俳優・浜畑賢吉さん逝去 「前立腺がん」になりやすい人の特徴とは?
俳優の浜畑賢吉さん(81)が、前立腺がんのため7月2日に亡くなったことが報じられています。生前は舞台やテレビドラマでも主演を務めました。ほかにも、大阪芸術大学にて教授職にも就いていました。そこで、浜畑さんが患っていた前立腺がんになりやすい人の特徴・症状・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。
※この記事はMedical DOCにて【「前立腺がんになりやすい人の特徴」はご存知ですか?症状・原因も医師が解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
石川 智啓(医師)
2013年名古屋大学医学部卒。初期研修修了後、JCHO中京病院泌尿器科、小牧市民病院泌尿器科を経て、現在名古屋大学医学部附属病院泌尿器科で勤務。日本泌尿器科学会専門医、da Vinci Surgical System コンソールサージャン・サーティフィケートの資格を有する。
「前立腺がん」とは?
前立腺とは男性だけが有する臓器の一つです。前立腺は膀胱の出口付近に位置しています。
前立腺がんとは、この前立腺の細胞ががん化し異常に増殖する病気のことです。前立腺がんは、男性におけるがん罹患数を見ると、2019年では最も新規患者数の多いがんです。前立腺がんは、早期に発見すれば治療可能な病気なので、気になる症状がある人は病院を受診するようにしてください。
前立腺がんになりやすい人の特徴
では、ここから前立腺がんになりやすい人の特徴を述べていきます。
タバコを吸う
日本人男性を対象とした大規模な前向き研究によって、タバコの本数や年数が多い人は、進行前立腺がんのリスクが高まるという結果が示されました。また、タバコを吸う人は肺がんのリスクも高まります。そのため、がんを予防するためにたばこを控えるようにしましょう。
高脂肪な食事を頻繁にする
高脂肪な食事は、前立腺がんのリスクを高めるといわれています。また、高脂質な食事を続けていると、脂質異常症を引き起こす可能性があります。脂質異常症は血液中のコレステロール値が異常になる病気です。
脂質異常症は血液検査を行って診断し、食事療法・運動療法・薬物療法を用いて治療します。自宅でも健康的な食事や適度な運動を心がけてください。脂質異常症は一般的な病気であるため、専門医でなくとも十分な治療を行えるので、お近くの一般内科のクリニックや病院での受診をお勧めします。
太っている
太っていることは、前立腺がんの中でも、特に悪性度の高いがんのリスクと関係しているという報告が多く見られます。日頃から健康的な食事や適度な運動を心がけましょう。肥満体質な人は、内科や消化器内科を受診するようにしてください。
家族に前立腺がんの既往がある
家族に前立腺がんの既往がある人は高確率でかかるといわれています。理由としては、家族に前立腺がん患者や経験のある人がいる場合、罹患リスクが約2.4~5.6倍に高まるという結果が明らかになっているためです。家族に前立腺がんの既往がある人は、泌尿器科を受診し、一度検査をしてもらいましょう。
運動をしない
運動をあまりしない人は前立腺がんのリスクが高まると示されています。また、運動不足は心筋梗塞や狭心症に代表される虚血性心疾患や脳梗塞など、動脈硬化がもとになる多くの生活習慣病を引き起こす可能性が高まります。
そのため、日頃から適度な運動を習慣化させるようにしましょう。
前立腺がんの代表的な症状
初期は自覚症状がない
前立腺がんはPSAという血液検査によって見つかることが多く、無症状な人がほとんどです。初期の前立腺がんはとても小さく自覚症状がほとんどないのが一般的です。
尿が出にくい
前立腺がんが進行すると、尿が出にくいと感じる場合があります。これは、前立腺が肥大化し尿道を圧迫してしまうためです。
また、前立腺炎の可能性も考えられます。この病気は、若い男性が発症しやすい病気です。前立腺炎を発症した場合は、すぐに泌尿器科を受診するようにしてください。
頻尿
