンボルであり、愛国主義者たちの聖地“マウント・ラシュモア”のモニュメントをデザインしたTシャツを着た若者が、白人ナショナリストの低賃金労働者から支持を集めるトランプ氏を狙撃した――。関連は定かではありませんが、何とも言えない皮肉を感じるのは私だけでしょうか」(同前)

 トーマス・クルックス容疑者はシークレットサービスにより射殺されており、死人に口なし状態。超大国を揺るがした大事件だけに、一刻も早い真相解明が待たれる。