画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん(74歳)。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。年金節約者の小笠原さんは、「ものは少なくシンプルに暮らす」ことをモットーに、楽しみながら節約をする日々。そんな小笠原さんに、つい増えがちな服の持ち方に対する考え方を教えてもらいました。

洋服は新調せず、ある服を着まわす暮らしへ

私は60歳を過ぎてから、洋服を新調することをしなくなり、とくに外出着は買っていません。

【写真】洋服はカード化して管理

45歳で正規雇用の仕事を辞めたときからすでに、衣類は増やさないようにしようと、それまで持っていた洋服を着まわすことを決めました。退職後も年金をもらえるようになるまで、アルバイトやパートの仕事などはしていたものの収入が激減し、食べていくのが精いっぱい。もはや着るものにはお金をかけられなくなったことが、いちばんの理由です。しかしタンスには滅多に着ていなかった服もあるので、それをなんとかうまく着こなすことで、新たな衣生活に光を当てようとも思ったのです。

欲しい服には限りがなく、どうしてもあれこれと着てみたくなり、可能な限り買おうとするものです。そんなときは、家にある服のことはほとんど考えられなくなるのが普通なのではないでしょうか。人によっては冷静に「もうこれ以上新しい服を入れる場所がないな」とチラッと脳裏をかすめることはあっても、ステキな服を見つけたときの興奮を抑えるものにはなりにくいでしょう。

家具などとは違って、洋服はあまりかさばらないこともあり、増え続けていくのです。

意外と洋服には「収納」を使ってしまっているもの

とはいえ、持ち服が少ない私でさえ、衣類の収納場所が数か所もあります。たとえば、小容量の洋服用ダンス、整理ダンス、プラスティック引き出し、つくりつけのクローゼット、押し入れ、広幅の2段の引き出し…などなど、自分でも呆れるほど、衣類が場所を取っているのです。

「それは多い!」と思われた方、一度ご自分の衣類がどこにどれだけ収納されているか、ぜひ確認してみてください。もしやタンスなどには入りきらない服は、段ボールや物置きスペースなど入れたりしていませんか?

持ち服はカード化して管理。定期的に手放す

そんなわけで、手持ちの服すらも整理したい私は、1シーズンに一着でも減らしていくようにしています。毎年衣替えの時季には、いらない服や、リフォームして着られそうな服を探します。

持っている服をしっかり把握しておくことは大切です。私の場合は、高校時代の家庭科で習った衣類整理を活用して、持ち服を種類ごとにカード化してあります。たとえばコート類・ジャケット類・スカート類・セーター類など、それぞれのカードに書き出して、外出の多かった若い頃は、翌日着ていく洋服選びに用いてきました。

今ではそのカードを、「今度はどの服を廃棄しようか」、とか「あのワンピースは上下を切り離して、新しい服のように手直しできるかもしれないな」ど、予想を立てるのに役立てています。

服の整理こそ、家全体のすっきりにつながる

今ある服について知っておくことは、収納ばかりか家全体の整理にもつながります。衣替えのときにでも少しずつ、ぜひ持ち服と真剣に向き合ってみてください。一点一点の服に対する愛着もわくものはないでしょうか。着ない服でタンスや押し入れをいっぱいにしているのは無駄なことですし、服の数を減らすこともできず、家の中も片づけにくくなります。

ファッションの国といわれるフランス人は、日本人ほど洋服を持っていないと言われています。若い女性でも日本女性のようにシーズンごとに洋服を買わないそうです。あのココ・シャネルでさえも、晩年は数枚の服だけで持ってホテル暮らしをしたとか。

特別に独創的な人物として知られるシャネルではありますが、その人生観や生活意識や洋服に対する思いと比べてみると、日本人女性の衣類に対する意識は単一的かもしれないと思うことがあります。「なんでも皆と同じように」と考えるのが日本人らしさでもあるのですが、それでも、だれもが同じように消費するだけの洋服では、もったいないと思います。

シャネルほどの個性でなくても、タンスの肥やしにするほど、流行の洋服を次々と買えるだけ買うという考えはどうなのか、一度向き合ってみる価値はありそうですね。