排尿の回数が急に多くなることも前立腺がんの症状です。前立腺がんが進行することによって前立腺が肥大化し尿道を圧迫するため、尿の出が悪くなりトイレに行く回数が増えます。また、頻尿では膀胱炎や神経因性膀胱などの病気も考えられます。トイレに行く回数が多くなったと感じたときは、一度泌尿器科やかかりつけの内科などへ受診するようにしましょう。
血尿
前立腺がんの症状として血尿もみられることがあります。前立腺がんが尿路に悪影響を及ぼすので尿に血が混じって出るのです。
血尿がでてきた時は、尿道炎や尿路結石、膀胱がんなども考えられます。血尿が出てくるようになった場合は、すぐに泌尿器科や内科を受診してください。
背中や腰の痛み
前立腺がんが進行していくと、背中や腰に痛みを伴う場合が出てきます。前立腺がんは骨への転移が一番多いとされています。そのため、骨盤や椎骨などに転移してしまい背中や腰に痛みを伴うのです。
頑固な痛みが続く場合には、まずは整形外科を受診しましょう。その際に、もしもがんの骨転移を疑うような場合には、泌尿器科や内科を紹介されることになるかと思われます。
前立腺がんの主な原因
さて、ここからは前立腺がんの主な原因について述べていきましょう。
遺伝
前立腺がんの原因として遺伝が関係しているのは確実だといわれています。家族の中に前立腺がん患者や経験している人がいる場合、罹患リスクが約2.4~5.6倍に高まることが明らかになっています。前立腺がんだと診断された家族がいる人は、定期的にPSA検査を受けることがおすすめです。
男性ホルモン
前立腺がんの発生や進行には、男性ホルモンが関与していることがわかっています。前立腺がんの80~90%は男性ホルモンであるアンドロゲンの存在下で増殖し、アンドロゲンがない場合には縮小するとされています。
肥満
肥満指数をはかるBMIが高い人は前立腺がんにかかりやすいといわれています。また、成人後の体重増加率が顕著であるほどより発がんリスクが高まると示されているので、普段の食生活や運動には注意が必要です。
肥満体質な人は、内科や消化器内科を受診し薬による治療を受けるか、日頃から健康的な食事や適度な運動を心がけるようにしましょう。
食生活
高脂肪な食品やカルシウムを含む食品の過剰摂取は前立腺がんのリスクを高めるという研究結果があります。しかし、カルシウムに関しては明確な根拠があるわけではありません。食生活の中で取りすぎには気を付けるようにしましょう。
喫煙
前立腺がんに限らず喫煙はがんのリスクを高めると示されています。日本では、がんになった人のうち、男性では約24%、女性では約4%がたばこが原因だと考えられています。また、他の喫煙者からの副流煙を吸っても受動喫煙となりリスクは高まるので、注意してください。
がんを予防するためには、禁煙するようにしましょう。
前立腺がんの予防法
定期的な検査
前立腺がんを予防する方法として最も大事なのが、定期的に検査を受けることです。主な検査としては、血液中にある前立腺特有のタンパク質である「PSA」の数値を測定するPSA検査があります。
また、前立腺がんの発生リスクは年齢を重ねるごとに高まるため、40歳以上の方は特に定期的な検査を受けるようにしてください。
健康的な食生活
前立腺がんの予防には食事も大事です。高脂肪な食事は前立腺がんのリスクを高めるため、取りすぎないようにしましょう。また、大豆製品に含まれるイソフラボンやトマトに含まれるリコピンを積極的に摂取していると、がんの発生率が低くなる効果があるのではないかと考えられています。
運動
定期的な運動が前立腺がんにかかるリスクを下げるのではないかと報告されています。また、前立腺がんの診断後の生存率を改善することを示唆しています。運動は体重管理、ホルモンバランスの改善、免疫系の強化などを通じてがんリスクを下げている可能性があります。
編集部まとめ
これまで前立腺がんになりやすい人の特徴や症状について解説してきました。前立腺がんは遺伝的な要因や年齢など自分では気をつけることが難しい要因が関係しています。一方、喫煙や肥満、運動不足など、自分で改善できるようなリスクもあります。定期的な健康診断や健康的な食生活、運動などにつとめましょう。また、前立腺がんは初期の段階では自覚症状がない場合が多いです。しかし、尿の出にくさや頻尿、血尿、背中や腰の痛みなどの症状が出てきた場合は迷わず泌尿器科を受診してください。