ESSEonlineに掲載された記事のなかから、7月に読みたいベストヒット記事をピックアップ!

画廊と美術館での学芸員経験を持ち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さんは、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。「ケチカロジー」という言葉を生み出し発信してきた小笠原さんに、お金がほとんどかからないという1日について教えてもらいました。

記事の初出は2023年7月。内容は取材時の状況です。

1:服装は「今日の心の色」をまとって気分を整える

私は73歳、おひとりさまの年金暮らしです。衣食住全般の「節約」のお話をしていきます。まず服装から。身を整えることは気分を整えることでもあります。髪を洗った翌朝は、洗わずに迎えた朝よりさわやかなもの。外出予定がなくても、自然と清潔なシャツや好きなブラウスを着たくなります。

私は、服装のとくに色にこだわります。好みの色というのではなく、「今日の心の色」を表す服を着たいのです。私はほとんど新しい服を購入しません。その代わり、今ある服の種類はしっかり把握して着まわせるようにしています。

2:歯磨きや食品などのチューブは最後までとことん使いきる

次は朝の歯磨きです。「あら歯磨き粉がもうない! 買ってこなきゃ」と力いっぱいチューブを握って精いっぱい押し出したあと、ゴミ入れにポイ…。それではまだもったいない。

私の場合は、まず指でチューブを伸ばし中身を口元に集めたら、底から1cmほどの箇所をハサミで切り落とします。それも捨てちゃだめです。その1cmの中を見てください。隅にくっついているでしょう? それをつまようじですくって、ブラシにのせるのです。立派に1回分になります。その切り取った1cmは、本体のフタとして使います。さあいつもなら捨てていた本体には、どれだけ残っていると思いますか? 新品の4分の1くらいは付着しています。歯磨きのたびに、本体の切り口から順に歯ブラシでこそげ取っていき、こそげた部分は切り落としていくと、最後まですくい取りやすいですね。

ほかにもチューブ入りのハンドクリームやUVカットクリームなどの化粧品類でももちろん応用、ケチャップやマヨネースやカラシなどチューブ食品にも適応できます。ささやかな努力で家計をうるおわせます。なにより使いきった気持ちよさを感じられるはずです。

3:包装用のテープやもらったポリ袋は消耗品として再利用

さて朝食準備にとりかかります。わが家の台所は閑散としています。水回りに、炊飯器やトースターなどの電化製品、鍋類や調味料器、しゃもじなどの調理具類がないからです。もちろん食器棚もありません。自分ではそれが清々しいと思っているのです。

その代わりにあるものは、陰になった壁の一部に、「思いきり乱雑コーナー」として接着テープが目いっぱい貼ってあります。購入した商品の包装上に貼ってあるテープはどれほど大量かご存じでしょうか? それをきれいに剥がし、壁に貼りつけて保存。多くの接着作業がこの再利用でまかなえるのです。

 

きれいなラベルは保存品に用い、その他は水きりした生ゴミを極薄ポリ袋にぎゅうぎゅう詰め、その再接着テープでしっかり止めてから市指定のゴミ袋に入れるのです。極薄ポリ袋というのは、スーパーの商品持ち帰り用のビニール袋です。なるべくゴミを出さないこと、水きりは完全であること、それがエコにもつながります。

シンク内には三角ゴミ入れを置きません。第一に邪魔なこと、第二に水きりが不完全なこと、そして第三にゴミ入れ自体の洗浄が面倒なのです。トマトのヘタや芋の皮、食後の魚の骨などは直接薄いビニール袋に捨てれば水気はほぼゼロになります。

4:外出をするときも使うお金は最小限に

さあ買い物です。私は午前中パソコン作業をしているので、昼食後に出かけます。

食後は、眠気覚ましと散歩を兼ねた気晴らしで、3〜4時間歩くこともあります。途中の公園では、手持ちのお菓子や水分補給をしています。それからちょっと買い物です。「買わないぞ〜」をモットーに、1つだけは買おうと各店舗を物色するのが楽しみです。

帰宅後は、かなり早い時間帯に、煮炊きをしない簡単夕飯の準備です。「変わった習慣かな?」と思っていましたが、節約上手のドイツ人の一般的な夕食の例を知って、同じだと安心しました。洗い物も少量で済みます。

そんなひとり暮らしの節約の1日を紹介しました。