優勝は大会初となるジャンルのシェフ!上沼恵美子やGACKTも感嘆した「CHEF-1グランプリ2024」決勝戦の裏側に迫る
若手料理人のナンバーワンを決める大会「CHEF-1グランプリ2024」の決勝戦が行われました。全国から506名のシェフがエントリーする中、その頂点に立ち、賞金1000万円を手にしたのはどのシェフなのか!? 現場で熱戦を目撃した編集えびすが、その裏側に迫ります。
「ザ・プレミアム・モルツ presents CHEF-1グランプリ2024」には、プロ・アマ、ジャンルを問わない年齢40歳未満のシェフが、全国各地から506名エントリー。3回戦で24名へと絞られ、各ジャンルのNo1合計6名が準決勝で激突。下記の4名が決勝に進みました。
・『枯朽』所属:吉岡翔太さん(東京都/フレンチ)
・『TTOAHISU』所属:山下泰史さん(福岡県/ジャンルレス・その他)
・『atelier HANADA by 森本』所属:花田洋平さん(大阪府/中国&アジア料理)
・『東山緒方』所属:木村僚佑さん(京都府/日本料理)
決勝の対決は昨年同様、トーナメント制を採用。統一テーマ「料理に革命を起こせ!」のもと、第1試合が「インスタントラーメンに革命を起こせ!」、第2試合が「肉じゃがに革命を起こせ!」というお題が決められています。
それぞれの試合を勝ち上がった2名が、最終決戦「ハンバーグに革命を起こせ!」に挑みます。
国民代表審査員に上沼恵美子が初参戦!
決勝の審査員を務めるのは5名。和食から『日本料理かんだ』店主・神田裕行さん、フレンチから『ガストロノミー“ジョエル・ロブション”』総料理長・関谷健一朗さん、ラーメンから『NAKAMURA』店主・中村栄利さんのシェフが3名。
そして、国民代表審査員として、神の舌を持つアーティスト・GACKTさんが2年連続で参戦。さらに、今年は新たに上沼恵美子さんが国民代表審査員に就任。よりパワーアップした審査員軍団が、シェフたちの料理をジャッジします。
戦いを見守るメンバーも豪華。MCの南海キャンディーズ・山里亮太さん、女優・松下奈緒さん。スペシャルサポータのM-1グランプリ2023優勝コンビ・令和ロマンのおふたり、そしてゲストに、今田耕司さん、森泉さん、井桁弘恵さんとこちらも錚々たる顔ぶれが揃いました。
第1試合、第2試合の組み合わせは抽選で決定。昨年と同じく、審査は誰が作ったかを明かさずに食べるブラインド方式で実施します。調理工程から隠されているため、先入観なしでの実食となりました。
審査員は各20点を持ち、100点満点。合計得点の高さを競います。
2年連続のテーマ・インスタントラーメンで高得点が!
第1試合は「インスタントラーメンに革命を起こせ!」。対決するのは、フレンチの吉岡翔太さん、ジャンルレス・その他の山下泰史さん。
ルールは、袋に入っている麺と粉末スープの使用が必須。どんな革命的なインスタントラーメンが生まれるのでしょうか。
「しじみラーメン」を選択した吉岡シェフが作るのは「ぬかヨーグルト ナッツ薫るラーメン」。福井県にある実家の民宿『よしおかや』のへしこ(サバのぬか漬け)から着想を得ていて、ラーメン、乳製品、発酵の相性の良さを活かしています。
「ぬか漬けのナッツっぽい香りを生かしたラーメンを作りたい」という思いをのせた一杯を審査員が食べると、司会席にまで香りがふわり。そして、麺をすする音が静寂を包み込みます。
開口一番「大好き!」と声を上げたのが、上沼さん。「コンビニで売ってたら1500円出します」と絶賛しました。
厳しい意見が多いGACKTさんも「正直すごくおいしいと思いました」と口を開き、「塩味、酸味、そこから交互に想像できない食感がやってくる」と、食感の楽しさにも触れました。
ラーメン界の革命児・中村シェフも「体にやさしく感じるところに革命を感じた」と評判も上々です。
対する山下シェフが手掛けるのが「はまぐりと羊のラーメン」。「稲庭中華そば」がベースのこちらは、本来トッピングなどで味変するのがラーメンですが、ただ食べ進めるだけで味変すると言います。
まずはスープだけでひと口。具材と麺、最後に仔羊の旨みが溶け出したスープを食べてください。と言う通りに食べ進めていく審査員。ここでもまた、いい香りが司会席にまで届きます。
採点の結果、神田シェフ、関谷シェフが20点満点をつけるなど高得点をマーク。見事昨年の雪辱を果たし、決勝進出を果たしました。
「文句のつけようがない」と神田シェフが話せば、関谷シェフは「はじめて満点をつけました」とコメント。「はまぐりとラムを使ってラーメンを作る発想が思いつかない。味の移り変わり、旨みと香りが丼の中で爆発していた。もうちょっと食べたいのに我慢しました」と大絶賛でした。
