何カ月も乗ってないクルマで「いきなりエンジン始動」はクルマを傷める! 正しい始動の手順と長期間乗れない場合の対策とは
この記事をまとめると
■諸事情により長期間保管したクルマのエンジン再始動は気を使う場面だ
■数カ月程度であれば大きな問題にならないことがほとんどだといわれている
■1年以上放置してしまったようなクルマは保管やエンジン再始動時に注意すべき点も多い
長期間保管したクルマはすぐ乗っても平気?
久しく動かしていないクルマのエンジンを久しぶりにかけるとき、そのままかけて大丈夫なのか? これに関しては、備えるならばしっかりと準備してからかけたほうがいいが、正直言えば、数カ月レベルの放置ならまったく問題ない。
こういったケースでよく問題となるのは、エンジン内部のオイルがオイルパンに落ちてしまうこと。こうなってしまうと、エンジンを始動してしばらくはヘッド周辺が潤滑されず、ピストンリングなどがダメージを負いやすい。また、シリンダー壁も同じくオイルが乾いてカラカラの状態でピストンが上下すると傷が入ってダメージを負いやすいのだ。
そこで、こういったリスクを控えるためきちんと備えるなら、まずはプラグを外して圧縮がかからないようにする、もしくはエンジンをかからなくしたうえで、セルモーターを数十秒まわしてオイルポンプをまわし、エンジン内部にオイルを送る。その前にヘッドカバーを開けてオイルをかければさらにいいだろう。
また、プラグホールからエンジンオイルを数滴入れてあげることでシリンダー内部を潤滑できるので、これもダメージを防ぐには有効だ。
そのあたりの対策を施してからエンジン内部にオイルを循環させ、それからプラグを取り付けてエンジンを始動すれば、ダメージは最小限に防げるはずだ。
だが、正直これは1年やそれ以上エンジンを始動していなかったときの話。北海道に代表される降雪地域では、スポーツカーなどの趣味車は冬に冬眠させて、春になったら再始動……という人も多いが、そのくらいの保管期間では普通に再始動してもとくに大きな問題は起きないといわれている。
できれば定期的に乗るべし!
ただ、先述のエンジン内部に関しては上記のような対策でいいが、そのほかの補機類にも気を配りたい。
まずはバッテリー。再始動時にセルモーターを長めにまわすことになることもあるので、バッテリーはなるべく再充電しておきたい。ガレージ保管かつ、電源を確保できる環境であれば、常時接続できるタイプの充電器があるので、それをつなげておけばバッテリーの劣化を防ぐことができる。
また、これに関して対策のしようがないが、セルモーターは長期間置いておくと固着しやすい。そうなると新品交換かリビルト品に交換することが必要になる。できれば定期的にエンジンをかけてあげたほうが、セルモーターの寿命も伸ばすことができる。
そんな長期間保管から無事にエンジンがかかったら、できればこのタイミングである程度しっかりと走っておきたい。水温や油温が上がるまで走ることで、オイルに含まれた水分が蒸発する。水温も上がることでサーモスタットが開く。サーモスタットは固着する場合があるので、この機会に動かすことで固着を防ぐこともできる。
それからエアコン付き車両なら、しっかりとエアコンも作動させておきたい。筆者は過去に経験として、長期間エアコンを使わなかったクルマで、久しぶりにエアコンを使ったところコンプレッサーが焼き付いてロックし、ファンベルトが切れたことがある。エアコンも使っていないと内部の潤滑オイルが枯渇してしまうので、できるだけ使っていたほうが傷みにくいのだ。
ほかにもブレーキキャリパーも固着して引きずりを起こしたり、タイヤも傷んだりと長期間保管にはさまざまなダメージが伴う。ただ、それでも保管しなければならない事情もあるだろう。そんなときはできるだけ頻繁にエンジンだけでもかけて、カビが生えないように室内の空気を入れ替え、ガソリンタンクが鉄製の車両であれば、錆びないように満タンにしておく。
バッテリーは定期的に充電するか、充電器を接続。それらの対策を施しておくことで、少しでもダメージや劣化を防げるだろう。