50代ともなると、実家の片づけが現実化してきます。ここでは、母が入院したことをきっかけに実家の片づけを進めたライフオーガナイザーの尾花美奈子さんに、業者に頼む・頼まないメリットについて伺いました。

「処分業者にすべてお任せ」をしなかった理由

実家の母が病気で緊急入院し、退院後はそのまま介護施設へ入所。父は先に他界していたため、あき家となった実家を自分で片づけていき、最後の最後で民間の処分業者に依頼をしました。

【写真】整理上手な母も捨てられなかった「生活用品」

すべて業者にお任せすれば早いしラクなのに、そうしなかった思いをお話しします。

実家をどうするかは、母の希望どおり売却する方向で話が進み、施設で必要とする生活用品以外は処分していくことになりました。

とはいえ、3階建て8LDK、220平米もある実家を丸ごと片づけるとなると、その労力は計り知れません。整理上手な母ですが、やはり捨てられないものは多く、服や食器、洗剤などのストック、置物などが大量にありました。処分業者にすべてお任せしたくなるところですが、私はその選択をしませんでした。

<「処分業者にすべてお任せ」をしなかった理由>
・ものがどんどんゴミ袋に捨てられていく動画を見たとき、気分がよくなかった。
・母の立場からすれば、まだ使えると思っているものを他人に捨てられるのはつらいのではと思った。
・片づけにかかる費用を少しでも削減して、施設での暮らしの費用に充てたかった。
・緊急の片づけではなかった。

私は、母の気持ちに寄り添うためにも、もう少し丁寧な片づけ方をしたいと思い、しばらく自分で納得がいくように片づけてみることにしました。

自分で片づけると節約できるが、時間と体力消耗を覚悟!

最終的に、かなりのものを自分で片づけ、私ひとりの力では運び出せない重いものや大きいものを業者に処分していただきました。振り返ってみると、やはり相当の労力が必要で、ときに心労もありましたが、たくさんのよかったこともありました。

<自分で片づけてよかったこと>
・費用を抑えることができた。
・自分の手で多くの物を生かすことができた(譲る、寄付、リユース、リサイクルなど)。
・家族の気持ちに寄り添うことができた。
・実家とお別れするさびしい気持ちを少しずつ整えられた。

<自分で片づけて大変だったこと>
・片づけ時間の捻出(自分の家のことや仕事との調整)。
・毎回かなりの体力が必要。筋肉痛との戦い。
・両親の愛情や思い出などに触れてしまうと、感情がゆさぶられる。

業者依頼は「最短片づけ」がメリット。ラクだが高額に!

また、自分で多くの片づけをしたからこそ、業者に依頼するメリット・デメリットも感じています。

<業者に頼んだメリット>
・短期間で片づく。多くは「下見の日+作業日」の2日間。実家が遠方の場合や、賃貸住まいで退去日がある場合に向いている。
・自分では処分できない量や、処分できない物に対応してくれる。家具、家電、食器、寝具、ガス缶、植木鉢、自転車など。
・体力の消耗が最小限。

<業者に頼んだデメリット>
・費用が高額になる。
・信頼できる業者か、判断が難しい。
・ゆっくり向き合う前に運び出され、気持ちの整理が追いつかない。

自分で?業者に?負担の少ない選択を

実家の片づけに着手した当時はまさにコロナ禍。実家に通えない期間とお盆期間もあり、最終的に1年という長丁場の片づけになりました。

けれど自分の目で確認して生かせるものは生かしきり、母の気持ちにも寄り添えたと思っています。これが自分で片づける最大のメリットではないでしょうか。

もちろん業者にもたくさん助けていただき、家族ではないからこそテキパキと片づけてもらえるメリットもありました。

実家の片づけは、高齢者の場合、片づけすぎると本人が新しい環境に対応できずに混乱する場合があります。無理はせず、実家までの距離や家族との関係性、金銭的な問題なども考慮した上で、家族で協力しながら負担の少ない取捨選択をするのがいいと思います。