肉じゃが決戦は“関西ダービー”に
まずは第2試合の「肉じゃがに革命を起こせ!」。対決するのは、中国&アジア料理の花田洋平さんと日本料理の木村僚佑さんです。関西エリアのシェフ同士による“関西ダービー”となった決戦は、それぞれのジャンルの持ち味を如何なく発揮した対決となりました。
先攻の花田シェフが作ったのは「ラムじゃが」。ラム肉や角切りにしたじゃがいもを春巻きのように巻くお料理。調理の段階から、今田耕司さんから思わず「革命!」という声が飛び出すほど画期的な料理ができあがりました。
審査員が食べると、スタジオにパリパリっと心地いいサウンドが響き渡ります。途中で断面にソースにかけることで、本来の肉じゃがの味が楽しめるという2段構え。画期的です。
神田シェフは「肉とじゃがいもがひと口で融合している。すごく好き」と賛辞を送りました。「味はおいしいんですよ。食感もいいし」と口を開いたのが、国民代表審査員のGACKTさん。
「肉じゃがって肉とじゃがいものアンサンブルじゃないですか。肉だけが踊っていて、じゃがいもが後ろのステージにいるような『肉じゃが』で当てはめたときに違うなと。革命というテーマで合わせたときに、間違った方向の革命なんじゃないかな」と、肉とじゃがいものバランスにおいて、じゃがいもの少なさを指摘。評価が分かれました。
後攻の木村シェフは、「じゃが肉」で勝負。砂糖、みりんを使わず素材の甘みだけで仕上げることで、生産者の思いやそれぞれのじゃがいもの良さを引き出すという一品です。
男爵いもを桂剥きして揚げれば、七輪で風味づけをするなど、日本料理のシェフらしく“技”でも魅せてくれます。熟成メークインは裏ごししてマッシュポテトにし、じゃがいものピューレを作り、牛すじ肉は炭火で醤油焼き。一つひとつ手をかけ、調理の制限時間40分を目一杯使っていました。
中村シェフは、「じゃがいものペーストがありながら、食感を出すためにひと口サイズのじゃがいもも添えている。よく考えられている。牛すじ肉との相性を楽しむことができた」と高評価。
「じゃがいものファン」という上沼さんは大満足の表情で「じゃがいもとお肉のふたりのビッグショー」と述べ、同じく牛すじ肉との相性の良さに言及します。途中でかけるトマトあんについても、一部審査員では厳しめの評価が下されたものの「清涼感があって私はおいしかった」と評価しました。
結果は、木村シェフが勝利。日本料理としては大会初の決勝進出を果たし、ジャンルレス・その他の山下泰史さんとの対決となりました。
悲願の優勝なるか、ついに勝者決定のとき
最終決戦は「ハンバーグに革命を起こせ!」。
先攻の木村シェフが作ったのは「ほろたく」。日本の食文化における原点回帰の革命を掲げ、使用した食材はタルタルの起源・馬肉。そして、漬物文化をなくしてはいけないというメッセージからたくあんをチョイスしました。
七輪にかけた麩焼きせんべいのふたを外して、そのまま肉を食べ、その後せんべいと一緒に食べる。そして、海苔、葉わさびの醤油漬けなどで味変を楽しむと、様々な味が楽しめる構成で勝負をかけます。
なんと完食した上沼さんは「もうひとつほしい」と笑顔。「甘みの種類ってこんなにあるのか」と多彩な甘みに舌を巻いていました。
「料理としてはほぼ完璧」と話したのが神田シェフ。「馬肉と高菜、食感の素晴らしいバランス。どんどん引き込まれていきました。麩焼きの甘さに肉の旨みが絡む、わさびづけと醤油のコンビネーションもいい」とこちらも絶賛です。
後攻の山下シェフは、魚の王様・クエ、牛肉の王様・シャトーブリアン、そして野菜の王様・モロヘイヤを加える贅を集めた一品、その名も「王様」。「今まで試作したことないけど、何回かわからないくらい試作した」というコメントからも、優勝に賭ける思いを感じます。
調理中には、クエとシャトーブリアンが一緒にミンチになって出てくるなど、これまでに見たことがない衝撃の場面も見られるなど、インパクト抜群の料理ができあがりました。
「魚、肉のいいところを合体させた、極めてシンプルで完成度の高い料理。挽き肉の中に塊肉が入るだけで味がこんなに変わるんだとびっくりした」と関谷シェフが唸ります。
「食べ物の中でハンバーグは好きじゃない」と言う上沼さんは「先程のお料理とこれで、ハンバーグが好きになりました」とコメント。「馬肉を食べたことがなくて受け付けなかったのに思いっきり食べられた。ダメなものを好きになった。これだけでも私の中で革命が起きました。そのことに感動しています」と、先攻の木村シェフを含め、両者を称えた上沼さん。
さて、得点は如何に?
