人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている55歳のRitaさんは、日本とスペインの違いについて発信していることで人気です。そんなRitaさんの普段の食事について教えてもらいました。

スペインでの普段の食事

スペインに住んだらどんな食生活になるんだろう…。日本にいるときは想像すらできず到着直後はなにを見ても、風味はどうなのか? 実際に食べれるものなのか? 不安が多く戸惑いました。

【写真】残り物を入れたお弁当

でもスペイン料理は野菜も魚介も肉類も豊富で、味つけにも大きな癖がないため、一般的な「洋食」をつくるにはまったく不自由ない環境でした。日本にいるときとそっくりの食卓をつくることは難しい環境ですが、いろいろなものを組み合せて、飽きのこない食生活を送ることができています。そんな私のリアルな食生活を紹介します。

朝食は手軽にバランスよく

スペイン食材の価格は日本と大きく変わらず、たとえば牛乳は1リットルで150〜220円。鶏モモ肉は500gで850円ほど。野菜や果物は日本より少し低価格に感じ、リンゴ1つ70円前後です。

私の朝食は野菜が主で、フムスやレーズンも入れて、味つけはオリーブオイルと粉末のバジル類が基本です。スペインの野菜は大変瑞々しく、トマトやレタスなど素材そのものの味でも十分おいしく感じます。シリアルやヨーグルトを食べたり果物を添えることも。できるだけ簡単にすませたいので、そのままかじれるようなものが多いですが、健康にいいものは朝に摂りたいと思っています。

お昼のお弁当は残り物をリニューアル

ランチの予定がとくにない日はお弁当を持ち歩くことが多いです。ただ、朝わざわざ料理をするような手間はかけず、残り物をつめるのがほとんど。前日の炒め物が余ったら、夜のうちに冷凍保存していたパスタとあえたり、ご飯とお肉が余ったら炒飯にしたりしています。

スペインの街中にはベンチが置かれたスペースが多く、大きな公園まで行かなくても気軽に食べられる場所があり、パンをかじったり読書をしている人をよく見かけます。近くのスーパーでチェリーが安くて1パック購入して食べていたら、隣のベンチの女性も同じチェリーを頬張っていて…アイコンタクトで挨拶、なんてこともありました。

夕食は、食べ慣れたものをスペイン食材で再現

私の自炊メニューは、日本でつくり慣れていたものをスペインの食材でアレンジしてみることが基本です。パスタ・グラタン・照り焼き・肉詰め・鮭も手に入りやすく塩焼きやムニエルをすることも。

薄切り肉の販売店は限られステーキに近い厚さの肉が多いですが、一口大にカットすれば十分に使えます。お米は1キロのパックで売られ、モチモチした食感とは違いますが、炒めたりオーブン料理には最適です。「TOFU」という商品も少し堅めですが豆腐として調理できます。いずれも日本と違いはありますが、海外にいながらここまで再現できることに贅沢さえ感じます。

なお、マドリードには日本食材が手に入る店舗もありますが、種類も限られ価格は日本の1.5〜3倍です。そのため日常的に使う調味料はできるだけ現地の食品で代用しています。みりんは白ワインとハチミツを混ぜ、だしは粉末ブイヨン、青のりは乾燥パセリと塩…海外歴の長い友人からも情報をもらい工夫する毎日です。

困ったときのアイデア料理

今の住宅には電子レンジがないのですが、大型のオーブンが備えつけられているため、悩んだ時はオーブン料理です。耐熱皿に野菜や肉をゴロゴロ並べ、上からオイルと塩コショウとハーブ。最後にチーズをふり、焦げ目がついたら立派なご馳走です。

そして、いい味つけが思い浮かばない日は、オリーブオイルとビネガーが強い味方。仕上りはフレンチドレッシング風になりますが、野菜にも魚にも肉にもさっぱりした仕上りとなり、ちょっとごまかせる組み合わせです。

なお、スーパーには調理ずみの食品も売られ、パエリア・パスタ・オムレツなどが1人分が500円前後で購入できます。肉団子やラビオリなど「あとは火にかけるだけ」の状態で売られているものや、ピザ・ラザニア・コロッケなどの冷凍食品も種類が多く重宝しています。

時々、スペインの人たちが発信している料理番組を参考にすることがありますが、ワイン・砂糖・ブイヨン…言われるままに混ぜてみたら「肉じゃが」そっくりの味になったり、販売されているミートソースパスタなども日本の味とほとんど変わりません。

恐らくスペイン人と日本人の味覚は近く、だからこそどんな食材を買っても違和感がないのかもしれません。

日本で生活していた頃は日常に追われ、料理すら苦痛に感じることがありました。でもスペインでは初めて見る調味料や缶詰を試すことは楽しみのひとつとなり、また現地の食材のみで日本風に仕上がったときには、ちょっとした達成感を感じるようにもなりました。

海外にいるからこそ目新しい食材を積極的に取り入れ、バリエーション豊かな自炊を無理なく続けていきたいと思っています。