7月8日、3選を果たし東京都庁に登庁した小池百合子知事(写真・時事通信)

 史上最多の56人が立候補した、2024年の東京都知事選挙。この“乱立”でひときわ注目されたのが、立候補届出時に収める「供託金」である。

「供託金制度は、売名行為などでの立候補を防ぐ目的で設けられています。選挙により金額は違いますが、都知事選の場合は300万円を納めなければなりません。供託金は、得票が有効投票数の10%未満であれば没収され、都の歳入となります。

 今回の都知事選では、有効得票数を上回ったのは小池都知事、広島県安芸高田市の前市長の石丸伸二氏、前参院議員の蓮舫氏の3人だけでした。田母神俊雄航空幕僚長を含む53人は没収になります。その総額は1億5900万円。この金額はもちろん、史上最高記録です」(都知事選担当記者)

 ちなみに、今回の都知事選にも立候補した「ドクター・中松」こと中松義郎氏は、これまで国政、都知事選などに17回、立候補。没収された供託金は5000万円以上になるそうだ。今回は1億5900万円が都の歳入、つまり収入になったわけだが「都のボロ儲け」と思うのは早計である。未曾有の人数の候補者が立候補したことで、費用もケタ違いにかかっているのだ。

「7月3日付の読売新聞が報じたところによると、今回の都知事選にかかった費用の内訳は、1万4230カ所の選挙ポスター掲示板の設置費、1865カ所の投票所と62カ所の開票所の設営費、新聞広告や政見放送にかかる経費、投票用紙や選挙公報の印刷代など。さらには、ポスターを貼る掲示板のスペースが足りなくなったことで、掲示板の枠外にポスターを入れるためのクリアファイルなどが、候補者ひとりあたり数百万円かかったとのことです。今回の都知事選での執行費用は、総額59億2400万円になる見込みといわれます」(同前)

 こうしたことから「供託金の額を増やして、出馬のハードルを上げればいいのでは」という意見も聞こえてくる。しかし、供託金の増額には壁がある。

「都知事選の供託金が300万円になったのは30年以上前の1992年ですが、これを変えるのは東京都ではなく国会なんです。公職選挙法の改正が必要になるので、国会の審議を経なければなりません。また、民主主義の根幹である立候補の自由との兼ね合いもありますから『金額を上げれば解決』というわけにはいかないのです」(同前)

 奇抜な政見放送や、物議をかもした選挙ポスター……。「選挙をおもちゃにしている」という批判もあった今回の都知事選だが、それだけ、課題が浮き彫りになったということだ。