まず、先攻・木村シェフの点数が、神田:18、関谷:16、中村:15、GACKT:9、上沼:20の合計78点。
そして、後攻・山下シェフの点数が、神田:17、関谷:17、中村:18、GACKT:8、上沼:17の合計77点。
なんと、わずか1点差という僅差の結果、木村僚佑シェフが日本料理のシェフとして初の優勝を果たしました。そして、トロフィー、チャンピオンコックコート、副賞の「ザ・プレミアム・モルツ」1年分、そして賞金1000万円を獲得しました。
どこまでも謙虚 その姿勢に和食料理人の矜持を見た
優勝した感想を聞かれると「自分が一番信じられないです。『緒方』の木村なので、こういう結果に結びついてよかったです」と、自身が所属する『緒方』の看板を背負っての優勝に安堵の表情を浮かべました。
リモートで応援していた家族から奥様が「彼の料理への愛と根性、周りの人の愛が結びついたと思います」と話し、木村シェフには「周りの方に感謝して料理に向き合ってほしいです」とメッセージを贈りました。
最終決戦について感想を聞かれた審査員からは、神田シェフが「4年目でみなさんレベルが上がってる。(ずっと)山下さんを見てきて複雑な思いもありますが、日本料理のよさをいかして、キリで穴を開けるような思いで木村くんが勝ったように思う」と、過去3度の決勝進出、2度の準優勝を誇る山下シェフを気遣いつつ、木村シェフの勝因を話しました。
大会終了後、木村シェフは出演者と共に記者会見へ。今の思いを話してくれました。
506名の頂点に立ったことについて「ありがたいです。『うれしい』という気持ちより『ありがたい』の気持ちの方が大きいです」と述べた木村さん。
「自分は何者でもない。不器用でセンスがないと言われてやってきたので、ここまでやってこれたのは周りの人のおかげ。支えてくれた人がいて、後押ししてくれる人がいて、すべての人のおかげでここにいる。僕ひとりの力ではない」と、どこまでも謙虚の姿勢を崩さず。
奥様へのメッセージを聞かれると、「『よかったね』と言いたい。自分のことのように捉えてくれていた妻にありがとう(と感謝したい)。女将さんからは奥さんにプレゼントを買ってあげなさいと言われています(笑)」
会見前には、上沼さんからも「アンタは1銭も使ったらアカン。奥さん、お父さん、お母さんに差し上げて」と言われた木村シェフ。まずは奥様へのプレゼントを買うことが賞金の使い道になりそうです。
今後のことについて「緒方さんのやりたいこと、思い描いているイメージを、私たちが盛り上げて、その名に恥じないようにしたい」と話すなど、会見のほとんどで、あくまで『緒方』の木村であることを話していたのが印象的でした。
その姿を見て今田さんも思わず「こんな結果が出たらすぐに独立しますけど(笑)、如何に師匠がいい人なのか」と漏らすほど、終始殊勝な態度を見せた木村シェフ。
「日本料理を代表して来ているから、和食っていいなと思ってほしかった。特にこれから料理人を志す高校生や専門学生に日本料理人ってかっこいいなと思ってくれたら本望ですね」と語った木村シェフ。
その姿を見て和食の料理人を目指す若者が現れ、そして「CHEF-1グランプリ」で優勝を掴む。そんな未来を想像しました。
来年に向けて、ここからまた次なる戦いがはじまります。エントリー数が増え、より多くの革命的な料理が生まれることを楽しみにしています!
今回の決勝戦の模様は「TVer」や「ABAMA」で期間限定で配信中。見られなかった方はこちらをチェックしてみてください。
そして、2024年9月21日〜23日には番組初となるフードフェス「CHEF-1フェス2024〜餃子食祭〜」が、大阪・万博記念公園 お祭り広場で開催されます。詳しくは番組HPをご覧ください。
写真/(C)CHEF-1グランプリ2024 取材/編集部えびす